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2008年12月18日

ホンダの戦略転換を歓迎する

 アメリカの自動車産業の窮状については、13日の本欄ですでに触れたが、今やビッグ3を凌駕しようとしている日本の自動車業界も大きな転換期を経験しているようだ。ホンダは17日に記者会見して、昨今の世界的な経済不況や大幅な円高に伴い、国内での投資戦略を大幅に変更することを発表した。F1(フォーミュラー1)の世界選手権からの撤退はすでに報道されているが、これに加えてスーパーカー「NSX」の後継者の開発を中止し、アメリカでの高級車ブランド「アキュラ」の国内導入を白紙にもどし、日米での販売を予定していた次世代ディーゼル車の来年投入を延期し、国内で大幅減産するなど、化石燃料を多く消費する車種の開発を抑えるという方向転換が明らかである。今日付の新聞各紙が伝えている。

 旧型のオデッセイに乗り続けている私は、ホンダのハイブリッド版小型SUVを待ち望んできた。だから私は、この決定を大いに歓迎する。しかしこれは、私個人の問題である以上に、地球環境全体にとって“脱化石燃料”が緊急に要求されているからである。私は、ハイブリッドの技術で一歩先を行くトヨタが、プリウスの次に、大型のレクサスを出すと発表した時、失望のあまり「拝啓 トヨタ自動車殿」と題する一文を本欄に書いた。あれから3年5カ月ほどたつが、私の望む車種は、まだどこのメーカーからも出ていない。今回のホンダの方針変更に際し、同社の福井威夫社長は「今後は、中大型車へもハイブリッドを導入する」と宣言したそうだから、私は2000ccクラスのものが近々出てくれることを望む。しかし、世の中の動きは速いので、別のメーカーから電気自動車(EV)で同等のものが出れば、そちらの方が環境への害が少なくなる可能性はある。
 
 この戦略転換と同時に発表された同社の来年3月期の業績予想では、下半期(10~3月)の営業損益が約1900億円の赤字に転落する。以前に出された同期の営業損益の予想が約1800億円の黒字だったことから比べると、実に3700億円もの下方修正だ。福井社長は、これを「かつて経験したことがない危機」と判断し、世界の自動車市場縮小の中で環境対応車の開発を強化する方向へと戦略転換を決意したようだ。『朝日新聞』(18日付)によると、「ホンダはこの日、リストラ策の一方、環境対応で生き残る施策を発表、ハイブリッド車(HV)開発に投資を重点化する姿勢を鮮明にした」という。そして、F1レースに投入していた技術者約400人も、今後は環境技術開発に投じる予定らしい。
 
 ホンダが他社より環境対応車の分野で遅れていたのは、HVに搭載する電池の分野だ。同社はこれまで、中型車以上の環境対策は“ディーゼル化”で十分と考えていたフシがあるが、今回の方針転換で、ディーゼル車投入が延期された。HVでは次世代のリチウムイオン電池の開発が進んでおり、トヨタはパナソニックと、ニッサンはNECとすでに共同出資会社を立ち上げている。しかし、ホンダは電機メーカー任せだった。それを今回、電池メーカー大手のジーエス・ユアサコーポレーションと共同出資で新会社を設立する決定をした。開発から製造・販売までを新会社で行うというから、同社はEVを開発する可能性も選択肢に入れているのではないだろうか。

 私は、人間の自動車に対する考え方が今後は変わっていく必要があると思う。自動車はこれまで、個人が確保した一定の狭い閉鎖的な空間内で、できるだけ贅沢な装置に囲まれながら、高速で安全に移動できることが“理想”と考えられてきたと思う。ドライバーが、自分を言わば“王様”だと感じられるような閉鎖空間を、高速で快適に移動させることを追究してきたのではないか。しかし、燃料が上がり、都市化が進み、車の台数が幾何級数的に増えてきた今日、さらに「温暖化ガスを出さない」という条件を加えるならば、自動車は、大出力のエンジンと様々な装備をもち、だから重い--というわけにいかなくなる。軽くて頑丈で、閉鎖性が緩い(半ば開放的な)空間が、中距離を中低速度で移動するのでいい--と割り切って考え、長距離を高速で移動したいときは、そのために開発された公共交通機関を利用すべきだと思う。つまり、移動の際は、個人が独占する空間をできるだけ狭くすべきなのだ。そういう意味で、これからは乗用車の小型化、軽量化、装備の簡素化、カーシェアリング等による共有化を進めていくのがいいと思う。
 
 谷口 雅宣

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コメント

暖かいお心遣いありがとうございます。
教化部大道場スクリーンにて映写されました映像及び音響につきましては、大変綺麗でありました。
式次第が私達に分かり易い様に、工夫されたカット割りであったと思います。
特に、聖歌「浄まりて」の間奏ピアノソロでは、弾き手の指づかいまで鮮明に映し出され、臨場感たっぷりでしたので、まるでその場にいる様でした。
また、清超先生のおくりなは、教化部で配布されましたプログラムにはありませんでしたので、先日のブログにて詳しく知る事が出来ました。重ねて御礼申し上げます。ありがとうございました。

投稿: Y.S | 2008年12月19日 07:53

谷口雅宣先生

 こういう言い方はおかしいかも知れませんが先生のご意見に大賛成です。
 また、小型SUV車のハイブリッドは私も先生と同様に待ち望んでおります。でも、それが中々出ないので私は現在のトヨタのカリブという小型ワゴン車を13年も乗っておりますが、さすがに来年はプリウスに買い換えようと思っておりました。でも、ホンダから小型SUV車が出るなら、それにしようと思います。
 ところで最近は先生の仰る様に車は軽くて頑丈で、中距離を中低速度で移動し、長距離は公共交通機関を使うとか車は持たないでカーシェアリングにするなどの動きがことに若い世代に広がっていますね。街頭インタビューなんかでも若者は特に車を欲しいとは思わないという人が増えているみたいです。
 私のテニス仲間でも、長距離のテニス合宿などは以前は車でしたが、現在は電車を使っております。
 自動車メーカーは現在はどこも大変でしょうが、環境対応型の車をどんどん開発して行って、これから良い方向に進んで行くのでしょうね。

投稿: 堀 浩二 | 2008年12月19日 09:50

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