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2008年7月 4日

バイオエタノールの本格輸入?

 1日の本欄で、原油高騰の影響を受けて、郊外型の大型小売店舗はいずれ地方都市から撤退するかもしれない、と書いた。そんな傾向がこれから生じるだろうと思ったからだが、現在すでにそうなっているらしい。2日付の『日本経済新聞』は、「クルマ離れ加速」という記事を掲載し、消費者のガソリン買い控えや、旅行手段の変更、カーシェアリングの増加などが顕著になってきたことを伝えている。その記事の中に、郊外型小売店の“苦戦”の様子も書かれていた。
 
 それによると、長崎ちゃんぽんの店「リンガーハット」は、郊外の既存店の売り上げが落ちているので、出店戦略を変更して、「都市部や郊外の商業施設内の出店に軸足を移す」そうだ。また、イオンの岡田元也社長の言葉として、「特に郊外の大型ショッピングセンターが厳しい」という評価を引用しているのが注目される。それが厳しい理由は、「少しでもガソリンの消費を減らそうと週末にまとめ買いをする顧客が増え平日の来店が大幅に減少」したからだそうだ。これが事実だとすれば、私の“希望的観測”である地方都市の中心街の再活性化は、夢ではないかもしれない。
 
 その反面、私の心配する傾向も出ている。それは、日本が第一世代のバイオエタノールの開発に本格的に乗り出したことである。「第一世代」の意味は、トウモロコシやサトウキビなどを原料としているため、「食糧と競合する」燃料ということだ。2日付の『日経』によると、日本の石油元売り各社は、ブラジルからサトウキビを原料とするバイオエタノールの長期調達を始めるという。2010年をめどに、その量は年間20万キロリットルを目指すらしい。

 3日付の『朝日新聞』の記事はもっと詳しい。それによると、この話は、三井物産とブラジル国営石油会社「ペトロブラス」がサトウキビからエタノールまでの一貫生産をする新会社を設立することで実現する。新会社はゴイアス州のイタルマ市に置き、総事業費は約300億円。物産とペトロブラスが2割ずつの株をもち、その他は現地の土地保有者や農家らでつくる特定目的会社が出資するという。『日経』の記事はサンパウロ発で、日本の石油元売り各社がこの事業の主体のような表現になっているが、『朝日』の記事はトーンが違う。「三井物産は供給体制を先に確立することで(バイオエタノールの)使用拡大に結びつけるねらいがあり、今後、石油会社や電力会社への売り込みを急ぐ」のだそうだ。
 
 で、問題は、現在起こっている食糧と燃料の競合の問題をこの事業が深刻化させるかどうか、である。『朝日』によると、これを避けるために、「灌木地帯で新規のサトウキビ畑を開墾し、合計で3万ヘクタールまで広げる」のだそうだ。また、「ペトロブラスは国内のエタノール生産に影響を与えないようにするため、輸出向けのバイオエタノール工場を増やす方針」なのだそうだ。つまり、日本向けに新たに3万ヘクタール(香川県の6分の1)のセラードを開墾し、サトウキビ畑に変えるというのだ。ブラジル政府は恐らく、日本以外にもエタノールの輸出先を探しているだろうから、今後、ブラジルのセラードはどんどんサトウキビ畑に変わっていくことになる。
 
 ブラジルの「セラード」と呼ばれる灌木地帯は、アマゾンなどの熱帯雨林に比べるとCO2の吸収量は少ないが、豊かな生物多様性を特徴としている。これが今後、サトウキビという単一種の植物に変わることは決して好ましいとは言えない。日本がその“片棒を担ぐ”のは残念なことである。
 
 谷口 雅宣

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