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2009年2月12日

カキフライを食べる

 今日は木曜日で休日だったので、妻と連れ立って絵の展覧会を見に京橋へ行った。妻が単行本の製作で世話になったデザイナーの作品が展示してあるというのである。その展示をしっかりと見てから会場を出ると、同じビルの階下では水彩画展をやっているというので、せっかくなのでそれも見た。水彩用紙の白い地肌を存分に生かした、明るく、透明感のある風景画が数多く展示されていて、妻と2人で「ああ、いいなぁ~」と言いながら鑑賞した。気がついてみると、私は近ごろきちんとした風景画を描いていない。これらの絵を見ていると、そのことが、何か大切なものを粗末に扱ってきたような反省の気持を、私に起させるのだった。

Img_3335s  画廊を出た時は、まだ11時半になっていなかった。昼食をどこで食べるかの見当はつけてあったが、時間がまだ早いので近所を散歩するともなく2人で歩いていたら、1軒の店の前に15~16人ほどの人の列ができている。どうやらレストランらしい。こんな時間に人が並ぶほどの店があるのかと思いながら、私はどんなメニューがあるのか、入口のディスプレイを覗いてみた。ミンチカツ・ランチ、ハンバーグ・ランチ、カキフライ、鶏肉のコンフィ……など、それほど珍しいものではない。いわゆる“日本の洋食”かと思って妻の方を振り返ると、彼女は人の列の中にいて、その後ろにもう4人ほど若い女性が並んでいるのである。「そうか、ここで食べるつもりか」と私は思い、彼女のそばへ行くと、妻は自分もメニューを見たいと言うのだった。
 
 最初は、2人とも冗談半分で列に入ったのである。ところが、我々の後にも次々と人が来て列が延びていくのを見ると、当初の計画を変更して、この店で食べるのも面白いかもしれない、と考えが変わってきた。で、結局、11時半の開店まで5分以上待って、他の客とともにゾロゾロと店へ入っていった。入口脇のカウンターには、その店のことを記事にした雑誌が数冊、カラーグラビアを見せて広げてある。「そうか、雑誌で有名な店なんだ……」と了解して、期待に胸を膨らませた。しばらくして席へ案内され、私は予定通りカキフライを注文した。
 
Mtimg090212  最初に、コーヒーカップのような容器に入った、キャベツのスープが出された。外で待っていて冷えた体を、それを飲んで温める。次に、白い大皿に盛ったカキフライが出てきた。トンカツに添えられるような、付け合わせの千切りキャベツが山盛りになっている。その脇に、丸々と太ったカキのフライが4個並んでいる。フライの下にはタルタルソースが敷かれ、そのほか半切りのトマト、ポテトサラダ、レモン2切れが、同じ皿に盛りつけてあった。妻の料理が来るのを待って、私はレモンを絞ってフライにかけ、食べはじめた。カキフライは、1口で食べられないほど大きかった。そんな場合、安い店では“衣”を分厚くしてあるのだが、この店の“衣”は薄く、ジューシーなカキの味が口の中に広がった。「なるほど、人が並ぶはずだ」と私は思った。
 
 旬の食材を使ったボリュームのある昼食をいただいて、2人は満足して店を出た。難を言えば、店の混雑と忙しさが気になった。また、我々の年齢では、昼食としてはボリュームがありすぎる。しかし、若いビジネスマンや女性にはピッタリの内容なのだろう。「もう一度来るか?」と訊かれたら、多分、昼にはもう来ないだろう。休日のアドベンチャーとしては、味だけでなく、スリルも十分楽しめた。
 
 谷口 雅宣

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コメント

谷口雅宣先生

 先生の休日はいつも純子先生と楽しくお過ごしで楽しそうですね。正に信徒の鏡ですね。
 私も休日は出来るだけ家内と息子と過ごす事を考えています。たまに外食もしますが大抵は日曜の夜です。私は色々と楽しみは持っていますが家族と外食するのが一番の楽しみです。

 ところで今日もニュースで観ましたが、アンケートによるとこの不況の時、真っ先に切り詰めるのが外食だそうです。でもこのお店のように牡蠣フライも衣がやたら厚くして大きくするのではなく、実がたっぷりしていて大きいというあたりが先生の仰る通り、流行る理由なのですね。こうした不況時でも顧客に真の満足を与える産業は繁盛して行くという事を教えられます。

投稿: 堀 浩二 | 2009年2月13日 12:01

谷口雅宣先生 
合掌、ありがとうございます。
あまりにも美味しそうだったので、ネットで検索してみました。
どこのお店か、すぐに分かりました。
先生が描いた絵と全く同じ写真を見つけました!
食事中、メモ用紙にササッと描かれるのでしょうか?
さすがですね!

純子先生とは、本当に仲良さそうで、私の理想の夫婦像です。
私達夫婦も、夫の休日のお昼には、食いしん坊の私のために食事に連れて行ってくれましす。
夫は、本当は家ご飯食が一番好きなのですが、私に合わせてくれてます。感謝です。

投稿: k.k | 2009年2月13日 17:17

堀さん、

>>アンケートによるとこの不況の時、真っ先に切り詰めるのが外食だそうです。<<

 そう言われていますよね。でも、オバサンやオネエサン方の姿は、私の行く場所にはずいぶん多いです。不況なのはダンナだけだったりして……。

kkさん、

 ネット検索でヒットしたのですか? すごい腕前ですね。

>>食事中、メモ用紙にササッと描かれるのでしょうか?<<

 食事中……は、できません。食べ始めたら止まりませんから。(笑) 食べる前にガマンして……ペンを走らせます。色は、別の時に記憶を元につけました。

投稿: 谷口 | 2009年2月13日 21:53

谷口雅宣先生

>> ネット検索でヒットしたのですか? すごい腕前ですね。
 ありがとうございます。食べ物に関しては、特別です(笑)
グーグルで、東京 京橋 牡蠣フライ で検索しました。
レストラン○○○ですね!先生の絵で、すぐに分かりました

>> 食事中……は、できません。色は、別の時に記憶を元につけました。
  ・・・そうですよね(笑) さすがの先生も、そうですよね
  ありがとうございます。

投稿: k.k | 2009年2月13日 23:08

 私はその日、初台にある「東京オペラシティアートギャラリー」と「NTTインターコミュニケーションセンター」におりました。先月、国立博物館で開催中の「妙心寺展」をきっかけに東京都内の博物館・美術館・動物園など60以上の施設の入場券や割引券がセットになった「東京・ミュージアム ぐるっとパス2008」http://www.museum.or.jp/grutto/
を手に入れたからです。2000円で2ヶ月有効、2万円以上の入場券がついています。
「NTTインターコミュニケーションセンター」では、「ライト・[イン]サイト」展を開催していました。この展覧会は,自明すぎてあらためて振り返られる機会の少ない「光」という存在の過去、現在そして未来の可能性を「知覚」という切り口を通してアートと科学を超えた視点から新たに照射するという趣旨のもと、
<<光は,わたしたちの日常,また身体や知覚のあり方に大きく関わるだけでなく,この世界のさまざまな事物の存在や形態を可能にしている根源的なメディウムといえます.地球上の生命や環境は,太陽光に依存することで生態系を形成・維持しています.また人間にとって光は,生存のみならず精神的な指標として,宗教,科学,哲学的な意味を与えられてきました.とりわけルネサンス以降の光学の発達は,カメラ・オブスクーラを介した遠近法の確立を皮切りに光学装置や視覚のシステム,そして新たな芸術表現を生み出しました.続く啓蒙の時代において,光が知識および世界の可視化へ向かう隠喩とされたことも忘れることができません.
 私たちは光のもつ潜在性を,未来に向けていかに発動させることができるのでしょうか.この展覧会では,拡張し続ける光技術によってもたらされる私たちの知覚そして身体認識の変容を,概念,現象,プロセス的に独自のヴィジョンとともに体験させる実験的な作品やプロジェクトを紹介します>>
 闇の中で光を感じ、不思議な感覚を体感しました。
 京橋や日本橋・丸の内でしたら、「ブリジストン美術館」「東京国立近代美術館フィルムセンター」「三井美術館」「出光美術館」「相田みつお美術館」の入場がこのチケットで無料になります。京橋と東京駅・日本橋を巡回する無料バスも15分おきに走っています。

投稿: 久保田裕己 | 2009年2月14日 02:03

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