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2008年4月 9日

太陽と地球温暖化

 地球温暖化の主な原因は「人間の活動である」というのが、現在の世界の大多数の気象学者らの一致した見解である。このことは、昨年度のノーベル平和賞を元アメリカ副大統領のアル・ゴア氏と、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)--両者ともこの“人間原因説”を主唱している--が受賞したことが有力に示している。が、少数の科学者の間では“太陽原因説”が唱えられていることも事実だ。この少数派科学者が自説の有力な証拠として指摘するのは、「実際に観測されている地球表面の温度の上昇は、大気中のCO2濃度の上昇に先立っている」ということである。もし、人間の活動が主因で地球温暖化が起こるとしたら、CO2の濃度上昇の“後に”地球表面の温度上昇が起こらなくてはならない。観測データがその逆を示しているならば、地球温暖化は人間の活動以外のもの(例えば、太陽の黒点の変化に表される自然的な変化)が主因である--そういう論法である。
 
 私は本欄で一貫して“人間原因説”を紹介し、またそれを信じてきたが、どこかで“太陽原因説”を読んで疑念を抱いた読者から、たまに感想を求められることがあった。しかし、私は気象学者ではないから、科学的なデータや理論にもとづいた見解は出せないし、だからといって、数千人におよぶ世界の科学者たちの一致した見解が間違っているとも言えない。だから、これまで本欄では“太陽原因説”には触れなかった。そう判断した理由は、私が定期的に読んでいる科学誌やジャーナリズムのほとんどすべてが“太陽原因説”を事実上無視してきたからでもある。科学上の真理は多数決で決まるわけではないが、科学者の大多数が誤った判断を下すほど、この問題が真剣に検討されて来なかったとは思えないからである。ところが、最近送られてきたイギリスの科学誌『New Scientist』(3月22日号)がこの“少数意見”を論評していた。内容を紹介しよう。
 
 同誌によると、「実際に観測されている地球表面の温度の上昇は、大気中のCO2濃度の上昇に先立っている」という事実は正しい。しかし、それは人間の活動が気温上昇を引き起こさないということではない。イギリスのエクスター大学の気象学者、ピーター・コックス博士(Peter Cox)によると、気温の上昇/下降とCO2濃度の上昇/下降は“相乗的”に起こるという。
 
 何万年もに及ぶ実際の観測データは、気温の上昇と大気中のCO2濃度が併行して上下していることを示している。“人間原因説”に懐疑的な学者は、このデータを調べて、気温の上昇がCO2上昇よりも先に来ることを指摘している。しかし、コックス博士によると、「気温の上昇によってCO2濃度が上昇する」という因果関係は、「CO2濃度の上昇が気温上昇を引き起こす」という因果関係を否定しないという。むしろこの2つは相乗的に作用するのだから、現在、多くの気象学者が採用しているコンピュータ・モデルではその一方しか考慮されていないことを考えると、今後、地球温暖化が進行する速度は、大方の予想よりも「50%」ほど速い可能性があるのだという。

「気温の上昇によってCO2濃度が上昇する」というメカニズムは、次の通りである。①太陽の黒点の変化によって寒冷期が始まる、②これが50年ほど続くと大気中のCO2濃度が減少する、③それによって更に寒冷化が進む。③の理由は、冷えた水はCO2をより多く吸収し、冷えた大気は陸上の炭素の循環を遅らせ、したがって陸上の炭素吸収量を増加させるからという。温暖化は、この逆のサイクルである。つまり、温かい水はCO2をより少なく吸収し、暖かい大気は陸上の炭素の循環を速め、したがって陸上の炭素吸収量を減少させ、大気中のCO2の濃度を上昇させる。これの詳しい説明は記事中にない。そこで、私の解釈(あくまでも素人の)を掲げよう--

 現在、温暖化によって極地や高地の氷が大量に融けているが、これらの水は最終的には海へ入る。ということは、すでに一部で始まっているように、海面上昇が起こって地球上の陸地面積が減少する。一方、氷の融解は海上では太陽エネルギーをより多く海中に取り入れて植物性プランクトンを殖やし、陸上では高地の新たな領域で植物を育てる。これらは新たな食物連鎖を引き起こすから、地球全体で炭素の循環量が増える。そして、陸上での生物の死骸(炭素)の一部は河川を通って海へ流されるから、海への炭素の移動量が増加する。ところが、暖かい水にはCO2は溶けにくい。ということは、海中での炭素の循環が増大し、さらに陸上から流れ込む炭素量も増大した海は、吸収し切れない炭素量がふえるから、大気中にCO2をより多く排出することになる。これで、「気温の上昇によってCO2濃度が上昇する」というもう一方の環が完成する。

 繰り返しになるが、上の筋書きは私の個人的推測であり、どんな科学者の意見を聞いたものでもない。“頭の体操”のつもりで読んでほしい。しかし、専門家のコックス博士が言うように、“人間原因説”と“太陽原因説”が相乗的に地球温暖化を進行させるのであれば、後者の信奉者が地球温暖化を楽観的に考える理由はなくなってしまう。その点だけは、抑えておいていいだろう。
 
 谷口 雅宣

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コメント

アル・ゴア氏の『不都合な真実』がテレビ放送されます。4月20日(日)23:00~0:40、BS放送のWOWOWで。また、CS放送のスターチャンネルでも4月19日21:00~23:00に放送されます。スターチャンネルは、ケーブルテレビに組み込まれているケースが多いので、多くの方が、見ることが出来ると思います。
<環境を破壊し、大きな自然災害をもたらす地球温暖化の危険性を、米国や欧州、アジアなどにおける1000回以上の講演を通して訴えてきた前米副大統領ゴアの活動を紹介するドキュメンタリー。経済効率を優先する政治家たちが見て見ぬふりを決め込んできた恐るべき「不都合の真実」の数々を分かりやすく説明したうえで、個人が実践し得る具体的な打開策を提示する。アカデミー長編ドキュメンタリー賞など多くの映画賞に輝いたほか、07年のゴアのノーベル平和賞受賞にもつながった。>(「TVstation」誌の紹介文より。)

投稿: 久保田裕己 | 2008年4月10日 01:08

頭の体操です(笑)
確かに太陽に依ってこの世界があり、燃え尽きる事に依ってこの世界は暗黒となり、地球は小さなブラックホールになるのでしょう、、、つまり全ての生きとし生けるものは運命を共有している訳です、しかし、現在の地球温暖化の原因について太陽原因説の科学者及び信奉者達は人間原因説について各界で論議実践する事はナンセンスであり無意味であり、このままで良く、手を加える必要は無い!と考えているのでしょうか?それはそれといたしまして全くの門外漢である私は複合的ではあるけれども遥かな将来は兎も角、現在の状況は人間原因説の比重が殆どで100%に近いのではないか?と考えます、いずれにいたしましてもこの地球から戴く様々な恩恵を考えますと、地球に優しく、地球を汚さない様にして行くと言う姿勢は人間の最低の義務の様な気が致します。

投稿: 尾窪勝磨 | 2008年4月10日 11:49

谷口先生

 私も最近地球温暖化の賛成意見から反対意見へも目を向ける様になりました。
 私が反対切に興味を持つ最大の原因は、“科学は原因があり、結果が立証されて始めて論説と認められ発表される。”と考えるからです。
CO2の削減で温暖化が防げることはまだ立証されていないと先日、ある大学の教授の方から伺いました。ただ、その教授は『人間の心が解決する』とおっしゃっていました。

 科学や物理はまだ研究段階で永続的だと思います。アインシュタインの相対性性理論には特殊相対性理論もある。それらをまだ詳しくは学んでいませんが、確実に終わりを迎えた学説は無いと考えています。いまだに相対性理論は発展し続けています。

 物理の話しに飛んでしまいましたが、宗教から見た場合を考えました。私は、今、この現実で起きている現象を無視して、“3年後には地震が起きるかも知れない”という事をを論議することに意味があるとは思えません。たとえそれが当たろうと、当たらないとしてもそんなことはどうでも良い気がします。(でも、もし当たるなら建物の強度を上げればよいと思います。)

 ただ、今起きている現実、大半の人々が興味を持っていることを議題に上げ、それに対して宗教から見た見解を話すことは、たとえば仏教の考案のようなものと私は考えます。

 ながくなりましてすみません。

追伸:全然関係ないのですが物理で“MT”を検索したら、特殊相対性理論が出て来ました。私もMTなので何となく。(本当に全然関係ないけどただ言いたかっただけです。

投稿: 多久 真里子 | 2008年4月10日 14:06

多久さんの「科学、物理は永続的だと思います」について、、
ミクロ(素粒子)とマクロ(宇宙の果て)の真理は定まっていると思いますが人間に分からないだけです、人類最先端の科学者、物理学者が各世紀を通じて研究、発見し続けたとしても銀河の中心まで3万光年(光速1秒に30万Kmで飛んで行っても3万年)宇宙の果てまでには100億光年(光速で行っても100億年)かかると言う想像を絶する広さ、ひょっとすると相対性理論も幼稚なものかもしれません(私にはとても難解です)、真理の究極を究める迄、人類は生きながらえているかどうかも疑問です、従いまして終わりの無い永続的なものになるのでしょう(泣),例え究めたとしても非物質世界、精神界の事はお手上げです、此処に人類にとって宗教の存在意義が敢然と科学、物理の両輪として必須であると言う事が分るものと考えます。

投稿: 尾窪勝磨 | 2008年4月11日 21:07

度々申し訳ありません(泣)
多久さんのCO2排出規制反対説の原因について
「科学は原因があり、結果が立証されて、初めて論説として認められ発表される」と考えるからです、、、ですが
確かに科学に限らず何事も原因があって結果がある、結果だけが突然あるわけでは無いとは思います、しかしCO2排出削減に積極的でない寧ろ反対説をとり、世界CO2排出量の3分の1を占めるアメリカと中国、その他インド等々にいたしましても教授の言われる「CO2削減で温暖化が防げることはまだ立証されていない」と言う理由で反対又は非協力的なのでしょうか?私は疑問に思うのですが多久さんはどう考えられますか?

投稿: 尾窪勝磨 | 2008年4月12日 17:40

尾窪勝磨 さん

 ありがとうございます。ミクロ・マクロという所まで解ってないのですが、以前読んだ物理の本で相対性理論は新しい理論がも出てるというようなことが書いてあったので。

 CO2の件はその教授は反対では無かったです。私もCO2に取り組むことに対しては反対では無いのですが、たまにCO2の削減!と言うことを表にしてやっているけれど、本当の目的は何なんだろうと考えてしまうようなことを見るので。

投稿: 多久 真里子 | 2008年4月16日 20:42

成程!確かに様々な情報の洪水の中で情に竿せば流されますから「本当の目的は何だろう」と考えて見る事は大事ですね、そしてそれを正確に掴めば様々な人生の局面に於いて選択を誤る様な事は無くなり、知恵ではなく智慧ある人になれる、人間は考える葦である!と言う言葉がありますが人間は物事の本質を見る智慧ある人に憧れ、感嘆し、尊敬せざるを得なくなるものなのでしょう。

投稿: 尾窪勝磨 | 2008年4月16日 23:48

副総裁先生:

 すでにご存じでしたらすみません。
 先日テレビで最新エコ発電ベスト3が紹介されてました。その内の第2位の太陽電池モジュール・フィルム型がすごいと思いましたのでご紹介します☆

 http://www.fesys.co.jp/sougou/seihin/fwave/index.html

 この軽さならどこでも取り付け可能そうですごいと思いました。ちなみに第1位は発電床で、首都高の路面に取り付ければすごい発電量に!という内容も、夢があって楽しめました☆

投稿: はぴ☆まり | 2008年5月16日 14:34

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