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2009年1月 7日

バイオ燃料で日米協力を

 日本における環境対策について、2回ほど“夢のような話”を書いた。そこで今回は、もう少し現実的なことを書こう。とは言っても、“夢”の代りに相当“期待”が混じっていることは否めない。そして、今度はアメリカの話だ。日本が不況下に“経済優先”で環境問題への取り組みを遅らせているあいだに、オバマ政権率いる“新しいアメリカ”は、環境対策で日本を追い抜くかもしれないのだ。

 京都議定書を取りまとめた日本政府だが、「温暖化は存在しない」などとうそぶいていたブッシュ氏の消極姿勢に気がねして、温暖化対策にはこれまで積極策を採らなかった。このため、今や同議定書で表明した国際公約を守れない可能性が現実化している。そんな中で、オバマ次期大統領に任命されたアメリカの新しいエネルギー相は、温暖化抑制のためにかなり積極的な対策を講じそうだ。この人はスティーヴン・チュー氏(Steven Chu)という人で、カリフォルニア州バークレー市にあるローレンス・バークレー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory)の所長。永年、「自動車や火力発電所や産業から排出される二酸化炭素が、地球温暖化の直接の原因だ」と明確に述べ、早急な排出削減を求めてきた科学者であるという。だから、アメリカのエネルギー政策が大きく転換する可能性があるのだ。1日付の『ヘラルド朝日』紙が伝えている。
 
 それによると、チュー氏はまだエネルギー政策について公式に発言していないが、これまでの彼の行動を見れば今後の予想ができる。チュー氏は、2004年にバークレーの国立研究所の所長になり、生物エネルギー合同研究所(The Joint BioEnergy Institute, JBEI)を傘下に作った。このJBEI(ジェイベイと読む)は今、エネルギー省から5年間で1億3500万ドルの予算を得て、合成生物学の技術を使って植物繊維を燃料に換える研究を進めている。しかし、チュー氏が所長になった当時、国立研究所ではこの分野の研究がほとんど行われていなかったという。研究員は、それぞれがバラバラのテーマの研究をしていたところへ、チュー氏が来て、研究の方向性を「燃料」に絞り込んで研究者を集めたという。これには、チュー氏のネームバリューが役に立ったようだ。というのは、彼は1997年のノーベル物理学賞の受賞者の1人だったからだ。

 今、トウモロコシやサトウキビから作られているバイオエタノールは、食糧との競合の問題が指摘されていることは、本欄で何回も書いてきた。この“第1世代”のバイオ燃料の後には、食糧と競合しない雑草などから燃料を作る“第2世代”の開発が求められており、その分野の研究に早い時期から取り組んできたのがチュー氏である。だから今後、アメリカが第2世代のバイオ燃料の開発を加速させることが十分予測できる。日本でも、本欄で触れてきたように、食糧と競合しない竹、籾殻、木材などを原料とする第2世代のバイオエタノールの研究は進んでいる。

 また、北海道との関連で言えば、昨年9月1日の本欄で紹介したススキの一種「ジャイアント・ミスカンサス」(GM)は、トウモロコシよりも有望のようだ。GMは現在、北海道大学と米イリノイ大学が共同研究しているところだから、この分野での日米協力を両国政府が本格的に支援してくれることを、私は大いに期待している。
 
 谷口 雅宣
 

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コメント

科学も、国家も、人間も、つねに百尺竿頭にとどまらず『百尺竿頭進一歩』の科学、『百尺竿頭進一歩』の国家として、今世界は動きつつあります。
誰が如何にして進め得るか。
叡智の眼(まなこ)を持ち、固定観念にとらわれない大人物の出現を私は望んでいます。

投稿: Y.S | 2009年1月 9日 08:45

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