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2008年10月17日

ギャオの独り言 (2)

 ミー君のことを少し話そう。
 
 ミー君は、ボクらのご主人だ。ご主人は、けらいよりえらい。でも、けらいのめんどうを見てくれる。ボクらと遊んでくれるし、ボクらをそうじゅうしてくれる。「そうじゅう」というのは、ボクらに命をくれることだ。ボクらを動かし、ボクらにことばを話させ、ボクらに「生きている」と思わせてくれる。つまり、ミー君は神さまみたいなものだ。ご主人は神さまで、ボクらはけらいだ。
 
 だから、ボクもデカパンも、ミー君が「やれ」といったことを喜んでする。いい役かあく役かはもんだいじゃない。でもたいてい、デカパンがいい役で、ボクがあく役だ。つまり、デカパンは弱くて、ボクは強い。その強いボクをこらしめるために、カシキンマンが出てくる。じつは、コイツがもんだいなんだ。
 
Mtimg081017  ミー君は、神さまみたいにボクらをそうじゅうすることはできるけど、ぬいぐるみの世界にそのままでは入れない。ミー君は、ぬいぐるみより大きいからだ。あっとうてきに大きい。だから、ぬいぐるみをあやつることで、ボクらの世界にやっと入れる。だから、カシキンマンをあやつるときは、カシキンマンがミー君なのだ。カシキンマンはキザなヤツだけど、ミー君が中に入っているのだから、しかたがない。ボクは、カシキンマンにやられたふりをする。でもほんとうは、ヤツにやられるんじゃなくて、ヤツになりきっているミー君にやられてあげるのだ。そう思えばがまんできるし、うれしい。
 
 もんだいなのは、ミー君がカシキンマンになりながら、ボクらのきもちをわかってくれてるのかってことだ。たとえば、ボクがあく役になってデカパンをいじめているとする。そこへカシキンマンがやってくる……

カシキンマン「おい、らんぼうもののギャオ。デカパンをいじめるな!」
ギャオ「何だ、このキザ男。デカパンはボクのけらいだから、いじめるもいじめないも、ボクのじゆうだ」
カシキンマン「ぬいぐるみは、みんな平等だ。デカパンもじゆうに生きるけんりがある」
ギャオ「何だ、そのけんりってのは? そんなものがあるなら、見せてみろ」
カシキンマン「けんりは見えないけど、みんなにある」
ギャオ「ボクは、見えないものなんか信じない。信じないものは、あいてにしない」
カシキンマン「それじゃ、おかねは信じるか?」
ギャオ「おかねは見えるし、使える。だから信じる」
カシキンマン「では、ここに1万円ある。これをやるから、デカパンを自由にしてやれ」
ギャオ「何、1万円だと。それで何が買えるんだ?」
カシキンマン「人魚のあんパンが100個ぐらい買えるぞ!」
ギャオ「そいつはいい。で、人魚のあんパンって、どこに売ってる?」
カシキンマン「渋谷の『小さい人魚』というパン屋にある」
ギャオ「じゃあ、今すぐ買ってこい。買ってきたら、デカパンを逃がしてやる」
カシキンマン「おれはカシキンマンだから、金を出すだけだ。自分で買いに行け!」
ギャオ「渋谷まで行くのは、めんどーだ!」
カシキンマン「じゃあ、タクシー代も出してやる」
ギャオ「タクシーひろうのも、めんどーだ!」
カシキンマン「なんてヤツだ、このカイジュウは!」

 ボクは恐竜のぬいぐるみで、カイジュウじゃない。カイジュウといわれるのが、いちばんきらいだ。だから、ここで頭にきてカシキンマンにおそいかかる。

 ギャオーーーーーーーーーーーー

 たとえば、こんなぐあいになって、カシキンマンとボクは戦う。で、さいしょはボクが勝って、それからヤツがギンコーへ逃げて、そこでパワーアップして、ボクにいろんな術をかける。で、ボクがけっきょく負けるんだ。そして、カシキンマンがいつものように、こうさけぶ--

「オレのかねのいりょくは、シジョーいちだ!」

 でもさ、ボクはこんな役、ほんとはきらいなんだ。デカパンはボクの友だちだから、いじめるのはいやなんだ。でも、ミー君が「いじめろ」というから、しぶしぶいじめる。あく役っていうのは、心で泣きながら悪いことをする、好きな人のために。だから、こういう劇が終わったら、ミー君には小さな声でいいから、こう言ってほしいんだ--
 
「ごめんね、ギャオ。ほんとはいいやつなのに……」
 
 谷口 雅宣 

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コメント

何となく分かるようなきがします。好きな人のために心で泣きながら悪いことをすると言うのが印象に残りました。きっと真理を語っているのだと思います。

投稿: 奥田健介 | 2008年10月19日 23:42

ギャオ「デカパンは僕の友だちだから、いじめるのはいやなんだ。でも、ミー君が「いじめろ」というから、しぶしぶいじめる。あく役っていうのは、心で泣きながら悪いことをする、好きな人のために。
ギャオ君へ
いじめるのが嫌なら、例えミー君の家来であっても「いじめろ」と言われったっていじめてはいけない!例え好きな人の為であっても心で泣く位なら悪い事をしてはいけない!しぶしぶであろうと心で泣こうと悪い事をすれば怪獣と言われてもしかたがない!言い訳は女、子供のする事だ!例えギャオ君に不利になったとしても断じて悪い事をしない時、初めてギャオ君は怪獣と言われないのだ!

投稿: 尾窪勝磨 | 2008年10月26日 20:58

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