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2008年3月22日

食糧危機が近づいている?

 3月8日の本欄でも取り上げているが、このところ食品の値上がりが続いている。これは日本だけのことではなく、世界的な現象だ。原因もわかっているが、効果的な対策が講じられているとは思えない。原因は、①中進国の経済発展に伴う動物食の増加、②気候変動による農業生産の不安定化、③石油の高騰、④バイオエタノール・ブーム、などだ。この4つの要素は、相互に密接に関連している。肉食が増えれば農地が減り、農地を得るために森林伐採が進み、気候変動が深刻化する。人口の多い中進国(中国、インドなど)の経済発展は温暖化を促進し、石油や資源の需要を増大させ、石油の値上がりはバイオエタノール・ブームを生む。エタノール生産を増やせば、食糧用農地が不足し、農地拡大が森林伐採を進める……という具合だ。世界は今結束して、この悪循環を止めなければならない。
 
 アメリカの時事週刊誌『Time』は最新号(3月31日付)で、この世界的な食品の値上がりを取り上げ、途上国の貧困層への影響が深刻化していると伝えている。それらの国では、2年間に値段が倍になった食品もあり、多くの国々で市民の不満が爆発して、中にはメキシコやパキスタンのように、暴動に発展している国もある。また、西アフリカのブルキナ・ファッソでは先月、暴徒が3都市を破壊し、政府の建物を焼いたり、商店を略奪したという。昨年後半には、セネガルやモーリタニアでも、同じような暴動が起こっている。昨年10月、インドの西ベンガル地方でも、何百もの食品店が焼き討ちにあったそうだ。それらの店が、政府からの配給用食品を闇市に流しているという理由だ。
 
 ワシントンにある国際食糧政策研究所(International Food Policy Research Institute, IFPRI)の分析では、このような食品の高騰は少なくとも10年は続くという。理由は、上に挙げたような状況がそう簡単には変わらないからだ。そして、アースポリシー研究所のレスター・ブラウン氏(Lester R. Brown)は、3月20付けのニュースレターで、このような食糧危機の背後には、地球温暖化による世界の氷河の融解がある、と警鐘を鳴らしている。
 
 それによると、今後の大きな問題は、ヒマラヤ山脈にある氷河が急速に融け出していることだ。ここはガンジス川、黄河、長江などへ水を送る重要な役割をもっていて、氷河が凍っていれば、乾期にもこれらの大河に水を送り、中国やインドの内陸部に水を供給することができる。しかし、温暖化で早期に氷河が融け出すと、灌漑用の水を供給できなくなる恐れがあるという。中国とインドは、小麦と米の大生産地だ。中国の小麦の生産量は世界一で、アメリカの倍近くある。インドの小麦生産量は世界第2位だ。これにコメの生産を加えると、中印2国で世界の穀物生産の半分以上を占めることになる。だから、この地での水不足は、世界の食糧事情に重大な影響を与えることになる。

 では、どうすればいいのか。ブラウン氏の提案はこうだ--国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告では、ヒマラヤの氷河の多くは、2035年までに完全に融けてしまうと予測されている。だから、温室効果ガスの排出量の削減は、現在考えられているようなペース(2050年までに80%削減)では不十分であり、同じ量の削減を2020年までに達成すべきである、という。このように急速な排出削減ができない場合、世界の穀物生産に深刻な影響が出て、現在をはるかに上回る食糧危機が到来する危険性がある、ということだろう。

 日本の食糧自給率の低さは有名で、日本の農業は衰退している。この流れを逆転させ、農業を活性化し、さらには将来の食糧危機を乗り越えられるだけの農業の抜本的振興策を真剣に考える時期に来ているのではないか。

谷口 雅宣 

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コメント

最近、福岡のとよのか苺が中国に輸出されているそうです☆日本の農家の素晴らしさが広まったらいいなぁ。と思いました。

投稿: 多久 真里子 | 2008年3月24日 08:51

地球温暖化と食糧危機!確かに絡みはあると思います、そして「世界は今こそ結束してこの悪循環を止めなければならない」これまた確かにそうだと思いますがやはり「どうやって解決するか?」の問題が残ります、地球温暖化防止さえ実現して行けば全てが解決するか?と言う単純なものではないと考えますが食糧危機に関しまして値上がりはするに致しましても絶対量が無い!と言う事では無い様に思います、問題は貧困層にとって購入出来ない!と言う事こそが問題であると、、貧困層が出来るのは政治の問題ですから為政者は富の我田引水を止め、本当に多民族国家であっても民族を越え国民の為、人間の為の政治"中間層意識"を持てる政治をして欲しい!又各国のトップは戦争をやらない智慧を出し合って欲しい!戦争を無くし、富の分配に心を配る政治を行ったならば地球の食糧危機の心配は全く無い!と考えます(無尽蔵)、又独裁国家は"家庭内暴力"の様なものですが見て見ぬ状況を作らない世界のシステム作りが必要だと思います、以前にもコメントさせていただきましたがそれは大国のエゴを許さない"強い国連"の確立です、温暖化防止に取り組みながら是非確立して頂きたいものです、この宇宙時代、地球は一つ、人類皆兄弟姉妹の意識改革が必要な時代ではないでしょうか、、。

投稿: 尾窪勝磨 | 2008年3月24日 12:47

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