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2008年7月 1日

“郊外型”は廃れる?

 前回の本欄では、「原油の高騰」「高齢化」「人口減少」などが、地方都市の中心街に再び活気を呼びもどす契機になるなどと書いた。“予言”のつもりではなく、半ば期待を込めて地方の再起を促したかった。事情もよく知らないのに勝手なことを書くなと言われそうだが、私の期待には、まったく根拠がないわけではない。というのは、アメリカでは、郊外の住宅を売って都市にもどる傾向が生まれているらしいからだ。
 
 6月26日の『ヘラルド・トリビューン』紙によると、彼の国では、ガソリンを含む燃料代の高騰が都市郊外の生活をしだいに困難にしつつあるというのだ。コロラド州デンバーの郊外に家をもつある夫婦は、デンバー市南部の仕事場まで車で1時間の通勤をしていたが、ガソリンが1リットル当り1ドルを超えたころから、ディーゼル車の小型トラックに毎月121ドル(約1万3千円)の燃料代が必要になった。また、スペースの大きい郊外型住宅を暖めるにも燃料代がかかり、3月は566ドル(約6万円)を支払ったという。この暖房費は5年前の2倍だ。そして、今は市内に移住することを真面目に考えているそうだ。
 
 こうして、アメリカで半世紀前に始まった都市から郊外への移住の動きが、止まりつつあるという。アトランタ、フィラデルフィア、サンフランシスコ、ミネアポリスなどの大都市では、都市圏を超えた郊外の住宅の値段は、都市内のそれより値下がり幅が大きくなっている。ある経済学者の最近の調査では、シカゴ、ロサンゼルス、ピッツバーグ、ポートランド、タンパでも、同様の傾向が見られる。これには様々な理由があるだろうが、その中でも大きなものは、燃料費の高騰だと経済学者や不動産業者は考えているという。今年の3月、アメリカ人が自動車で走った距離は、1年前に比べて180万Km(4.3%)少なかったらしい。だから、多くの地方自治体は、大都市の中心街に焦点を合わせて再開発を進めつつあるという。
 
 日本とアメリカの事情は、もちろん同じではない。日本はアメリカよりも公共交通機関が発達しており、自動車の燃費は良好である。しかし、アメリカは人口増加が問題なく続いているのに対し、日本は人口減少の時代に入った。しかも高齢化が進んでいる。ということは、地方都市の郊外は、住環境としてアメリカより有利であるとは思えないのである。郊外型の立地を得意とする大手スーパーなどは、車を運転しない高齢者の客を誘致するために無料バスを運行しているところもあるが、燃料代の値上がりが続けば、それとていつまでもつか分からない。アメリカほど急激でないとしても、郊外型の大型店舗はいずれ日本の地方都市から撤退するのではないだろうか、と再び期待を込めて予測するのである。
 
 が、別の予測もしてみよう。それは、日本かアメリカが、あるいは双方の国で政権が交代し、化石燃料に頼らない自然エネルギーを主体とした低炭素社会へと急旋回した場合である。化石燃料の値段は下がるだろうが、それは需要が減るからだ。その時、郊外型の大規模小売店舗がどうなっているか、私には今、残念ながら想像できない。

 谷口 雅宣

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コメント

合掌ありがとうございます。
副総裁先生の予想は私もそんな気がします。
ガソリンがまた値上げされましたが、
将来的にはだぶつくような気がします。
実需のみならず、投機で高騰している側面もあるようです。
永久に上昇局面が続くわけではありませんし、
その間に化石燃料を使わない方向に向かっていくと思います。
値上がりで財布はイタイですが、
いい方向に考えたいと思いました。

わが家のことになりますが、
郊外からまちの中心街に引っ越しました。
地方では車は生活必需品です。
家族に一台づつ所有することも珍しくありません。
まちなかに引っ越したため2台もいらなくなり、
1台売りました。
徒歩や自転車で買い物、通勤、子供の送迎を
するようになりました。
高齢化が進むと、
歩いて用足しできるところに住む方が便利です。
ガソリン消費量が減っただけでなく、
夫はお腹まわりも減りました。
燃料高騰がメタボ対策にもなりそうです。

石光 淑恵

投稿: 石光 淑恵 | 2008年7月 2日 08:35

合掌、ありがとうございます。村瀬博嗣です。

突然、生意気な意見ではありますが、申し上げる必要があると感じましたのここに意見させてもらいます。《化石燃料の値段は下がるだろうが、それは需要がへるからだ》とおっしゃています。しかし、わたしはとてもそうは思えません。百年二百年先はともかく当面つまり約百年以内ではそれはないのででしょうか?というのも中国、インドはもちろん今後世界中で経済発展が見込まれているからです。

中印両国の人口を合わせれば20億人を軽く超えます。これら全ての人々に経済発展した生活が訪れるとは思えませんが、2008年現在日米欧などの先進国の人口を合わせてもせいぜい数億人と中国一国にも満たないのが現実です。つまり、どんなに譲っても20年、30年先には「贅沢」な生活をする人口は08年の倍を超えるのは必然であると思うのです。

先生は「VISTA」(ビスタ)と言う言葉をご存知でしょうか?ウインドウズのことではありません。「BRICs」に続いて経済を大きく発展させるであろうという国々のことです。具体的には「V」はベトナム、「I」はインドネシア、「S」は南アフリカ、「T」はトルコ、「A」はアルゼンチンのことです。わたしは環境問題、経済問題について話す時によくこの言葉を使うのでここにも述べさせてもらいました。

少し興奮気味になってしまいましたが、上記の様なことを考えるととても《需要がへる》とは思えないのです。わたしは素人で専門家ではありませんので確かなことは言えません。ただ、このまま人類全体が意識を変革しなければとても先生のおっしゃるとおりにはならい、としか思えないのです。

情けないことにわたし自身もまだまだ、お恥ずかしい次第で、光熱を無駄遣いしている状態です。自分の部屋の照明も半分に減らしてはみましたが、先生のおっしゃる様な夏でも「冷房に頼らず扇風機のみで過ごす」と言うのは、正直わたしに言わせればまさしく「神」の生活です。

聞けば先生は原宿で暮らしていらっしゃるそうですね。東京のことはよく知りませんが、あの高層ビル群でヒートアイランド現象の真っ只中ではありませんか。そこで扇風機だけというのはただ、一言尊敬とでもいいましょうか、ともかく真似出来るとは思えません。

ただ、こちらの今日の気温は30度ですが冷房もつけず(というより今年はまだ使っていません)、扇風機にもほとんど頼らずでしたが、比較的過ごしやすかったです。というのも湿度が70%もなかったからです。冬はまずいかもしれませんが、夏はこのくらいの湿度なら冷房にもそれほど頼らずに、先生の様な「神」(冗談で言っているのではありません。本当にそうと言おうか、凄いとしか言いようがないのです)の生活に近づけるかもしれまん。(個人的に感じたのですがもしかしたら重要なのは「室温」ではなく「湿度」なのかもしれません)

またまた長文駄文に「意見」と失礼な文章が続いてしまいました。先生のご意志に水を差すようなことをして申し訳ありませんでした。今度は先生を応援させてもらう様なコメントを寄せたいとおもいます。どうかまた、これからもよろしくお願いします。

それでは合掌、ありがとうございます。

投稿: 村瀬博嗣 | 2008年7月 2日 21:02

石光さん、

 お久し振りです。あなたの情報は、いつも参考になります。

>>高齢化が進むと、
歩いて用足しできるところに住む方が便利です。
ガソリン消費量が減っただけでなく、
夫はお腹まわりも減りました。<<

 これはガソリン高騰の“光明面”ですね。

村瀬さん、

>>ただ、このまま人類全体が意識を変革しなければとても先生のおっしゃるとおりにはならい、としか思えないのです。<<

 私の文章をよく読んでください。私は文の初めの方で「予言のつもりではない」とハッキリ書いています。それから貴方が問題視している箇所は、「別の予測をしてみよう」という言葉をつけた上、条件文の後に続いている文章です。その条件文をよく読んで、私の意図を知ってください。


投稿: 谷口 | 2008年7月 3日 15:14

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