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2008年5月21日

“福田ビジョン”は遅れている

 5月14日の本欄で、“放置国家”日本の環境対策の不思議さに触れた。自然エネルギーを事業化している日本の大手企業が、事業の主軸を国内から海外へ移しているという話である。その時は、太陽光電池のメーカーの昨年の輸出量が、国内出荷の3倍に達したことをお伝えした。が、今日の『日本経済新聞』には、太陽光発電協会の統計として、昨年度の国内出荷量が前年度比で22%減ったことが報じられている。国外へ出るのが増えただけでなく、国内の分が減ったというのだから、寂しいかぎりである。しかも、国内市場の縮小は2年連続という。“福田ビジョン”と称するものが、いかに遅れているかがよく分かる。
 
 その記事によると、国内出荷減少の原因は、8割を占める住宅向けが前年度比で25%も減ったからという。太陽光電池の昨年度の輸出量は、発電能力に換算して70万1700kWで、国内出荷は20万9900kW。輸出は国内分の3.3倍になる。地域別に見ると、欧州向けは24%増、アメリカ向けは15%増だ。これは、欧米の政府が補助金などの優遇策を拡充しているためで、ドイツやスペインでは現在、太陽光発電への初期投資は10年程度で回収できるのに対し、日本では20~25年かかる。これは明らかに、技術の違いではなく政策の違いである。
 
 日本の太陽光発電量は2004年まで“世界一”を誇ってきたが、2005年にドイツに抜かれた。主な原因は、この年に政府が補助金を打ち切ったためだ。私が自宅に太陽光発電を導入した当初は、投資額の半分近くの補助が出た。しかし、2005年は1kW当たり「2万円」までに減額されている。国全体の予算も、この年は26億円にすぎなかった。現在生長の家では、会員が太陽光発電を導入する場合、2005年の政府補助金と同レベルの助成をすることで、自然エネルギーの利用促進を図っているが、国全体の動向にはまったく力が及ばない。ちなみに、昨年度の生長の家関連の太陽光発電の導入は、発電容量にしてわずか「371kW」である。
 
 日本政府は5月13日に、電力卸で最大手のJパワーの株式をイギリス系投資ファンドである「ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド(TCI)」が20%まで買い増す計画に、中止命令を出した。私はこの決定が、日本の環境政策への消極姿勢と大いに関係があることを知らなかった。しかし、21日付の『朝日新聞』に竹内敬二・編集委員が書いている記事を読んで、なるほどと思った。政府の正式な決定理由は「電力会社は原発や送電線などをもち、電力の安定供給、我が国の秩序維持に欠かせない」というものだが、その背後には、電力会社の独占的体制を外国資本の影響力から護るという目的もあるようだ。
 
 日本は欧米と違い、発電と送電を同じ電力会社が行ってきた。地域的には独占体制が敷かれてきたわけだ。これは、メーカーと販売会社が同一の会社で、しかも1社しかないのと同じだ。最近になって、ようやく発電部門を複数の会社が担当できることになったが、販売が1社だけであれば当然、公平さが欠ける。自社のつくった電気を優先的、あるいは有利に売ることになる。また、自然エネルギーによる発電をどれだけ送電するかも、地域独占会社が決めることになり、消費者には選択権がない。それでも、政策によって全供給電力の一定割合を自然エネルギーにするように義務づけることはできる。それを定めているのが、新エネルギー利用特別措置法(RPS法)だが、現在の規定では、その割合は全電力のわずか1%にすぎない。この割合は漸増することになっているが、それでも2010年の時点で1.35%なのだ。
 
 これが現在の政府の政策であり、その内容は電力会社の利益に忠実に従っているのである。これを別の言葉で表すと「電力の安定供給」となり、「我が国の秩序維持」となるる。独占だから「安定」しているのであり、「秩序」とは「現状」のことなのである。

 2月22日の本欄で、私は福田首相直轄のアドバイザー組織「地球温暖化問題に関する懇談会」のメンバーに、勝俣恒久・東京電力社長が入ったことについて触れ、温暖化対策に関しては「最大の反対勢力を内部に取り込むことで何かを達成しよう」という政治手法によって、「本当に意味のある政策が実現可能かどうかよく分からない」と書いた。が、「とりあえず、洞爺湖サミットまで、お手並み拝見ということにする」とも書いた。この「お手並み」の1つが、今回のJパワー株の買い増し拒否であったわけだ。私の心配が的中したようで、残念である。
 
 谷口 雅宣

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コメント

> 現在生長の家では、会員が太陽光発電を導入する場合、2005年の政府補助金と同レベルの助成をすることで、自然エネルギーの利用促進を図っているが、国全体の動向にはまったく力が及ばない。

国全体の動向に力が及ぶには、どれくらいの数値が必要なのですか?また、それは会員の努力で達成可能なのでしょうか?

投稿: 早勢正嗣 | 2008年5月22日 00:22

うーん、、、そうですか、、、
私はどうもファンドに対して良いイメージを持っていなくて今回のJパワーの株買い増し拒否を歓迎していたのです(全く背後が見えませんでした)がもっと深く観察しなくてはなりませんねえ、口では何とでも言えますが本当の改革と言うものの難しさがよく分る様な気が致します、
同時に各ファンドの行動の背後もしっかり見て行かなくてはならない!とも感じました。

投稿: 尾窪勝磨 | 2008年5月22日 12:39

副総裁先生

ありがとうございます。
新聞の広告に「政策後進国」と書いてありましたが、その通りですね。「技術先進国」でも国の政策が遅れていると、技術までも遅れるという悪い例です。

一昨日まで韓国でしたが、韓国の太陽電池モジュールの需要は日本では考えられないほどの熱気です。

日本では太陽電池モジュールが技術が向上して安価になるのを待とうと言うのがお役人さんの考えた政策です。
西欧や韓国では安くなるまで待てないから、今の価格でも導入したくなるにはどうしたら良いかと「フィードインタリフ」という政策が導入されているのです。

昨日、「地球を考える会」というそうそうたるメンバー(学者や経済界の重鎮)の団体が福田総理に提言をしたと産経新聞に載っておりましたが、もっと原子力発電を増やせとの提言です。経済産業省の役人が書いたものを有馬朗人元東京大学総長が提出しただけだと思います。
日経にはこの記事は欠片も載っておりませんでした。
「地球を考える会」のメンバーが議論百出して結論したとは思えません。

《私の心配が的中したようで、残念である》
本当にその通りになってしまいましたね。
我々はどうしたらよいのでしょうか?

投稿: 佐藤克男 | 2008年5月22日 15:18

早勢さん、

>国全体の動向に力が及ぶには、どれくらいの数値が必要なのですか?また、それは会員の努力で達成可能なのでしょうか?<

 私の文章は、「国全体の太陽光発電導入実績が前年より減少した」という内容の報道記事を受けて書いたものです。生長の家の助成金程度では、この減少傾向に影響を与えることができなかった、という意味です。21万kWの4分の1ぐらい導入できれば、減少傾向にはハトメがかかったのかもしれません。会員の努力だけでは達成不可能の数字だと思います。

佐藤さん、

>昨日、「地球を考える会」というそうそうたるメンバー(学者や経済界の重鎮)の団体が福田総理に提言をしたと産経新聞に載っておりました。<

 私もその記事を読みました。産経はもともと原子力推進の考えだと理解しています。


投稿: 谷口 | 2008年5月22日 16:06

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