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2008年10月21日

ウランも枯渇する

 今の日本政府と自民党が地球温暖化対策の“中心”に据えたいとしているものの1つが、原子力発電の拡大であることは疑う余地がない。その理由は、現在の政・官・民の協力体制を温存し、さらに発展させたいからだろう。もっと具体的に言えば、政府・自民党と経済産業省、そして電力会社の密接な関係は、現在の政治権力の基盤になっているからだ。しかし、これまた疑う余地がないことは、日本は世界で稀なる被爆国であるために、国民の間に原子力利用への拒否反応が根強いということだ。こうして、原発の立地の問題が出てくる。原発の稼働拡大や増設をしたい政府は、建設候補地に多額の“助成金”を交付することで建設反対の声を抑えようとする。しかし、それでも大都市に近い地域は原発反対勢力が強いから、立地候補地は勢い過疎地域へ、過疎地域へと移動する。こうして、現在のような辺鄙な土地に多くの原発が建設されることになる。これによって生じるムダと非効率は、ばかにならない。具体的に言えば、発電所から電力需要地(大都市)までの距離が遠くなることで、送電効率が大幅に悪化するのである。

 原子力発電についての私の考えは、本欄で何回も書いてきた。簡単に言えば、原発は大量の処理不能の放射性廃棄物を生み出すから、決して「クリーン・エネルギー」などではないということ。また、それを地下深く埋めておけばいいという現在の考えは、「環境倫理」にも「世代間倫理」にももとるということ。さらに、核武装へのオプションを残しておきたいという観点は、現実的のようであって本当は現実的でないのである。
 
 ところで、この原子力発電に関しては、私は、燃料であるウランの埋蔵量に限りがあるという問題を、見落としていた。その量的限度は、石油の場合よりも少ない可能性が指摘されているのである。環境科学者のダニエル・ボトキン氏(Daniel B. Botkin)が、21日の『ヘラルド朝日』紙の論説欄に詳しい数字を書いている。それによると、現在、化石燃料は世界のエネルギー需要の87%を供給しているのに比べ、原子力発電の割合はわずか4.8%だという(電力需要だけに限ると、この割合は化石燃料が67%で、原発は15%)。これに対し、ウランの埋蔵量の最も楽観的な見通しは550万トンで、世界の原発のウラン消費量は、国際原子力機関(IAEA)によると年間7万トンという。ということは、ウランを経済的な値段で採掘できる年数は、約80年ということになる。
 
 ボトキン氏は、ここからさらに進んで、現在の世界のエネルギー需要をすべて原発だけで賄う場合を考える。そうする場合、原発をどんどん増設して発電容量を17.4倍に引き上げねばならないという。そして、これらの原発で消費されるウランの量は年間120万トンになる。ということは、上記したウランの経済的な埋蔵量(550万トン)をすべて掘り尽くすのには、「5年」かからないという計算になる。これは、驚くべき数字ではないだろうか。地質学者が使う「埋蔵量」という言葉にはもう1つあって、それはどんなにコストがかかっても掘り出せるだけ掘り出した場合の量で、「確認埋蔵量」(identified resources)と呼ぶらしい。ウランの場合、この確認埋蔵量は3500万トンだそうだから、これを消費し尽くすのにも「29年」しかかからないことになる。これではとても、世界のエネルギー需要を満たすことはできないから、同氏は、「世界にエネルギーを供給する手段として、原子力が主流になることはありえない」と断定するのである。

 ボトキン氏の上の計算はかなり“保守的”ではないか、と私は思う。なぜなら、それは「世界のエネルギー需要は一定している」という前提のもとでの計算だからだ。が、我々がよく知っている事実は、中国、インド、ロシアなどの人口の多い中進国では、エネルギー需要は急速に拡大しているのである。ということは、将来のウランの供給は決して「安定的」ではない。また、ウランの供給地が地球上のごく一部に限られていることを考えれば、我々が将来、原子力エネルギーに頼って生活することは、現在の石油エネルギーに頼った生活以上に不安定となる可能性があると言えるのである。

 だから、我々の将来のエネルギー源は、枯渇せず、かつ他から奪わないものである必要がある。再生可能な自然エネルギー以外に、この条件を満たすものはないのである。
 
 谷口 雅宣

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コメント

 原子力発電設備には大量の水(冷却用の水)も使用すると思いますが、最近湧き水が枯渇しているところが何箇所かあるようです。自然の水の通り道に何かの異変が起きているようです。
 そのようなことからこれからの電力確保は自然をなるべく破壊しないで得られると考えられる、太陽光発電・風力発電・地熱発電等のウエイトを伸ばすべきと思います。が、地熱発電は、地下水に何も影響が無い、という状態においてはじめて有効になる思いますしまた、コスト(地熱発電設備建設に至るまでの調査工事・発電施設等)も太陽光発電設備建設に比して掛かると思われます。
 以上,シロウトの唐突な意見かもしれませが送付させて頂きます。
 なお、くどいようですが、地下水に何かの異変が起きているというのは報道もされていることでありほぼ事実に間違いないと思われます。

投稿: 志村 | 2008年10月22日 17:43

志村さん、

 地下水の異変は、東京では当たり前です。地下何十メートルも掘って、地下鉄網が整備されていますから。私の庭にあった井戸は遠の昔に枯れてしまいました。

投稿: 谷口 | 2008年10月23日 14:42

やはり自然エネルギーの利用が大切なのですね。そういう方向に全世界がなってくれたらいいと思いました。

投稿: 奥田健介 | 2008年10月23日 15:36

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