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2009年1月10日

無神論を広告する (2)

 前回本欄で紹介した「無神論者バスキャンペーン」(Atheist Bus Campaign、ABC)の動きは、欧米で大きな論争に発展しつつあるようだ。キリスト教信者が多いこれらの国々では、無神論者であることは、ひと昔前のゲイの人々がそうであったように、何か“肩身の狭い”思いがともなってきたようだ。しかし、イギリスを起点としたこのキャンペーンを契機にして、無神論者の“カミングアウト”が始まったとの見方もある。
 
 ネット上には、すでに無神論者バスのオフィシャル・ウェブサイトが作られていて、大手SNSのフェースブック上でもそのグループが活動している。10日夜の時点で、そのグループの会員数は1万5千人を超えている。さらに、各地にバス広告を走らせるための資金カンパ用のグループもできている。これに対して、同じフェースブックに「無神論者が進めるバス広告に反対する」(Against Atheist Promoting Bus Adverts)というグループも作られている。

 1月7日付のイギリス紙『ガーディアン』によると、ABCの活動は、伝統的にカトリック信者の多いスペインにも広がっている。今週、同国で初めてのキャンペーンがバルセロナ市で行われるという。バスに掲げる広告文は、イギリスでのものの忠実な翻訳らしい。そして、その後、マドリッドやヴァレンシアでもキャンペーンが行われる予定だ。
 
 これに対し、バルセロナのカトリック大司教は、「神への信仰は心配のもとにはならないし、人生の楽しみの障害にもならない」と反論している。また、教会関係者の中には、この広告キャンペーンを「すべての宗教に対する攻撃だ」と非難し、それに許可を出した政府に対して怒りを振り向ける人もいる。
 
 同紙は、スペインのカトリック教会側のこういう動きに関連して、教会がしだいに政治問題に関わるようになってきたことを指摘している。同教会は、サパテーロ首相の社会党政府が同性婚を認め、離婚手続きを簡略化し、学校の授業から宗教教育の時間を減らそうしていることに一貫して反対してきたし、妊娠中絶法の改正の動きにも反対しているという。同国では国と教会は形の上では分離しているが、教会は政府の資金援助を受けている。だから、スペインにおけるABCの活動は、イギリスにおけるよりも物議をかもし出す可能性がある。

 谷口 雅宣

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コメント

この位の事で政府に怒りを振り向ける教会関係者も大人気ない様な気もしますが可愛い冗句として大目に見て上げてはどうでしょうか?大司教位の反応を関係者が示す位の余裕が欲しいですね、、、。

投稿: 尾窪勝磨 | 2009年1月12日 15:52

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