都会の紅葉狩り
今日は木曜日の休日だったので、母を誘って紅葉狩りへ行った。こう書くと、都心から郊 外などへ出かけたように聞こえるかもしれないが、都心も都心、明治神宮外苑へ行っただけである。本欄にも書いたことがあるが、ここは私のジョギング・コースに入っているから、決して珍しい場所ではない。実際、2日の火曜日に、私はここを走った。が、今日は親孝行が目的だった。父が亡くなってから、母は原宿の家を離れることが少なくなった。しかし最近、「紅葉が見たい」との希望を漏らす余裕を見せてくれるようになったので、好天の休日を逃す手はないとの妻の提案を、私も二つ返事で受け入れたのである。
3日前のジョギングの際、有名なイチョウ並木の下を、私は左右に体を跳ばせながら、 かろうじて人にぶつからずに走れた。それほど多くの人々が各地からやってくる。観光バスも5~6台いたと思う。多くは中高年の女性だが、長いレンズ付きのカメラを提げた男性も、デート中の若い男女もいた。今日も同様の状況だった。人々は、黄金色の葉が散り敷いた並木道で目を輝かせてカメラを構え、また天の方向を仰ぎ見ている。鉛筆のように上端部を尖らせた銀杏の木々が、頭上に列を作って並んでいる。水平方向に目をやると、どこまでも続く金色のトンネルだ。私たちも人々の仲間に入り、何枚か写真を撮ってから、開いていた門を抜けて並木道から脇へ入った。
黄色一色のイチョウ並木とは異なり、ここは人通りも少なく、豊富な色が満ち溢れた空間だった。イチョウのほかケヤキ、カエデ、サクラ、クスノキ、スズカケなどが、それぞれの持ち味のある色を誇らしげに、惜しげもなく、空中に、地上にばら撒いている。私たちは、ここでしばらく時を過すことにした。その際に撮った写真を何枚かここに掲げよう。初冬でありながら、やさしく、豊かな秋をしみじみと感じたよい半日だった。
谷口 雅宣
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コメント
谷口先生
東京都もキレイな自然界が現存していることに驚きです。文章から穏やかな日を連想出来ました。
投稿: 原太郎 | 2008年12月 5日 00:12
谷口 雅宣先生
ありがとうございます。
神宮といえば,2年前の夏,明治神宮を参拝した折,手水舎の近くの水路に「玉虫」が流れているのを発見し,すくい上げて草むらに放してやったことを思い出します。
東京にもまだ玉虫がいることに驚きつつ,この自然をいつまでも守っていきたいと願いました。
投稿: 佐々木勇治 | 2008年12月 5日 21:25
原さん、
東京は、日本の大都会の中では緑が多い方だと聞いています。ありがたいと思っています。
佐々木さん、
そうですか。玉虫がいるなんて知りませんでした。でも多分、明治神宮だからでしょうね。あそこには森がありますから……。
投稿: 谷口 | 2008年12月 6日 11:02