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2009年1月31日

ネットで祈り懺悔する

 ネット社会の発展は、宗教の世界にも影響を与えずにはおかない。生長の家でも昨年の12月、谷口清超先生の追善供養祭の模様をリアルタイムで全国にネット配信したが、そういう情報の“一方通行”だけでなく、“双方向”で、しかも心の深部に関わる情報さえ、ネットを経由させようとする試みが始まっているようだ。1月28日付の『ヘラルド・トリビューン』紙によると、先日、旧暦の正月にあたる「春節」を迎えた中国では、香港の黄大仙(Wong Tai Sin)寺院に初詣に参拝する人が数多くあるが、今年はパソコンの画面を通した“ネット参拝”ができるようにしたところ、2万人を超える人々がログインして参拝したという。この寺院は、香港で最大の道教寺院で年間に約300万人の参拝客が訪れるという。

 “ネット参拝”の試みは、院内の神殿修復のために参拝スペースが狭くなったため、その不足分を補う目的もあって昨年12月から始まったという。が、それだけでなく、伝統とネット技術をうまく組み合わせることで、現代人の参拝をより便利にすることも考えたらしい。ネット参拝のためには、参拝者はサイトにログインし、名前とメールアドレスを登録後、何を祈るかを「健康」「繁栄」「家庭調和」などのオプションから選択する。これが終ると、画面には神殿の前で線香を備える手がアニメーションで現れ、「あなたの願いを黄大仙にお祈り申し上げます」という意味の文字が出てくるという。そして、実際に祈願が行われている様子が、毎週、サイトでは放映されているらしい。
 
 このネット参拝設置により、同寺院のサイトに海外や中国本土からアクセスする人が増え、寺院への寄付金も増加しているという。ちなみに、12月のサービス開始以来、7万人以上の“ネット参拝者”がサイトを訪れたというから、この試みは今のところ成功しているといえるだろう。
 
 アメリカには、カリフォルニアを本拠地とする「ゴッドチューブ」(GodTube)という動画登録サイトがあり、ここには毎月300万人のユーザーが訪れるという。この名前は、もちろん「ユーチューブ」(YouTube)を意識したもので、サイトの構成もユーチューブとよく似ている。ただし、ここでは「自分のメッセージ」を発信するのではなく、「神のメッセージ」を動画として発信する点で違うのだろう。
 
 アメリカの時事週刊誌『TIME』の2月9日号には、“匿名告白サイト”とも“懺悔サイト”とも呼べそうなネットサービスが取り上げられている。これらは 「DailyConfession.com」(日ごとの告白)や 「GroupHug.us」(仲間と抱き合おう)などで、特定の宗教色のないものとして発足したが、人気を博したため、そのアイディアを教会が一部採用して自分たちのサイトに導入したものもあるらしい。この種のサイトの特徴は、匿名で書き込む代りに、書き込んだ内容はすべて公開されるから、世界中のネット利用者が読むことができる点だ。これは従来、教会の密室で牧師や神父にだけ“罪”を告白するのとは大いに違う。教会での告白は、聖職者が仲介となって「神」に向かって告白し、罪の赦しを乞うのだが、告白サイトでは、「一般大衆」に向かって自分の恥部をさらけ出すのだから、宗教的な意味はあまりない。それよりも、「真実を隠してきた」という自分の“罪の意識”が多少なりとも軽くなるという心理的な効果があるだろう。しかし、同記事も指摘しているが、告白は完全な匿名だから、その内容が真実であるかどうかは全く不明だ。だから、露出狂的な傾向のある人が針小棒大な告白をしたり、まったくデタラメの告白も排除できないだろう。
 
 これに対して、「PostSecret.com」(秘密の掲示)というサイトは少しヒネリを入れ、オフラインとオンラインを連動させている。ここでは、メールによる告白に加え、サイトの住所と宛名を印刷した葉書をオフラインで人々に配布して、その葉書に告白を書いて送り返してもらう方式を採る。そして、返ってきた葉書をスキャンしてサイトに掲げてある。それを見ると、絵や写真を使ったデザイン的で、多様な葉書が多く、書かれた告白の深刻さよりも、絵柄や文字の組み合わせなどの創造性が表面に出ていて面白い。
 
 これらのサイトを眺めてみると、生長の家で運営している「ウェブ版日時計日記」や「絵手紙」のサイトとの共通点が感じられるとともに、そこからさらに発展させたネット利用が考えられるような気がするのである。
 
谷口 雅宣

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