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2008年6月25日

映画『西の魔女が死んだ』(The Witch of The West Is Dead)

 今日は水曜日の“週末”ということで、妻と一緒に恵比寿の映画館で『西の魔女が死んだ』(長崎俊一監督)という作品を観た。梨木香歩原作(新潮文庫)のこの映画は、100万部のロングセラーを達成した原作を読んだ妻が、かねてから公開を待ち望んでいたものだ。だから私は、彼女の“おとも”として行った、という感じだった。ストーリーは事前に妻から聞いていたから、それほど起伏のある展開ではないことは知っていた。が、この作品はストーリーで見せるものではないことが、すぐ分かった。八ヶ岳山麓で独りで暮らす老女(サチ・パーカー)のもとに、孫である女子中学生(高橋真悠)が不登校の心を癒すために世話になる--筋はそれだけだ。が、この祖母と孫との田舎生活の中から、人生の意義と「人間は死なない」というメッセージが紡ぎ出されるのである。会話と演技とメッセージ性を重視した、静かな感動を与える作品である。

 妻によると、この映画は原作にとても忠実に作ってあるという。そのことから考えると、私はこのような内容の小説が100万人にも読まれるということに、少なからず驚いた。単行本の『西の魔女が死んだ』(楡出版)は平成6年刊で、小学館の新装版は同8年、新潮文庫版は同13年刊である。この文庫版が今年2月刊の「51刷」の帯に「映画化」決定を謳っている。14年間で100万部を売ったとすると、単純に計算して1年間に7万部強という人気である。

 その中で、老女は孫にこんな言葉を語る--

「人の注目を集めることは、その人を幸福にするでしょうか」
「精神力っていうのは、正しい方向をきちんとキャッチするアンテナをしっかりと立てて、身体(からだ)と心がそれをしっかり受け止めるていう感じですね」
「死ぬ、ということはずっと身体に縛られていた魂が、身体から離れて自由になることだと、おばあちゃんは思っています。きっとどんなにか楽になれてうれしいんじゃないかしら」
「魂は身体をもつことによってしか物事を体験できないし、体験によってしか、魂は成長できないんですよ。ですから、この世に生を受けるっていうのは魂にとっては願ってもないビッグチャンスというわけです」

 これだけ取り出して並べると、何となく宗教臭く聞こえるかもしれない。が、これらが語られる合間には、祖母と孫はニワトリの世話をしたり、野イチゴのジャムを作ったり、シーツの洗濯をしたり、作物を収穫したりして、中学生の孫は実生活の大変さと面白さを学んでいく。だから、そんな“臭み”は感じられない。これはもちろん、著者、梨木香歩氏の文章の構成力と表現の自然さにある。また、物語が、八ヶ岳山麓の森の中という“非日常”の中で展開されることにもよるのだろう。生長の家では今、「技能と芸術的感覚を生かす」ことが勧められているが、同じメッセージでも、それをどう表現するかで大いに違いが出てくるものだと感心させられた。

 ところで、この作品では“西の魔女”役のサチ・パーカー氏(Sachi Parker)が、折り目正しい日本語を明瞭に話しているのが印象的だった。彼女は個性派女優、シャーリー・マクレーンの娘で、父親はスティーブ・パーカーという映画製作者。日本好きの両親のおかげで2~12歳まで日本で暮らしていたそうだ。が、今回のセリフは難しかった、とこの映画のプログラムの中で言っている。同じプログラムのインタビューでは、彼女は次のように言っている--「私は、人生のネガティブなところに、重点を置きません。その時間があっても長く続かないように心がけています。愛するものたちに、感じたものをそのままコミュニケートするのです」。何となく日時計主義のように聞こえる。また、原作の小説にもそんな記述がいくつか見られるから、興味をもった読者には一読をお勧めする。
 
 谷口 雅宣

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コメント

遅ればせながら文庫本を買って読みました。「小閑雑感」に引用されている部分は本の中でも特に印象深い部分で共感を覚えました。死んだらどうなるのだろうという疑問にも的確に答えていると思いました。
また、ロングセラーの一因は孫娘と祖母の心の交流にあると私は思いました。母と娘では葛藤になりやすいことも、孫娘と祖母では素直な感情表現が出来て、とてもいい関係が築けます。私の場合、祖母が信仰していた生長の家は母を飛び越えて私に伝わりました。私が小学生の時に祖母の家に一人で泊まりに行って祖母に神想観を教えてもらったのが始まりかなと思います。
また、娘と母方の祖母、娘と父方の祖母との過ごし方を見ると、その温かさ、楽しさ、さわやかさは「西の魔女が死んだ」の二人の関係と共通するところが大いにあります。母親に言われると反発することでも祖母から言われると素直に受け入れて努力しています。
今、我が家で梅を収穫して梅ジュースを作ったり、梅漬けを作ったりするのは、二人の祖母のすることを見ていた娘です。祖母達は教えるつもりはなかったと思いますが自然に娘に受け継がれて、あらためて祖母達の教育力に感心しています。

投稿: 前谷雅子 | 2008年6月27日 21:34

先日、銀座で主人と観てきました。まだ、余韻が残っています。
純子先生はご存じでいらしたとはさすがと拝察申し上げます。
先生の深いご洞察に僭越ながら投稿させていただきました。
81歳のの主人も最近にないいい映画だと申しました。

投稿: 小野公柄 | 2008年6月29日 19:00

前谷さん、

 梅ジュースや梅漬け、暑い夏にはいいですね。“高級な魔女”への道をしっかりと歩んでください。(笑)

小野さん、

 コメント、ありがとうございます。妻に伝えておきます。

投稿: 谷口 | 2008年6月30日 12:31

先生オススメのこの映画、早く観にいきたいと思います。

先日ラジオを聞いていると、この映画の美術監修をされた種田陽平さんがゲストで話されていました。

今回のこの映画で一番力を入れたところは、野いちご畑とハーブ園だそうですw
日本なのに日本じゃないような、癒しの空間ができたと話されていて、
とても、見に行きたくなりました。


http://www.yohta-design.com/new-japanese.html

投稿: はぴまり☆ | 2008年7月 9日 15:04

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