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2009年2月 9日

ラブロック博士は語る

 オーストラリアのビクトリア州での山火事は、東京都の1.5倍の面積を焼きつくし、死者は160人を超え、さらに燃え続けている。同国での史上最悪の山火事らしいが、山火事自体はこの夏の乾燥した時季のオーストラリアでは珍しくないそうだ。ただ、長期にわたる旱魃と猛暑続きは例年にない現象のようだ。メルボルンでは7日、観測史上最高の46.4℃を記録したという。この地はコアラの好物であるユーカリの森が多く、この幹や葉には油分が多いために、乾燥状態で引火すれば燃え広がるらしい。地球温暖化にともなう気候変動が影響しているならば、今回の山火事の犠牲者は、自然災害によるのでなく“人災”によるとも考えられるのだ。

 私がこんな言い方をするのは、地球温暖化によって大勢の人が死ぬという予想を、最近読んだからだ。イギリスの科学誌『New Scientist』の1月24日号に、「ガイア理論」で有名なイギリス人、ジェームズ・ラブロック博士(James Lovelock)のインタビュー記事が載っていた。今年90歳になるという同博士が、今の地球環境についてどう考えているか知ろうと思い、私はそれを読んだ。が、同博士は相当悲観的で、地球の温度が今世紀中に2℃上昇すれば、世界人口は現在の6分の1以下の10億人に減ってしまうという。
 
 ラブロック博士によると、現在行われている環境対策のほとんどは、巨大な詐欺すれすれのものだという。排出権取引は、政府から巨額の補助金を得られるから、金融会社や産業側がまさに望むところだろうが、気候変動に対してはほとんど効果がない。そのかわりに、多くの人々に多くの金を分配していい気分にさせるから、人々が真剣に考える時期が来るのを遅らせるだけだという。また、風力発電にも手厳しい。風力で1ギガワットの電力を得るには、2千5百平方キロもの土地が必要だから、風車はイギリスの美しい田園風景を破壊してしまう、と嘆いている。さらに、二酸化炭素を地中や海中へ固定することについては、「時間のムダだ」という。「気違いじみた」考えで、「危険だ」ともいう。時間がかかりすぎるし、エネルギーを浪費すると指摘する。
 
 原子力発電については、イギリス国内のエネルギー問題を解決する方法の1つではあるが、これによって地球全体の気候変動の問題は解決しないという。また、排出削減の方法としては、時間がかかりすぎるという。
 
 それなら、人類は破滅に向かっているのかと訊くと、博士は「我々を救う方法が1つある」と言う。それは「炭を大量に土中に埋める」ことだという。これは、例えば、農業から出る廃棄物には、植物が夏季に吸収した炭素が含まれるから、これを土中で分解しないタイプの炭に変えて、土に埋める方法を提案している。こうすることで、地球の物質循環システムの中からまとまった量の炭素を抜き取ることができるという。
 
 こんなことで、本当に効果があるのだろうか? 博士は言う--

「地球上のバイオスフェアー(生物圏)からは毎年、550ギガトンの炭素が出る。我々人間が出すのは、そのうちたった30ギガトンにすぎない。植物によって固定された炭素の99%は、バクテリアや線虫や昆虫などによって1年ぐらいで大気中に排出されてしまう。我々にできることは、そういう炭素の“消費者”をごまかして、農業廃棄物を低酸素状態で燃やし、炭に変えて、畑の中にスキ込んでしまうことだ。これで、CO2は少しだけ出るが、ほとんどの炭は炭素に変換される。また、この酸化過程の副産物としてバイオ燃料が作られるから、農民はこれを販売して利益を得られる」。

 ラブロック博士は、自分のことを「楽観的な悲観論者」(optimistic pessimist)と呼ぶ。その理由は、人類は結局は死滅しないと思うからだという。しかし、犠牲者の数は想像をはるかにしのぐ。地球の平均気温が今世紀中に2℃上昇すれば、大量の人間が死んで、10億人かそれ以下の数しか残らないという。現在の世界人口は約65億人だから、6分の1以下に減ってしまうというのだ。4℃の上昇では、現在の10分の1以下に減少するという。この主な理由は、食糧不足だそうだ。が、今回のような山火事や洪水、それに伴う伝染病による死もあるに違いない。このような人類の大量死は、過去の氷河期と氷河期の間にもあって、そのときの地上の人口はわずか2千人ほどだったという。21世紀においても最悪の場合、こういう状態が再来すると博士は警鐘を鳴らすのである。

 谷口 雅宣

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コメント

合掌、ありがとうございます。
今、大学院の工学部(化学生命工学専攻)に通っている息子が、数年前、大学時代に、「地球温暖化を止めることは出来ないんじゃないか?地球温暖化を止めるには、不便だった昔に戻るしか方法がない。大勢の人が死ぬという犠牲は間逃れらない。」と悲観的なことを言ってたのを思い出しました。そうした悲劇を防ぐために大学院に行って研究することを決めたと話してくれたことがありますが、大学院に入学した今でも、悲観的なことを言ってました。息子とは、それ以上詳しい話はしてないのですが、雅宣先生のブログを読んで、「今、自分が出来ることは何だろう?」と、焦ってしまいます。炭は以前から、庭に良くすき込んでました。薔薇を育てるのに病気になりにくいと聞いて、炭を土に埋めたりしてました。炭のパワーってすごいのですね! 再拝

投稿: k.k | 2009年2月11日 01:17

相愛会活動で植樹をやりましたが、本数が少なくてこんなことでCO2削減になるのかと思いながら、デモンストレーション的にはそれなりに効果があるのかなと植えました。しかし地球規模で考えた場合、だれもがもっと真剣に必死で削減対策に取り組まないと後戻りできないところまで来てしまっていると思います。
昔に返ってわれわれは炭焼きをしたほうがいいのでしょうか。日本の田舎は山には恵まれています。子供のころはあちこちに炭焼き窯があり、山仕事をしている人がたくさんいました。いま製造業が行き詰まり労働力が余ってきていますが、そういう人たちに炭焼きはどうかなと思ったりしました。

投稿: 持田 正悦 | 2009年2月11日 05:03

k.k さん、

 ラブロック博士の予測が正しいかどうかは分かりません。私がときどき本欄でも紹介するアメリカの環境運動家、レスター・ブラウン氏は、もう少し楽観的です。現在ある環境技術によって危機回避は可能だという考えのようです。

 とにかく、できるところから前進する以外にないと思います。

投稿: 谷口 | 2009年2月11日 11:32

 今日の雅宣先生のブログを拝読しまして、『生命の實相』霊界と死後の生活篇(生命の行方)にある“ヴェッテリニの霊示”がピンと来ました。頭注版9巻が手元になく愛蔵版5巻を取り出し確認させて頂きましたが、現象的には悲劇かもしれませんが「生命の實相」的には納得できるのではないかと思いましたので、(広く一般の方に)紹介させて頂きます。
先生は勿論御存知であると思いますので失礼をお許し下さい。
しかし、“ヴェッテリニの霊示”自体約100年前(第一次欧州大戦時)の霊示なので其の後“高級霊の修正”が可成りなされている筈ですので、100%の信憑性があるかは分りません。

≫現代地上に生を享けている霊魂たちは、一度に全部地上に生を享けて来たのではない。それは連続の周期波によって幾回にも分れて地上に移住し来ったのであって、各自はかくして自己の受持つ地上生活の舞台を完了しつつあるのである。フランス民族中には此の最初の頃の地上転生の周期波に乗せられて地上に移住せる人間霊魂群が可成り多いのであって、これらの霊魂たちは、更に重ねて地上生活を閲(けみ)する必要がないのであって、此らの古き移住霊魂は今より三百年程の間に完全に霊界人としての生活に入り、新しく地上に生れ更り来る霊魂達を指導する役目をとる事になる。だから此の周期の終末期に地上より姿を没するのは必ずしもフランス民族又はフランス国民だけではない―それがフランス民族だけのように取次いだのはレイヌの誤達である。今より三百年前後を一周期の終末として地上生活を完了するのは、今より約五千年前、地上生活に白人種として転住し来れる移転霊魂の最初の一群である。≪
(以上『生命の實相』愛蔵版5巻230頁(コ氏後記)より抜粋) 

 しかし、オーストラリアのビクトリア州での山火事は、全く対岸の火事ではないと私も思います。今は寒いですが半年後、猛暑になれば同じ事が北半球でも起こるかも知れないからです。山火事は森林が燃える事なので、二酸化炭素を吸収し酸素を作り出してくれる大切な木々が、逆のサイクルになるので事は深刻だと思います。又森林が再生するまでには何十年も歳月がかかりますし、温暖化が加速度的に進む大きな要因になるのではと思います。

投稿: 黒木 康之 | 2009年2月11日 12:17

 ラブロック博士の意見に賛成というわけではありませんが、私に漠然とした不安を抱かせるのが、世界の総人口のグラフです。
 綺麗に幾何級数的なカーブを描いていて、今のところ変曲点がありません。このままの急勾配で伸びてゆけるとは考えにくく、この先どんなカーブを描いて地球のキャパシティに落ち着くのか、それはどんな原因によってなのか。
 人間は池の中の魚とは違いますが、ひとつの現実だと思います。
 話が大きくなりすぎました。本当に、できるところから前進する以外にないと思います。結果はどうあれ、まずは心がけを大切に、と思っています。

投稿: 片山 一洋 | 2009年2月11日 17:09

地球環境問題については悲観的な思いにならずに、とにかく今出来ることを可能な限りやらせていただくという姿勢が大事だと思わせていただきました。神様に生かさせていただいているそのことに感謝しながら今を生ききるということでしょうか。合掌

投稿: 持田 正悦 | 2009年2月12日 04:55

ラブロック博士の提言はよく分かりませんが"排出権取引"の見解には耳を傾けなければならないのではないか?と思います、勿論計算上可能なのでしょうが世界経済の中において金融会社や産業界、政治が絡んだ場合、本来の目的である温暖化防止から大きくかけ離れて行く様な気がしてなりません、その他多くの防止策は人類全ての人々がスローガンを掲げて実践前進して行くならば、"戦争"と言う問題は残りますがこの世は原始生活に帰る事無く永遠に繁栄し続けて行く様に設計されているのではないか?と楽観的に考えています。

投稿: 尾窪勝磨 | 2009年2月12日 11:21

谷口雅宣先生 
ご指導ありがとうございます。
とにかく今出来ることを可能な限りやらせていただくという気持ちでいます。
ありがとうございます。再拝

投稿: k.k | 2009年2月13日 17:10

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