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2009年4月14日

ウサギとカメ

 ある島に、ウサギとカメが住んでいました。ウサギはすばしこくて、走るのが得意で、いつも競争相手をさがしていました。カメはゆっくり動くのが好きで走るのは遅かったですが、自分のまわりのものによく気がついて、ていねいで、根気が強いのでした。
 
 ウサギは島にすむイヌやネコと競走しても、足の速さでは負けません。だから時々たいくつすると、イヌやネコをからかって自分を追いかけさせ、一緒に走りながら運動不足を解消するのでした。
「ぼくは、島いちばんのランナーさ!」
 と、ウサギは大得意でした。
 
 カメはウサギがそんな競走に熱中しているのを見ても、いつも知らん顔をしていました。そして、天気がいい日には天に向かって首を伸ばして、じっと日光浴をしていました。時々、イヌやネコがカメに近づいてきて、ちょっかいを出そうとすると、カメは素早く首や手足を殻の中に引っ込めて、“石”になったマネをするのでした。ウサギみたいに走って逃げなくても、首や足を引っ込めるだけでいいのです。カメの堅い甲羅には、イヌもネコも歯がたたないのでした。だからカメは、
「あたしは、島いちばんのカタブツさ!」
 と、大得意でした。

 ある日、日光浴をしているカメのところへウサギが来て、言いました。
「おーい、カメさんよ。こんなところで空を見上げて、何かおもしろいものが見えるかね?」
 カメは、目をしばたたいて、ちょっとウサギのほうを見ました。
 ウサギは、そんなカメに向かって、
「空には何も見えないだろう。見えたとしても、鳥が飛んでるぐらいだ。ノロマのおまえさんには関係ないけどね……」
 と言って、ニッと白い歯を見せました。よい考えが浮かんだからです。ウサギは、たいくつしのぎにカメをからかってやろうと思いました。
 カメは、自分が鳥と関係ないなどと言われたのが気に入らなかったので、口をあんぐりと開けてウサギをにらみました。
「おや、カメさん。小さいお口をパクパクさせて、何かご不満かね。ぼくは、鳥と競走しても勝てるほど速い。でもお前さんは、アリと競走しても負けるほど遅い。だから、怒ってもムダなんだよ」
 と、ウサギは憎まれ口をたたきました。すると、カメはゴツゴツとした声で言いました。
「カメはウサギに勝ったぞぉ!」
 ウサギは、カメの予想外の言葉に驚いて半歩下がりました。しかし、すぐに反論しました。
「あぁ、それは昔のことですねぇ~。おまえさんの先祖があんまり遅いんで、ぼくの先祖が途中で昼寝してしまったって話ね。それは昔のことでね、ぼくは先祖みたいにウカツじゃないから、レースの途中で昼寝なんかしない。だから絶対負けないんだよ。いや、昼寝はするかもしれないけど、それはゴールに入ってからさ。おまえさんが来るまでには、きっと日が暮れてしまうからね」
 ウサギはこう言うと、カメを指差してカラカラと笑いました。

 谷口 雅宣

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