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2008年6月12日

CO2を作らない技術を

 6月10日の本欄では、G8を含む11カ国のエネルギー相の会合で、CO2の地下貯留について、「G8が2010年までに20件の大規模案件に着手することで合意した」ことを伝えた。この際、私はこの技術への疑念を表明した。私はすでに、2005年12月14日2007年2月4日の本欄でも、この技術への不安を吐露していたが、最近、天然ガス田の試掘によって実際に火山が爆発したとする研究が発表されたことを知り、私の不安が杞憂でないことを確認した。6月11日付の『ヘラルド・トリビューン』紙が、それを伝えている。

 それによると最近、『Earth and Planetary Science Letters』(地球と惑星科学通信)という科学誌に載った英・米・豪とインドネシアの研究チームの論文では、2006年5月、インドネシアのジャワ島で噴火し、現在も熱い泥を流し続けている火山「ルーシー」は、ラピンド・ブランタス社によるガス田試掘によって噴火した可能性が高いと結論している。この噴火によって、付近に住んでいた5万人を超える住民は避難生活を送っているという。論文執筆者の1人であるイギリスのダーハム大学(Durham University)のリチャード・ダヴィース教授(Richard Davies)は、「ルーシー山の噴火は自然災害ではなく、バンジャー・パンジー1号ガス田を掘ることによって生じた人災であると、これまでになく確実に言うことができる」としている。
 
 同教授はまた、噴火の前日、ガス田の井戸の中に大量の液体とガスが流入し、それによって井戸内の圧力が危険値を超えて上昇したことにより、井戸と岩盤から漏れた液体が地上に噴出し、それが地上の泥を巻き上げて火山が生まれた、としている。高圧の液体は周囲の岩盤にヒビを入れ、熱い泥が井戸の口からではなく、岩盤のヒビを伝わって地上へほとばしり出たのだという。
 
 試掘会社と一部の科学者はこれまで、ルーシー山の噴火の原因はその2日前、試掘場所から250キロ離れたところで起こったマグニチュード6.3のヨギャカルタ地震とその余震だとしていた。この地震では6千人が死に、150万人が家を失った。研究チームの一員であるカリフォルニア大学バークレー校のマイケル・マンガ氏(Michael Manga)と同校の大学院生、マリア・ブラム氏(Maria Brumm)はこの説を検証した結果、その規模の地震で250キロ先に泥火山を生み出すことはできないと結論したという。
 
 現在、一部で実行され、また考えられているCO2の地下貯留については、2005年5月15日の本欄に少し書いた。それをごく簡単に言うと、「石炭などを燃やして電気と水素、CO2を取り出し、そのうちCO2だけを地中深く埋める」という方法だ。その埋める場所は、「使われていない石炭層や古い油田、ガス田、あるいは塩水で満たされた多孔質の岩」などだ。この作業中に、今回のような事故が起こる可能性は否定できないし、それによって火山の噴火が誘発されなかったとしても、岩盤や井戸に亀裂が入り、CO2が漏れ出してしまえば元も子もなくなってしまう。次世代やその次の世代の人類のことを考えれば、「CO2を作って埋める」のではなく、「CO2を作らない」技術を開発すべきと思うのである。
 
 谷口 雅宣

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コメント

副総裁先生、いつも最新の情報を踏まえてご指導下さり、ありがとうございます。

ルーシー火山の噴火(前例の無い?大量の熱泥噴出継続)のことは知っていましたが、その原因がガス井戸採掘によるものという論文が出たことを初めて知りました。
CO2の地下貯留も深海への投棄も、長期的に見て地殻は常にダイナミックに変動してきたことを考えれば、信頼できるものでは無く、ご指摘の通りだと思います。
これからも、ご指導よろしくお願いします。

合掌、再拝。

投稿: 田上 修 | 2008年6月13日 19:46

谷口雅宣先生
ありがとうございます。
日時計主義が、単なるプラス思考ではなく本質だと気づかせていただきました。

参議院決算委員会において新潟選出の民主党・風間直樹議員がCO2の地下注入と新潟地震の関連について質問をしています。

質問の中で、液体の地下圧入と地震との間には関連があるという調査報告が日本や海外の研究所などでなされていると指摘しています。

また経済産業省は、今年度、これまでの10倍に相当する10万トンものCO2を注入する計画で、注入適地は運搬コストの安い東京湾、伊勢湾、大阪湾、九州北部ということです。
これらの海域部で注入実験が行われ、誘発地震が起きれば津波災害も含め大災害が懸念されます。

現在の地震学の定説はプレートテクニクスと呼ばれる理論で、陸地の地殻(プレート)の下に、海洋プレートがもぐり込む際に、陸地プレートに歪がたまり、その歪が戻る現象が地震だと説明しています。
この理論では、CO2地中貯留で地震が誘発される余地はないということです。
現在の大勢となっている地震学理論に根本的問題があるようにも思えます。

この質疑内容は新・地震学セミナー というサイトに詳しく載っております。http://www.ailab7.com/Cgi-bin/sunbbs2/index.html

合掌、再拝。


投稿: 臼井 宏文 | 2008年6月14日 09:57

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