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2008年8月20日

地熱エネルギーを活かそう

 環境運動家のレスター・ブラウン氏が主宰するアースポリシー研究所から、19日付のニュースレターが電子メールで送られてきた。同氏は『プランB』などの単行本や講演活動を通じて地球環境問題の具体的な解決法などを提言して続けているが、今回のニュースレターは「地熱発電」を取り上げていて、希望を抱かせる情報が多くある。わが国での地熱発電の可能性については、私は本欄でも述べたことがある。ご存じのように日本は火山国だから、地熱エネルギーは豊富にあり、したがっていたるところから温泉が出る。これを発電に利用してこなかったことは、むしろ不思議なくらいだ。地熱エネルギーは事実上無限にあり、自然現象そのものだから、誰からも奪わない。これを環境汚染しないように効率的に利用できれば、化石燃料の使用を大幅に減らすことができるはずである。
 
 ジョナサン・ドーン氏(Jonathan G. Dorn)の名前によるニュースレターの記事は、この分野の開発に世界は今、どう取り組んでいるかを報じており、大いに参考になるので、読者にお知らせしたい。
 
 地熱発電の歴史は案外新しく、1904年にイタリアのラルデレーロ(Larderello)というところで始まったという。今や24カ国で行われていて、そのうち5カ国では、1国の発電量の15%以上を占めるまでになっているという。2008年の前半の段階で、地熱による発電容量は世界全体で1万メガワットに達し、イギリス1国の人口に匹敵する6千万人の電力需要を満たすまでなっている。地熱エネルギーが豊かな地域は太平洋を取り囲む火山帯で、チリ、ペルー、メキシコ、アメリカ、カナダ、ロシア、中国、日本、フィリピン、インドネシアなどが含まれる。また、アフリカでは「グレート・リフト・バレー(Great Rift Valley)」と呼ばれるケニアとエチオピアにまたがる渓谷地帯が有望である。同研究所の調べでは、地球が提供する地熱エネルギーの総量は、39カ国の7億5千万人以上の全電力需要をまかなえるという。
 
 地熱発電は通常、地熱によって暖められた高温水か水蒸気を使ってタービンを回すことで行われるが、最近は、水よりも沸点の低い液体を密閉した熱交換システムを使う技術が開発されているという。これを使えば、火山をもたないドイツなどの国でも比較的低い熱源によって発電が可能になるという。地熱発電のよい点は、低炭素の地元資源を利用できるだけでなく、それが安定しているため24時間とぎれなく利用できる。これは、風力や太陽光にない特長であり、エネルギーの貯蔵や予備設備の必要が少ないというメリットが挙げられる。

 この分野で世界をリードしているのはアメリカで、2008年8月の時点で、アラスカ、カリフォルニア、ハワイ、アイダホ、ネバダ、ニューメキシコ、ユタの7州の合計で2,960メガワットの発電容量があるという。特にカリフォルニア州の発電量は多く、この州だけで2,555メガワットの容量があり、同州の全電力需要の5%近くをまかなっているという。

 アメリカでは、2005年に施行されたエネルギー政策法(Energy Policy Act)で、地熱発電が連邦政府の援助の対象になったため、地熱エネルギーによる電力の値段が化石燃料によるものと同等程度まで引き下げられた。この経済的条件の向上により、同国での地熱産業はブームになっているという。2008年8月の時点では、アメリカの13州で、新しい地熱発電開発計画が97もあり、合計の発電容量は4千メガワットに達するという。

 しかし、現在の開発状況は、利用可能の地熱エネルギー全体から比べると、まだ表面を引っ掻いている程度のものという。アメリカのエネルギー省の推定では、新しい低熱発電の技術を使えば、少なくとも26万メガワットまでの発電が可能だという。マサチューセッツ工科大学(MIT)で行われたある研究では、地熱発電の研究開発に15年で約10億ドル(新型の石炭火力発電所1基分の値段)の投資を行えば、2050年までに10万メガワットの商用利用が可能になるらしい。

 このように、地熱発電の大きな特長は、開発コストが低い点にある。だから、地熱発電で世界のトップ15を占める国々の多くは、発展途上国である。世界一はアメリカだが、フィリピンは電力需要の23%をこれで賄っていて、世界第2位。この国はさらに、2013年までにこの比率を6割以上の3,130メガワットにまで拡大する計画をもつ。第3位のインドネシアには、これより野心的な計画があり、今後10年で地熱発電の容量を新たに6,870メガワット拡大する予定で、これが実現すれば、同国の現在の総電力需要の3割近くが地熱エネルギーでまなかえることになるという。日本は今、イタリアに次ぐ世界第6位だが、アメリカの約6分の1、フィリピンの約4分の1だ。

 アフリカでの地熱利用の可能性もきわめて大きい。ケニアがこの分野では先行していて、今年の6月、ムワイ・キバキ大統領は、今後10年で新たに1,700メガワット分の地熱発電施設を建設する計画を発表した。これは、現在の同国での地熱発電容量の13倍にあたり、他の発電方法のすべてを含めた現在の総発電容量の1.5倍に当たる。ジブチは、今後数年間で同国の全電力需要を地熱エネルギーでまかなうことを目指している。
 
 このような情報を知ってみると、“地震国・日本”という言葉の意味が大いに変わってくる。地震があることと地熱エネルギーが利用できることの間には、大いに関係がある。どこかの新聞では、いまだに“資源小国”という言葉で日本を呼んでいたが、旧時代の発想から脱皮できないのである。温泉を愛する日本の皆さん、地熱エネルギーを大いに利用しようではありませんか。平和は実に“足元”から来るのです。
 
 谷口 雅宣

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コメント

副総裁先生

ありがとうございます。
私の故郷は、北海道で唯一の地熱発電の町なのです。
http://www.nedo.go.jp/nedata/16fy/09/d/0009d002.html

50メガワットですから、国内でも大型の地熱発電所の部類に入ります。

この余熱を利用して雪深い北海道でも、一切の暖房費を使わない野菜が冬でも採れます。

ここのトマトは「濁(にごり)川トマト」というブランドものになっているのです。

私の故郷自慢でした。

投稿: 佐藤克男 | 2008年8月21日 06:12

佐藤さん、

 情報、ありがとうございます。
 北海道森町というところですね。道南ですか?

投稿: 谷口 | 2008年8月21日 13:00

副総裁先生

ありがとうございます。

《道南ですか?》
そうです。
森と湖と海に囲まれた美しい故郷です。

投稿: 佐藤克男 | 2008年8月21日 13:16

合掌 有難うございます。瀬戸内海に住む人ですが、前の相愛会長さんは、海流発電ができないかといっていました。できないことではないと思います。流れが速いところですから。再拝

投稿: すぎの | 2008年8月21日 19:22

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