カボチャをくり抜く
今日は休日を利用して、カボチャをくり抜いた。例のハローウィンの飾りのためである。最近は、このアメリカ産の秋祭が日本の街にもすっかり定着した感がする。あちこちのショーウィンドーや花屋の店先に、黄色いカボチャが飾られている。私が子どもの頃は、ハローウィンが何であるかを知る人は少なく、知っている人間は、こっそり“舶来製品”を身につけているような、何か妙な特権意識をもっていたものである。
私がハローウィンのことを初めて知ったのは、恐らく中学の2~3年(15歳)の頃だ。それは、淡い初恋の思い出と重なっている。当時、私が通っていた青山学院中等部では毎年、英語のスピーチコンテストをやっていて、私はそれに出場したことがある。その頃、東京・渋谷の宮益坂に英会話学校があり、私は両親に勧められてそこで英会話を勉強していた。そんな関係で、英語を話すことは苦手でなかったようだ。そのスピーチコンテストに1学年下の部で出場した女の子に、私は好意を寄せていた。その子は、アメリカに短期留学したか、あるいはホームステイをした時のことをコンテストで話し、そこにハローウィンが出てきたのだった。子供たちが仮装をして近所の家を回り、「Trick or treat!」(ごちそうくれなきゃイタズラするゾ!)と言う様子を彼女が楽しげに話したのを、私はドキドキしながら聞いていた。
ハローウィンの由来については、2005年10月27日の本欄に書いたので繰り返さないが、起源は古代ケルト人のサムハイン(Samhain)祭と言われる。死の神であるサムハインを讃え、新しい年の到来と冬を迎えるための祭で、10月31日の夜には死者の魂が家に帰ると信じられたらしい。今日の日本ではそんなことは問題とされず、2月のバレンタイン・デーに次ぐ商業主義的西洋祭となっている。
子どもがまだ小さい頃は、私はサッカーボール大の大きな黄色カボチャをくり抜いたものだが、それを面白がってくれる人はもう妻だけになった。そこで今日は、夫婦で渋谷へ買い物に行ったついでに、花屋で売っていた直径9センチほどの黄色カボチャを2個買った。そして、“笑顔”と“怒り顔”の夫婦カボチャに仕立ててみた。作ってみて、気がついた。カボチャを人の顔の形にくり抜くという行動は、対称性論理にもとづいている。生物学的には全く異なる「人間」と「カボチャの実」という2つのものが、これによって対称性を獲得して“似たもの同士”となる。我々夫婦は、これからしばらくの間、このいずれかのカボチャに自分を同一化して生きることになるだろう。
もう一つ気がついたことは、サムハイン祭も対称性論理にもとづいているということだ。毎年“あの世”から“この世”へ死者の魂が帰ることを宗教行事とすれば、生者と死者は、いくばくかの対称性を獲得する。日本の“お盆”の習慣とも似ているようだ。
谷口 雅宣
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コメント
合掌ありがとうございます。
夫婦かぼちゃ、笑顔と怒り顔エピソードも含めて楽しく
見せていただき対象、非対称の理解を深めました。
私も本日、日常の対称、非対称を実感しました。
それは会社周辺のごみ拾いをしているとき、
フェンスの向こうが駐車場という場所がありました。
こちらの道路だけをキレイにしても、心に引っかかるので中に入ってきれいにしました。
内も外もきれいになり、フェンスがありながら、内も外も対称として感じました。
投稿: 古谷正 | 2008年10月17日 10:12
古谷さん、
>>フェンスがありながら、内も外も対称として感じました。
いいですね。「内外一如」も対称性論理なのですね。
道路の掃除で、両隣の家の前を掃くようなものですね。
投稿: 谷口 | 2008年10月17日 11:22
学者の分析は不明ですが人間は対称性論理を本能的に持っている様に感じるのですがどうなのでしょうか?
投稿: 尾窪勝磨 | 2008年10月18日 23:20
夫婦かぼちゃのジャッコランタン、
なんとも愉快ですね。
そういえばうちの夫も去年は庭でとれたかぼちゃを
くりぬいておりました。
娘は聖公会の幼稚園に通っておりましたので、
ハロウィンでは子供たち手製の衣装を着て、
「Trick or Treat!」と叫んでまちを練り歩き、
あちこちでたくさんおやつをいただいてきました。
牧師さんである園長先生お手製の
大きな大きなジャッコランタンが
園に飾ってありました。
外国のお祭りですが、楽しかった思い出があります。
投稿: 石光 淑恵 | 2008年10月22日 08:43
石光さん、
ご主人は黄色いカボチャを作られるのですか? それとも緑色の食用のものですか? もうお子さんはジャッコーランタンは卒業ですか?
投稿: 谷口 | 2008年10月22日 21:50
副総裁先生
庭でとれたかぼちゃは、
コンポストに捨てた種から
自然に生えてきたものですので、
緑色のです。
今年も生えてきましたが、小さいもので
これは食べてしまいました。
娘は小学生です。教会の小さな幼稚園でした。
卒園後も教会に通っていたら
今もハロウィンを楽しんだかもしれませんが、
生長の家に通っておりますので(笑)
投稿: 石光 淑恵 | 2008年10月23日 00:48
石光さん、
>>生長の家に通っておりますので(笑)<<
ハハハハハハ……。生長の家では秋祭りはしないのですね。では、私はキリスト教かな? (深く考えないでください)
投稿: 谷口 | 2008年10月23日 14:30