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2008年8月16日

南オセチア紛争が拡大 (3)

 南オセチアへのグルジア軍の侵攻に対し、ロシアが大規模な軍事介入をした紛争は、ヨーロッパを巻き込んだ米ロ対立に発展しつつある。情勢の変化が急速なので、なかなか目が離せない。日本のメディアはオリンピックと終戦記念日に時間とエネルギーを費やしているが、メダルの数や靖国に参拝した政治家の数などとは比較にならないほど重大な変化が、世界で起こりつつあるのではないか。
 
 今日付の『日本経済新聞』によると、ブッシュ大統領は、15日に発表した声明の中で、「脅しは21世紀の外交を行う上で受け入れられる方法ではない」として、グルジアに進駐したロシアを非難し、ロシア軍の即時撤退を改めて求めた。この日、ライス国務長官はグルジアを訪問してサーカシビリ大統領と会談し、同大統領は、フランスの仲介によって生まれた停戦のための6項目の和平原則に関する文書に署名した。その際、ライス長官は「もはやソ連がチェコスロバキアを侵略した1968年ではない」と指摘し、ロシア軍のグルジアからの撤退を要求した。
 
 ところが今日の『日経』夕刊では、ロシア軍は15日夜、これらの警告を無視してグルジア国内にさらに進軍した。同軍はすでにグルジア中部の都市、ゴリに進駐していたが、そこから南東にある首都トビリシに向かって軍を進め、首都から約50kmの地点に接近したという。サーカシビリ大統領は15日の記者会見で、同国中部のハシュリとボルジョミにもロシア軍が展開したと発表したという。これに対してロシア軍高官は、グルジアへの進軍の目的は「グルジアとオセチア市民の戦いを止め、平和を実現するため」などとロイター通信に語ったという。同軍は、「武器の撤去・回収」を理由に黒海沿岸の都市、ポチや西部のセナキなどでも駐留を続けているらしい。

 このようなロシアの一方的軍事圧力に対して、近隣国の反応も出てきた。ロシア軍の侵攻を受けた当のグルジアでは14日、議会が親ロシア組織である独立国家共同体(CIS)からの脱退を全会一致で承認、親欧米色を一層明確にした。一方、アメリカのミサイル防衛構想(MD)の中で迎撃ミサイルを配備することに難色を示していたポーランドは、14日になってトゥスク首相がMD施設の受け入れを表明した。この施設は、ポーランド北部に10基の迎撃ミサイルを配備して、米兵が常駐する基地を建設するもの。同首相は、この合意文書調印に先立って「米国の同盟国としてポーランドは安全でなければならないという点で見解が一致した」と述べたという。これらのミサイルは、公式にはイランのミサイルを念頭に置いたものとされているが、ロシア側は自国を標的にしているとして反対を続けていた。アメリカは、すでにチェコとの合意が成立しているレーダー基地と一体化して、ポーランドのミサイルを運用する考えだ。
 
 今日の『日経』夕刊は、ブッシュ大統領がまもなく全米に向けてラジオ演説をすることを伝え、その中で、グルジアへのロシアの侵攻を非難するとともに、「世界の自由社会はこのような行為をまったく許容できない」と強調する予定だと伝えた。この演説の全文はすでにホワイトハウスから公表されていて、ブッシュ氏は「国民が民主的に選んだ政府を脅かし、侵攻したロシアを世界は警戒心をもって見つめている」と指摘するとともに、「グルジアでのロシアの行動は、21世紀の欧州におけるロシアの役割、意図に深刻な疑問を抱かせた」と述べるという。
 
 16~17日付の『ヘラルド・トリビューン』紙は、ロシアの近隣国の反応を伝えている。それによると、ベラルーシ、カザフスタンなどの独立国家共同体諸国は、ロシア軍の侵攻後何日も沈黙を守っていたという。ベラルーシは結局、紛争勃発後1週間たって犠牲者への哀悼の念を表明しただけだった。カザフスタンは、グルジアがCIS脱退を決めた後になって「共同体の統一が脅かされた」と強い調子で述べ、「複雑な民族間の問題は、平和的な交渉によって解決されるべきであり、軍事的解決はありえない」と言うにとどまった。トルクメニスタンも同様の見解を述べ、国内に民族問題を抱えているアゼルバイジャンは、「我々はグルジアの領土的統一を支持し、その地域の緊張が拡大しないための努力、平和への努力を支持する」との外務省声明を出した。どの国も、ロシアの軍事行動を明確に支持していない点は、注目に値するだろう。
 
 谷口 雅宣

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コメント

副総裁先生

ありがとうございます。
グルジアの紛争は長引くのでしょうか?
ロシアは完全にグルジアを乗っ取る方針ですね。
取った者勝ちという考え方は旧ロシア時代、ソビエトそして現ロシアと全く変わっていないですね。

南オセアチアの平和を守るためにが、錦の御旗ですが単なる大国のエネルギー政策の中で争っているだけのような気がします。

中国のチベット、新彊ウィグルの侵略も同じですね。
そして、尖閣諸島も自分の物だと中国は主張しておりますしその内、軍事行動に出るだろうという専門かもおるようです。

人間が存在する限り、このような痛ましい争いはなくならないのでしょうか?

だから、我々の世界平和の祈りと行動が必要だと再認識しました。

投稿: 佐藤克男 | 2008年8月17日 08:27

佐藤さん、

 プーチン首相は、現時点でのアメリカとの“決裂”を望んでいるとは思いません。「オレの言うことを真面目に聞け」という強力なメッセージを出すのが目的ではないでしょうか? 私は、ロシア軍がグルジアにそのまま居残るとは思いません。平和維持軍の一部としては残るでしょうが……。

投稿: 谷口 | 2008年8月17日 13:18

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