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2008年7月27日

コンビニの深夜規制に賛成する

 コンビニエンスストアの深夜営業を規制するかしないかが論議されている。私は、端的に言って規制賛成である。が、他の深夜営業業種とともに段階的に行うのは、どうだろうか。CO2の排出量という点では、コンビニ店の排出量は全体の割合ではわずかだそうだ。だが、全国にある約4万2千店を24時間回転させるための工場や運輸部門のCO2排出まで含めると、結構な割合になるのではないか。本来は、CO2の排出自体にコストを生じさせるための炭素税や環境税が望ましい。そうすれば、ある特定の業種だけが規制によって不利益を被るという不平等は避けられる。しかし、それができないのであれば、次善の策としては、どこからか排出削減を始めなければならないのだ。恐らくそれが理由で、夜中に煌々と電気をつけ通しているコンビニ店が“目立つ対象”として槍玉に挙げられているのだろう。

 25日付の『朝日新聞』が、この問題について“規制賛成派”と“規制反対派”の言い分を比較している。賛成派の角川大作・京都市長は、この規制によって「ライフスタイルの変更」を目指していると述べる--「『禁欲的な生活をしろ』というつもりはない。訴えたいのは、今までの『利便性や利益を最大化しよう』という方向性が本当に幸せだったのかということ。昼よく働き、夜もよく遊ぶが、深夜には帰って寝るという暮らしが、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の観点からも望ましい。行政がコンビニを『規制』するという理解は違う。京都市では、市民参加の議論を経て、深夜営業の『自粛』を呼びかけていく」。

 これに対し、反対派の諸富徹・京大大学院准教授は、「温室効果ガスを抑える有効性で見ても、社会経済的コストがどの程度かかるかという費用対効率性で見ても、疑問が多い」という。諸富氏は、業務部門全体のCO2排出量を下げる必要性は認めるが、「なぜコンビニだけ対象にするのか、説明がつかない」と言う。上記したような“目立つ対象”だからだとの説明に対しては、それは“象徴的環境政策”であり、「人々の耳目を引く政治的アピールでもある。深夜営業規制が意味を持つとすれば、業務部門全体の排出量に対する論議を巻き起こし、政策に前進をもたらす場合のみだ」と言う。同氏は、ライフスタイルの変更が必要との見方には反対しないが、「市民の行動の自由や多様なライフスタイルと両立できる政策でないと、結局は社会に受け入れられず、効果を発揮しない」と述べる。
 
 これを読むと、“規制賛成派”は「便利さ優先からワーク・ライフ・バランスへ」との生活スタイルの変更を目指しているのに対し、“規制反対派”は「そういう規制は現代人の生き方の多様性と両立しない」と考えているようである。また、この記事には、コンビニチェーンの本部ではなく、末端の加盟店サイドの意見も載せている。それによると、午前1~5時の売り上げは1日の5%しかなく、深夜に店を開けている精神的負担が大きいから、「せめて数時間、安心して眠れる時間がほしい」との意見もあるらしい。さらに、約1千店の加盟店でつくる全国FC加盟店協会は、この6月に声明を出し、24時間営業を一律に強いる現在の契約方式を改めるよう求めたという。
 
 また同記事によると、2005年に内閣府が行った世論調査では、深夜営業の必要性を問う質問に対して、「必要」は57%で「不要」は35%だった。3年後の現在、この割合がどれほど変わっているかは分からない。また、「深夜営業」はコンビニだけではないから、この数字をそのままコンビニ規制の適否の議論には使えない。しかし、コンビニ支持者が多いことは事実で、『日経』の26日夕刊にも読者からの賛否両論が掲げられている。それによると、“規制反対論”にはコンビニの「防犯と利便性」を挙げるもの、「生活の一部である」ことや「雇用を創出」すること、また「行政は営業時間に口をはさむな」との意見もある。“規制賛成論”には、コンビニは「便利さ以上に従業員が大変」「用もないのに子供が群れる」「地方都市では過当競争」「規制は一律でなく、臨機応変に」との意見がある。

 私の“段階的規制論”を述べよう。私は東京都心のファッション街・原宿の真ん中にいる。が、これまでコンビニは何度も利用しているが「深夜利用」はしたことがない。深夜は寝ることにしているからだ。それでも、若者は深夜に利用するかもしれないが、その理由は「必要だから」ではなく「他に行くところがないから」だと思う。原宿の街は、昔から夜には店が閉まることになっているから、本当に行くところがないのだ。ところが、コンビニだけが開いていて電気を煌々とつけているので、そこへ渋谷や新宿から流れて来た若者が惹かれて行く面が多い。今年の正月には、妻の故郷である伊勢の田舎町へ行った。そこには片道2車線の通りに沿って、互いにさほど遠くない位置に、コンビニが2店建っていた。が、夜暗くなって近くを歩いたら、中にいるのは若者が1人か2人で、雑誌を立ち読みしているだけだ。これは午後8時前のことだから、深夜になれば利用者はもっと減るだろう。だいたい、この地方には若者の絶対数が少ないのである。それでも24時間電気をつけて営業をしなければならない、というのは不合理である。
 
 日本は今後、人口減少の中でますます都会と地方の人口差や経済格差が広がる。それを無視して、全国一律で24時間営業をしなければならないというのは、経営的に考えても合理的とは言えない。ましてや、CO2の排出削減が喫緊の課題である中で、「ごく例外的に利用される時間帯にも、昼間と同じ電力を使う」という経済不合理性が許されるのは不思議である。「炭素税」や「環境税」を導入しないのならば、全国FC加盟店協会の求めるように、都会と田舎の需要の違いに合わせてサービスを供給することから始め、しだいに「深夜は静かに眠る」領域を拡大していき、都会での規制も“盛り場周辺”を除いて、徐々に進めていくのがいいのではないだろうか。「便利であれば何でもいい」という考え方は地球温暖化時代には通用しない、と私は思う。

 谷口 雅宣

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コメント

副総裁先生

ありがとうございます。
コンビニの深夜規制に賛成です。
私の友人もコンビニを経営しておりますが、深夜は人件費や光熱費のことを考えれば大赤字だそうです。
その赤字の負担は全てフランチャイズが負って、
本部は知らない振りだそうです。

本部は防犯にも役立っていると言いますが、
深夜に営業しているから強盗に入られるのです。
防犯に役立つどころか、犯罪を増長させているようにさえ感じます。

どうしても必要なら、全体でオープンするのではなく交代制にするとかがいいのではないでしょうか。

しかし、いずれにしても夜は早く寝るのが一番です。

投稿: 佐藤克男 | 2008年7月28日 16:53

佐藤さん、

 素早い反応、ありがとうございます。

 私は“夜型”ではなく“朝型”の店を増やすことで、経済とCO2削減の双方を狙えないか、などと夢想します。最近、朝早くやっている店がメッキリ減ってしまいました。(コンビニを除いて)

投稿: 谷口 | 2008年7月28日 17:52

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