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2008年8月 3日

赤塚不二夫さんを偲ぶ

 マンガ家の赤塚不二夫さんが亡くなった。中学・高校と「おそ松くん」や「天才バカボン」を読んで育った私としては、赤塚さんが私より1回り以上年長であるにもかかわらず、「一時代が終わった」と寂しく感じる。1日の本欄を読んだ読者は、高校時代の私は学校の新聞紙上で論陣を張る“硬派”のような印象をもったかもしれない。しかし私は、その一方で、教室や出版部の部室で友人と『少年サンデー』や『少年マガジン』を読んで笑い転げる普通の高校生でもあったのである。また、授業の合間に、ノートの隅にチビ太やイヤミ、デカパンの絵を描いていたことも憶えている。
 
 私は若い頃に赤塚さんのナンセンス・ギャグから“笑い”を大いに頂戴したのだが、結婚後にも“父親”として再びお世話になった。というのは、子どもが小学校へ通いだすと当然、テレビを見たり、マンガを読むようになるが、巷には質の良いマンガが少ないのが親の悩みだった。特に子どもに小遣いをあげるようになると、彼らは本屋へ行って自分でマンガが買えるから、エロ・グロや大人のマンガに触れる機会が生まれる。そういうリスクをできるだけ減らそうと思い、考えついたのが、父親が自分で選んだマンガをどんどん買ってしまうという方法だった。
 
 私は子供のころ、赤塚不二夫だけでなく、横山光輝、桑田次郎、石ノ森章太郎、白土三平、水木しげる、手塚治虫……などのマンガに親しんだ。これらの作家の作品は、スケールの大きさや物語性、人生の描き方、絵の質などで優れていると感じていたので、それらを先に子供たちに味わわせれば、二流・三流のマンガには興味を向けなくなるだろう、と考えたのだ。「悪貨良貨をくじく」と言われるが、その逆も可能であるに違いないと思ったわけだ。成長過程にある子供の心は、実際にはそんな単純にいかないのだが、親としてはそう思うことで安心したかったという面もある。そんなわけで、心配性の父親は、自分が子供の頃に読んだマンガの単行本を、機会を見つけてはいそいそと本屋で買い、子どもたちの本棚を埋めていったのである。
 
 こうしてわが家には、子供にとっては“一時代前”のマンガ文庫ができ上がった。その中でも、子供たちから最も人気のあった作品の1つが「天才バカボン」だった。特に2番目と3番目の子がこれの愛読者となり、同じマンガを何回でも読んだ。休日に部屋で静かにしていると思えば大抵、ベッドの上でマンガを開いてニヤニヤしているのだった。
 
 “恩人”と言えば大袈裟だが、こんな具合にわが家で二代続いてお世話になった赤塚さんの冥福を、心からお祈り申し上げます。
 
 谷口 雅宣

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コメント

 えっ 先生も赤塚ワールドに魅せられておられたのですね。 私も赤塚不二夫さんのファンです。赤塚さんのことでは思い出があります。20年以上前、私は日本教文社で編集者をしていた時ですが、毎月、豪徳寺にあった漫画界の大御所、杉浦幸雄さん(故人)宅に出向いて、原稿を頂いておりました。目当ての原稿を頂くとすぐに辞するのではなく、30分ほど杉浦さんとお話をするのが恒例でした。杉浦さんは生長の家の熱心な信徒で、生長の家の素晴らしさを説いておられました。ある日、原稿を頂きに参上すると、「この間ね、赤塚に『生命の実相』をあげて読めと言ったんだよ。そしたら後でいい本ですねと言ってきたんだ」と笑顔で語られたのです。赤塚不二夫さんを「赤塚」と仰ったので、少なからず驚きましたが、あの赤塚不二夫さんが『生命の実相』を読まれたと知ってうれしかったのを覚えています。赤塚さんは、大陸から引き揚げて苦労された方で、親孝行で有名な人でもあったようです。謹んで、冥福をお祈りいたします。

投稿: 山本夏樹 | 2008年8月 8日 16:39

山本さん、

 赤塚さんが『生命の実相』を読んだのですか? 知りませんでした。いつごろ読んだのでしょうかね。「それでいいのダ」という言葉は、“実相は完全”ということなんでしょうか???? 

投稿: 谷口 | 2008年8月 8日 21:16

谷口雅宣先生、
私がこの話しを杉浦さんから聞いたのは、1987年から1988年にかけてのことです。普及誌が出る前のことですから間違いありません。先生の鋭いご指摘でハッとしました。「それでいいのダ」という言葉は、“実相は完全”ということに通じると思います。赤塚作品は奥が深かったのだ! 改めて読んでみようと思っています。

投稿: 山本夏樹 | 2008年8月 9日 10:06

山本さん、

>>私がこの話しを杉浦さんから聞いたのは、1987年から1988年にかけてのことです。<<

 そんな昔のことは、忘れようとしても思い出せないのダ! (笑)

投稿: 谷口 | 2008年8月 9日 14:23

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