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2008年8月22日

生物多様性に注目 (2)

 宇治の大祭からもどってきたとたんに、東京地方は涼しくなった。昨日は休日だったおかげで1日ゆっくりできたが、夕方、食事をしに妻と渋谷へ出かけようとしていたら、雷が鳴りはじめ、稲妻がまぶしく閃いて、勢いよく雨が降り出した。夕方のスコールだからそのうち上がると思い、家の中で小一時間待ってみたが、なかなか上がらない。そこで2人は、傘をしっかり握りながら出発した。夕食が終わったら、幸い雨は上がっていた。が、その代わり寒いほどの涼しさだった。ポロシャツ1枚しか着ていなかった私は、体温を逃がさぬよう両腕を胸の前に組んで歩いた。その日の夜は、久し振りに布団を掛けて眠ることができた。
 
 17日の本欄で「生物多様性」について書いたら、ムカデやスズメバチがいる中で暮らしてKemumpus いる読者から、「人間の都合と生物の凌ぎ合いは、なかなか一筋縄ではいかない」とのコメントをいただいた。その通りだと思う。実は昨日、私もそれを実感する経験をした。毎朝の日課である生ゴミの処理のため、庭のコンポストへ行った私は、その近くに立っている若いクヌギの木を見て驚いた。若緑の葉が繁る枝の上を、体長20センチほどの濃紅色の体をくねらせた毛虫が、いっぱい這っているのである(=写真)。数を正確に数えなかったが、20匹以上はいた。体一面に生えたその灰色の毛の長さが、いかにも毒々しく見える。私は一瞬途方に暮れたのである。

 わが家の庭には、クヌギの木はこれ1本しかない。そう断言できるのは、この木は私が「実」の段階で植えたものだからだ。子供たちがまだ小さい頃、神奈川県か東京の三多摩地区の自然公園に行った際、そこに落ちていたクヌギの実を拾って植木鉢に植えた。それが成長して、今や2メートルを超える高さに育った。そんな思い出のある木を、醜い姿の毛虫が寄ってたかってイジメテいる--そう考えると、「生物多様性」を喜ぶ気持などどこかへ行ってしまうのである。それで結局、こう考えた。毛虫が死ぬことでその親であるガが死滅することはないだろう。しかし、ここに1本しかないクヌギの葉が全部食われてしまえば、クヌギはこの地から消滅する。したがって、毛虫を殺すことは生物多様性を傷めることではなく、守ることである。一応こう考えたが、この論理が本当に正しいかどうか、私は分からない。それよりも、毛虫に対する自分の嫌悪感が先に立ち、論理は後からついて来たのかもしれない。
 
 クヌギについた毛虫たちは、こうして殺虫剤の攻撃を受けることになる。1~2匹ぐらい残しておこうかとも思ったが、クヌギの葉はすでに大半が食べられてしまっていたから、毛虫を残しておくと食いつくされる可能性があると思った。その後、しばらくして現場を見に行った妻の報告によると、木から落ちた毛虫たちが固まっている場所に、1匹の大きなヒキガエルがいたそうだ。普通彼らは、人間の姿を見ると身を隠そうとするが、そのヒキガエルは彼女の姿など眼中になかったのだろう、という。ヒキガエルが毛虫を食べるかどうか、私は調べていない。が、食べるとしたら、そのヒキガエルの命がどうなるか、私は心配になった。殺虫剤の種類や毒性によっても影響は違うだろうが、カエルまで巻き添えにしたくなかった。
 
 殺虫剤は、一般には果物の栽培時にもよく使われている。そうしないと、見栄えや生産効率の面で商品価値が下がるからである。が、自家用のものは、一般の農家では農薬の使用を最小限にとどめるらしい。わが家でできる果物--ミカン、レモン、イチジク、ブルーベリー、キーウィー--は、もちろん無農薬だ。だから、虫や鳥が来て食べる、という話はすでに書いた。今年のブルーベリーの収穫は終った。でき栄えは昨年並みだった。これからはイチジクの収穫の時期だが、これはカラスとの知恵比べとなる。すでに1個を人間が食べ、1個をカラスに持って行かれた。

 果物のことでもう1つ言えば、今日、ジョギングの帰途に、狭い路地で青柿を拾った。涼しい日に青柿を拾うと、暑い夏もさすがに終りだとの気分になる。
 
 青柿の割れずに落つをみつけたり
 青柿の落ちる小路や力あり
 
 谷口 雅宣
 

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コメント

谷口 雅宣先生
合掌ありがとうございます。
毛虫は多分「マイマイガ」の幼虫だと思います。
私は、ここ1年くらい前から絵手紙をきっかけに、生き物を観察するようになり、そのすべてに名前があることにあらためて気づきました。そこで、このような機会があると図鑑を調べます。虫は嫌いでしたが、逆に好きになって来ました。(毛虫はまだですが。)でも名前がわかると可愛いものです。

投稿: 長部 彰弘 | 2008年8月23日 21:24

谷口雅宣先生

ありがとうございます。

それにしても・・大きな毛虫ですね。。(汗)

投稿: 長瀬 祐一郎 | 2008年8月25日 15:10

長部さん、

 情報、ありがとうございます。ウィキペディアにはこうありました--

幼虫は典型的なケムシで、背面には目立つ二列の点が並ぶ。この点の色は個体にもよるが頭寄りの5対のみ青、それ以降の6対は赤くなるものが多い。成長すると体長60mmほどになり、糸を吐いて木からぶら下がっている様子から、別名ブランコケムシと呼ばれている。

幼虫は春~初夏にかけて出現し、まず生みつけられた場所から個々に散らばる。本種は孵化直後から糸が吐け、生まれた場所からその糸でぶらさがって、風に乗って移動する。

幼虫は、およそ知られる限りほぼ全ての針葉樹、広葉樹、草本の葉を食い尽くす広食性で知られ、調査結果にもよるが本種の食害する植物種は100~300種余りに及ぶ。日本では果樹やカラマツの葉が被害にあった場合問題視されることが多いようである。基本的に孤独性であり、大発生などで必然的に密集せざるをえない場合を除き集団化しない。また夜行性であり、主に昼は葉の裏でじっとしている。体にはトゲがたくさんついていて、刺されると少し痛いが、毒はない。
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 これを読むと、「生まれた場所からその糸でぶらさがって、風に乗って移動する」とか「基本的に孤独性」という点が、今回のケムシとやや違うようにも思えます。しかし、そうかもしれませんね。

投稿: 谷口 | 2008年8月25日 17:20

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