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2008年4月12日

食糧危機が近づいている? (2)

 本欄ではここひと月ほど、石油高騰と食糧問題との関係について何回か書いてきた。具体的には、3月8日「食品の値段はまだ上がる」、同22日「食糧危機が近づいている?」、同29日「“農地から燃料”ではいけない」、4月7日「コメの値段が上がっている」の4回である。しかし、日本で生活している限り、この問題はさほど深刻でないような印象を受ける。恐らく読者の多くも、食糧危機など“遠い未来”か“遠い国”の話だと感じているのではないだろうか。しかし、世界の実情を知ると、貧しい途上国での食糧問題が政情不安を惹き起こす理由がよく分かる。4月11日付の『ヘラルド・トリビューン』紙に掲載された論説が参考になる。

 それによると、1世帯の収入に対する食費の割合は、日本を含む先進国では2割に満たないのがほとんどだが、貧しい途上国では5割以上になることが珍しくないという。具体的に言うと、アメリカの世帯を収入に応じて5段階に分類した場合、最貧層の世帯でも、収入に対する食費の割合は16%にすぎない。ところが、同じ数字は、ナイジェリアでは73%、ベトナムでは65%、インドネシアでは50%になるという。こういう状況の中で、途上国が輸入した食糧は、昨年のうちに平均で25%値上がりした。トウモロコシの値段は2年間で2倍になり、小麦の値段は28年ぶりの高値圏にある。先週、世界銀行のロバート・ズーリック総裁(Robert Zoellick)は声明を発表し、このような世界的な食品の値上がりの中、33カ国で暴動などの社会不安が起こる危険があると警告した。なぜなら、「1世帯の消費の半分から4分の3を食費が占める国々では、生存のための余裕がないから」だそうだ。

 4月7日の本欄では、香港でのコメの買いだめ騒動について書いたが、フィリピンの首都・マニラでも米穀販売店を兵士が警備する事態が起こった(4月7日付『日本経済新聞』)。エジプトでは8日に地方選挙の投票があったが、ムバラク政権に反対する野党勢力が食糧高騰を材料にして選挙をボイコットし、デモ隊が暴徒化して機動隊と衝突した地域もあった(10日付『朝日新聞』)。ハイチの首都、ポルト・オー・プリンスでは10日、大統領の退陣と食糧を求める民衆が商店や倉庫を略奪し、資産家は財産を守るために銃を発砲する中で、9千人の国連の平和維持軍はなすすべもなかったという(11日付『ヘラルド・トリビューン』)。そして、隣国の北朝鮮も、昨年の洪水や韓国との関係悪化によって食糧不足が深刻だとして、国連に援助を求めているという(12~13日付『ヘラルド・トリビューン』)。
 
 こんな中で、沖縄県の南西石油を買収したブラジルの国営石油会社ペトロブラスは、ブラジル産のバイオエタノールを2010年にも日本に輸出すると発表した。8日付の『日経』によると、ペトロブラスのガブリエリ総裁は、南西石油を日本市場への供給拠点にするだけでなく、アジア諸国への輸出拠点として重視する方針を発表した。同社の事業には三井物産が協力しているから、2010年以降、日本のドライバーはブラジル産のバイオエタノールを使って自動車を走らせるという選択肢をもつことになる。ブラジル産のバイオ燃料の増産は、同国のセラードやアマゾンの森林伐採につながる可能性が高い。また、農地をめぐって食糧と燃料が競合する関係を深刻化し、さらなる食糧値上がりにつながるだろう。今年3月の時点で“バイオエタノール信仰”を捨てた私としては、この選択肢を読者にお勧めするわけにはいかない。
 
 谷口 雅宣

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コメント

原油高騰と食糧問題は現代社会が解決すべき最優先課題ですね!途上国の収入に対する食費の割合の高さに驚かされました、これは尋常ではありません、戦後の日本の姿の様です、日本は何故、こんなに物質的に豊かになったのでしょうか?そして援助ばかり受けなければならない途上国の未来の可能性はあるのでしょうか?日本にも悲惨な百姓一揆なる歴史もあります、何故百姓一揆なるものが起きるのでしょうか?米を作っている者が米を得る為に一揆を起こす!働けど働けど我が暮らし楽にならず、じっと手を見るではありませんがこの矛盾、どこかシステムが狂っているとしか思えません、食糧もエネルギーもある所には有るのだけれども途上国の国民は購買力が無い!ある所には有り余る程有る所に問題がある様に思います、餓鬼と言う言葉がありますが無財餓鬼、少財餓鬼、多財餓鬼の三種類あると聞きました、つまり多財餓鬼が作るシステムを変えなければ無財餓鬼はいつまで経っても浮かばれません!餓鬼の生き方は勿論歓迎されませんが多財層の人々は人々が人間らしい生き方が出来る様に少しは放出、損をする勇気を持って購買力が可能になる様なシステムを作り、富が片寄らず全体に行き渡る様にして貰いたいと考えるのですがこれは容易な事ではないのでしょう(泣)敗戦時の日本は強制的にシステムを変えられました、問題は多々ありますが物質的には豊かに、又購買力も可能となりました、しかし最近は少々おかしくなって来ている様に思います、私は権力者層の餓鬼の心、利己心が原因ではないか?と考えています、地球規模での場合、国連ではまさか餓鬼の心、利己心は余り無いとは思いますが干渉、命令には限界があると思われますし、やはり民衆が立ち上がるしかないのかなあ、、、と思います、しかし現状は権力者の武力鎮圧の前になすすべもありません、やはり強い国連の確立しか解決法はないのではないか?と思いながら状況の推移を見ています。

投稿: 尾窪勝磨 | 2008年4月13日 01:29

はじめまして。谷中初音町と申します。
バイオエタノールの生産は食物連鎖破壊の危険が大きいと思います。

投稿: 谷中初音町 | 2008年5月 3日 15:23

谷中初音町さん、

 どちらの方が存じ上げませんが、コメントありがとうございます。

 バイオエタノールを食物連鎖の観点から考えたことがありませんでした。でも、確かにそういう側面がありますね。ご指摘、ありがとうございました。

投稿: 谷口 | 2008年5月 3日 22:20

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