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2008年11月12日

モルジブの決意

 地球温暖化による被害は様々な形で現れているが、その最も劇的な形は海面上昇による国土の喪失である。北極の氷原が失われつつあるため、ホッキョクグマが絶滅の危惧に瀕していることは、すでに多くの映画や写真で世界中に伝わっているだろう。が、動物のことではなく、我々人類の同胞が国土を失う可能性について、当事者を除き、いったいどれだけの人間が真剣に考えているのだろうか。昨今の“金融危機”や“経済危機”をめぐるドタバタ騒ぎのために、温暖化対策が忘れられる傾向が出ていることを、私は悲しく思う。日本では産業界の顔色をうかがって、環境省が環境税の導入を実質見送ろうとしていることを、昨日の本欄で伝えたが、この例など“恥さらし”の部類に入るだろう。

 インド洋に浮かぶ千二百もの島から構成されるモルジブという国は、南太平洋のツバル共和国と並び、海面上昇による“消滅”の危機が深刻化している。この国では最近、大統領が新しく替わったが、新大統領、モハメッド・ナシード氏(Mohamed Nasheed)は、モルジブ国民が移住するために外国の土地を買う基金を創設する計画を進めているという。12日付の『ヘラルド・トリビューン』紙が伝えている。それによると、ナシード大統領は観光産業から得た資金を基金に回し、スリランカとインドの土地を移住先として購入することを検討中らしい。同大統領の報道官は、「地球温暖化と環境問題はモルジブ国民にとって大きな関心事」だと言い、「我々の国土は、海面からわずか1メートルの高さにあるから、これ以上の海面上昇は国民に悲惨な結果をもたらし、国の存在自体を脅かすもの」だという。

 モルジブの首都・マレは、日本の資金援助で建設された堤防によって周囲を護られているが、そんな備えがない他の多くの島々は、2004年の大津波で海水を被ってしまったという。この国は観光産業で発展してきたが、そのおかげで、20年前には20万人だった人口が今は40万人に達しようとしていて、浸水被害は深刻な問題になっているのである。モルジブのような島嶼国は、自国に責任がないにもかかわらず、先進国が排出する温室効果ガスの増加によって存立の危機に直面しているため、1992年に島嶼国同盟(Alliance of Small Island States)を結成、先進国に排出量を下げるよう訴え続けている。同同盟は現在、ツバル、モルジブのほか、バハマ諸島、マーシャル群島、キューバ、シンガポール、ドミニカ共和国、フィージー、トンガ、ハイチなど43カ国が加盟しており、グワムなど4カ国がオブザーバーに登録されている。人口では、世界の5%を含むという。

京都議定書での約束が守れないような先進国には、少なくとも道義的に、海面上昇で国土を失う人々を受け入れる義務が生じる、と私は思う。
 
 谷口 雅宣

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