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2008年8月 5日

石油高騰に“光”を見る

 石油の値段の騰勢が一服している。アメリカの原油先物価格は、7月11日に史上最高値の1バレル147.27ドルを記録したあと値下がりが続き、一時は最高値から18%も下がってから、再び上昇している。8月5日付の『日本経済新聞』によると、この主な原因は、世界最大の石油消費国・アメリカでの需要減退らしい。自動車はアメリカでは必需品だから、ガソリン需要はこの国では減りにくいと考えられていた。が、7月25日までの4週平均で、ガソリン需要は前年同期を「3.2%」下回る日量938万バレルとなった。つまり、アメリカ国民は昨年より自動車に乗らなくなっているのだ。公共交通機関が発達している日本では、すでにこの動きは顕著だが、そうでないアメリカでガソリン消費が減ってきたことが、先物価格の値下がりを呼んでいる。しかし、中国などの新興国ではガソリンや灯油を低く抑える政策を続けているため、需要は衰えず、今後の石油の値段を下支えすると見られている。
 
 私も、自動車に乗る機会がめっきり減った。その1つの理由は、近所に地下鉄の路線が新設されたためだが、ガソリン価格が高いことも理由の1つだ。仕事で燃料を使わなければならない業種への、打撃は大きいだろう。漁船の休漁やトラック運転手の苦境が報道されているが、政府が補助金を出すよりは、サービスや商品の末端価格にコストを転嫁すべきだと思う。自由主義経済では、基本的にはこの価格の変化によってサービスや商品の動向が変わり、産業構造の変化を通して次の時代に適応していくのが、もっとも自然であるからだ。
 
 このことは、国際貿易の分野ではすでに起こりつつあるらしい。4日付の『ヘラルド・トリビューン』紙は、昨今のグローバリゼーションの“行き過ぎ”と見なされていた現象の一部が、石油の値段の高騰によって是正されつつあることを伝えている。この“行き過ぎ”現象とは、私がかつて『足元から平和を』(2005年、生長の家刊)で紹介したような「経済活動のムダ」のことだ。イギリスで缶入りコーラを生産するためには、アルミ缶の原料のボーキサイトをオーストラリアから北欧の国へ運び、そこでアルミ板に加工し、さらにイギリスに渡ってそこで成形されて缶となり、飲料の原料はアメリカやフランスから輸入され……というように、地理的距離を無視してコストを下げることが横行していた。ところが、燃料費が高騰すれば当然、輸送費にはね返り、地理的距離は無視できなくなる。そこで、「需要地の近くでの生産」へと切り替えねばならなくなっているという。

 同紙が挙げている例に、電気自動車を生産するテスラ・モーター社がある。同社は当初、アメリカ向け高級乗用車を生産するのに、タイで製造した蓄電池をイギリスへ送って組み立て、ほぼ完成した製品をアメリカへ輸送する計画だった。ところが、燃料費が高騰したためこれを変更し、今年の春に生産開始した時には、蓄電池をカリフォルニアで生産して、自動車も同地で組み立て、そこで売るという方式に変更した。これによって同社は、車1台の生産に必要な輸送費を8千キロ分減らすことができたという。また、スウェーデンの家具メーカー「イケア」は、アメリカ向けの家具を造るために、今年5月、最初の工場をアメリカ国内に建設したという。また、いくつかの電子機器メーカーは、メキシコにあった工場を賃金の安い中国へ移転していたものの、輸送費の高騰により、もともとあったメキシコの工場で生産した方が、輸送費を含めたコスト全体が安くつくことが分かり、生産拠点を移し始めているらしい。

 この動きは、工業製品だけでなく農産品にも及びつつある。つまり、“地産地消”の動きが石油の高騰によって加速されているのだ。これは、食品の“フードマイレージ”を減らす動きと軌を一にしているから、歓迎すべき動向である。私は、生長の家の講習会で日本各地へ行くが、ホテルでの食事の際にいつも不思議に思うことがある。それは、朝食に出る果物や野菜がどこへ行っても、どんな時季でも変わらないことである。特に果物はパイナップル、オレンジ、グレープフルーツ、バナナなど、一見して国産品でないものだけが用意されている。私としては、秋から冬に奈良へ行ったらカキを食べたいし、四国へ行ったら豊富な柑橘類が味わいたい。山梨や長野で産地のブドウやモモを期待しても、それが出ることはまずない。恐らく輸入品の方が安く手に入るからである。これが是正されて、「産地で旬のものが安く食べられる」という当り前の経済にもどるとしたら、石油高騰にも“光”は見えるのである。
 
 谷口 雅宣
 

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コメント

副総裁先生

ありがとうございます。
石油高騰も悪くないようですね。
都内でも渋滞が少なくなりました。
車の価値が上がりましたね。
石油高騰のお陰でガソリンの消費量が減り、地球温暖化防止に少しでも役立つことはいいことだと思います。

ホテルでのフルーツですが、大賛成です。
何処に行ってもグレープフルーツ、味の薄い大根のようなメロンが定番です。食後はりんごが好きなんですが、りんごを置いているホテルは皆無です。

今は急激な原油高だから、漁業や運送業界に国としても何らかの補助があったとしても、近未来には価格に反映してゆくことが必要です。

その価格で売れないものは、市場のニーズには合わないということで、違うことを考えてゆかなければならないと思います。

投稿: 佐藤克男 | 2008年8月 6日 05:43

 はじめまして!むとじと申します。
私も石油高騰を悪いようには考えていません。
スーパーにあんなにたくさんの商品はいらないので・・・
ないならないなりにけっこう暮らせます。
より豊かで便利になりすぎて世の中がよく見えなかったので、この機会にエコ、環境問題、本当に必要なものなのか?考える良い機会かと思います。
 私は富山県に住んでいますが、田舎は車社会ですが、最近自転車率が増えているように思います。私も極力自転車で買い物に行ったりしています。
 エアコンも家ではまったく使っていません。その生活に慣れると、ちょっとした風が涼しく感じるようになります。
日本人は昔から、五感で涼を感じられるすばらしい感性があります。季節の花々、風鈴、虫の音、簾戸など・・・
見たり聞くだけでも涼しくなります。
 仕事も接客業なのでエアコンを入れないといけないのですが、体感温度を大切にしています。店に入ってすぐの場所が涼しいと、他の部屋はドライにしておいても気がつきません。なので、こまめにチェックしています。冷たいおしぼりとステキな陶器の器で麦茶を出すと喜ばれます。
 無理せず、1人1人のできる範囲から環境を考え、実行していけると良いですね。そうしたら世界は変わると思います。

投稿: むとじ | 2008年8月 7日 11:59

佐藤さん、

 ご声援、ありがとうございます。
 高騰すれば石油の消費量が減り、結局、“石油ピーク”になるのでは……などと考えています。今年か、来年か、ではないでしょうか? 地球経済の大変動が始まっているのでは…?

むとじさん、

 コメント、ありがとうございます。
 富山県は夏、大変暑いと聞いていますが、エアコンなしで大丈夫なのですか? 

投稿: 谷口 | 2008年8月 7日 17:59

雅宣先生へ
お返事がいただけるとは・・・ビックリです。
富山の夏は確かに非常に暑いです。
でも、田舎の良い所は夜が涼しいことです。
夜、窓を開けて寝るといろんな虫の声が聞けていいですよ。
東京の熱帯夜のほうが大変そうですね。

投稿: むとじ | 2008年8月 7日 21:47

むとじさんは、エアコンをお使いにならないだけでなく
ご夫婦で非常にエコ生活に取り組んでおられます。
家庭菜園をされたり、植林のボランテイア活動されたり
リサイクル、リユーズ等を楽しくセンスよく実践されて
おられます。プラス、ブログを通して、その自然と共に
生きる様子を世へ発信されておられます!!

むとじさんのすばらしい書き込みを読んでうれしくなって
書き込んでしまいました!!

副総裁先生や、むとじさんご夫婦のように、より多くの
人のブログからも、すばらしいメッセージが発信され、
世界中の人々に愛と喜びと調和の世界が拡まること
非常に楽しみです!!

感謝合掌、ありがとうございます!!

投稿: GEN | 2008年8月 8日 17:34

むとじさん、

 そうですか、田舎の夜は涼しいのですか……。うらやましいです。


GENさん、

 ふーむムムムム……むとじさんと、お知り合いですか? 同郷のよしみですか? 私は最初、「むつじ」さんかと思いましたが……(笑)

投稿: 谷口 | 2008年8月 8日 21:21

どなたでしょうか? 私の名を呼ぶ方は。

ああ、小閑雑感さんでしたか。(笑)

私は「むつじ」ですが、主役は「むとじ」さんという方のよ
うで・・・。

かくいう私もむとじさんと同じように、自宅でエアコンを使っていません。昨夜は風が無く、この夏一番の寝苦しい夜でしたが、エアコン無しですごしました。

秘密兵器は「クールパンチ」という冷凍食品の輸送に使う保冷剤。とにかく強力で冷凍庫でカチカチにしておくと朝までひんやりしています。ですからタオルでぐるぐるまきにして使用しているのです。

とんだおじゃまをいたしました。では失礼いたします。

投稿: 山岡むつじ | 2008年8月 9日 09:42

むつじさん、

 「クールパンチ」をタオルでぐるぐるまきにして、それをどこへ当てるのですか? 

投稿: 谷口 | 2008年8月 9日 14:28

谷口 雅宣先生

>「クールパンチ」をタオルでぐるぐるまきにして、それをどこへ当てるのですか?

はい。まくらと同じような位置(寝ている頭の下)で使用しています。朝は外れていることもありますが。

投稿: ハイエコポン | 2008年8月 9日 20:18

むつじさんとむとじさんかあ。。。はしゃははは。
むとじさんは私のベストフレンドのひとりでーす。

投稿: GEN | 2008年8月10日 12:21

商売をやっている方や、生産者の意見もいただかないと、実際に石油高騰が及ぼす影響はわからないと思います。これらの人たちは厳しい状況になっているのではないでしょうか。

投稿: 早勢正嗣 | 2008年8月12日 01:57

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