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2008年11月11日

日本の温暖化対策は間に合うか?

 今日のニュースは、環境省が発表した2007年度の日本の温室効果ガスの国内排出量だろう。まだ確定していない「速報値」ということだが、前年度比で2.3%増えてしまった。2008年からは京都議定書で定められた削減期間に入るのだが、2006年度は減ったのに増加に転じたことは誠に残念である。主な理由は、中越地震で東京電力の柏崎刈羽原子力発電所が運転停止に追い込まれ、それを補うために火力発電所を稼働させたことだという。今日の『日本経済新聞』などが伝えている。同議定書では、日本は1990年の水準から「6%」削減することを義務づけられているが、この2007年度のレベルは、その基準値をすでに8.7%上回っているから、あと「15%」近く削減しなければならないことになる。

 こういう現状に危機感を覚えたのか、政府も温暖化対策にようやく力を入れだしたようだ。同じ日の『日経』には、政府が10日にまとめた太陽光発電普及のための行動計画が報じられている。それによると、道路や駅などの公共施設に太陽光発電を設置する場合、事業費の2分の1を国が補助するという。個人の家庭への補助は、2005年度に打ち切られていたのを復活し、年明けにも1kWh当り7万円の補助を始めることがすでに決まっている。また、学校などの自治体の施設へ導入する場合の補助は、事業費の2分の1、駅や空港への導入には3分の1が、これまで補助されてきた。この後者の補助率を引き上げるという決定だ。だから、何か抜本的な対策が行われるわけではない。私は、以前に本欄にも書いたが、ドイツのように、太陽光などの自然エネルギーで発電した電力を、電力会社が買い取る価格を引き上げる対策を実施してほしいのである。これにより、自然エネルギーの導入が利益を生むことになるから、導入の速度は大幅に向上するだろう。

 この問題の解決--つまり、議定書での約束を守る--ためには、日本が得意とする“漸進主義”ではもはや間に合わないと思う。漸進主義とは、積み木を1つずつ積み上げていくように、すでに存在する制度や基礎の上に1つずつ対策を加えていく方法だ。今回の太陽光発電への補助拡大が、まさにこの考えに則っている。また、環境税の導入についても、同じ考えが見て取れるのである。
 
 同じ『日経』には、環境相の諮問機関である中央環境審議会が11月中にまとめる報告書の原案の内容が報じられている。それを簡単に言えば、現行のガソリン税などのエネルギーにかかる税金を、税率はそのままにして、名前だけを「環境税」と言い換えることで環境税にしてしまうという方法だ。これは“ウルトラA”--つまり、何かするように見えて実質は何もしない方法--ではないか。「漸進」しているかどうかも定かでない。同記事によると、この審議会は「3年前の報告書で、石炭など化石燃料にかかる税率を維持したうえで、新たな環境関連税をかけるべきだと主張していた」というが、そういう積極策からなぜか大幅に後退してしまったのである。この理由について、同記事は「負担が増す産業界は“世界一高い法人税を負担するなか、これ以上は耐えられない”と抵抗。中環審は新税を上乗せするのは当面難しいとみて方針転換する」と書いている。何のことはない。環境省は業界の意見を拝聴して譲ったということだ。これでは、経産省のほかに環境省が存在している意味はほとんどない。
 
 東京都の石原慎太郎知事に対しては、その偏向的ナショナリズムや五輪の東京開催などで、私は反対の意を表明してきた。が、環境対策に関しては、意志を明確にした彼一流の手法が奏功している部分もあることを認めざるを得ない。今回は、深夜の都内での広告用照明をやめる件で、業界の一部と合意に達したらしいことが同じ『日経』の都内版で報じられている。それによると、同知事は先月、日本アドバタイザーズ協会、東京屋外広告協会、全日本ネオン協会、東京屋外広告美術協同組合に対して「営業中店舗以外の照明をおおむね午後11時から12時に消灯する」などの協力を要請したところ、このほど大手企業約300社が加盟する日本アドバタイザーズ協会から「零時には消灯するよう周知する」との回答が届いたという。これを受け、同記事は「大手企業の多くが業界団体の要請に応じる見通しだ」と予測している。これで十分とは思わないが、“よいスタート”と言えるだろう。
 
 谷口 雅宣

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コメント

 ≪“ウルトラA”--つまり、何かするように見えて実質は何もしない方法≫つまり、ハッキリしない姿勢には私も大反対です。
 そういう曖昧な行動を執られる組織や人は善を行っているように自身は思っても実はそうではない部分が多々あると思われます。
 次に、組織の末端にいる人が地球温暖化防止のために
良いアイディアを持っていてもその組織の上層部の人たちがそれと正反対の考えを持続しているとなかなか、素晴しいアイディアが実行されない部分があると思います。これと反対に組織の上層部の人たちが持っているアイディアは、たとえ下の人たちが反対してもほぼ強制的に実施される部分がかなりあると思われます。
 すべての事柄がそうだ!といっているのではなく、
日本社会を構成している様々な組織においては、だいたいそのような風潮があると思います。
 故に、様々な組織の上層部の人々すべてが善を強力に実現する、という精神になればよいと思います。
 そのために「正しい信仰を伝える」ということがますます重要になってくると思われます。

投稿: 志村 | 2008年11月12日 23:44

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