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2008年3月 8日

食品の値段はまだ上がる

 立て込んでいた仕事が一段落したので、本欄に向かうことができた。5月初めの生長の家の運動組織の全国大会を期して単行本を上梓させていただく予定で、その準備でしばらく根を詰めていたため「小閑」を見出す余裕がなかった。最後は、木曜日のほぼ1日を原稿書きに使い、金曜日の深夜までかけて仕上げた原稿をメールで送信して、やっと一息つけた。ありがたいことだ。
 
 今日は、生長の家の講習会のために大阪へ出発。昼過ぎに発つ新幹線に乗るために早めに東京駅へ着き、妻と2人で“キッチン・ストリート”に向かった。和食か中華を念頭においていたが、油の臭いに遭遇したため、うどん屋に入ることを決めた。近ごろは、昼食に脂っこいものをあまり食べたくない。妻も同じだ。「すぎのこ」という店に入り、妻は日替わりセット、私はゴマだれ薬味うどんを注文した。二人でうどんを食べながら、私は前回ここで食べた時よりうどんの量が少ないかなぁ……などと思った。気のせいかもしれない。しかし、それを口に出しても、妻は否定しなかったので、続けてこう言った--「小麦の値段がずいぶん上がっているからね」。
 
 ちょうど今日の『日本経済新聞』に「小麦粉1~2割値上げ」という見出しの記事が載っている。製粉大手3社が4月下旬から業務用の小麦粉を1~2割値上げするそうだ。理由は、政府が引き渡し価格を4月から3割も上げるからだ。業務用小麦粉は、昨年5月に24年ぶりに値上げされ、それ以降これが3回目となり、上げ幅は最大だという。これによって、小麦を使った製品--パン、麺類、菓子など--のさらなる値上げはほぼ確実である。『日経』は、「昨年来の食品値上げは第2波を迎え、一段と家計を圧迫する」と書いている。
 
 本欄でもしばしば書いてきたように、昨年来の食糧の値上がりは“地球温暖化”と大いに関係している。気候変動による干ばつや洪水が続き、世界の食糧の在庫が減少している。そこへもってきて温暖化抑制策として、アメリカなどがバイエタノールの大増産を進めている。これによって、世界最大の穀倉地帯であるアメリカで生産されるトウモロコシがどんどんエタノールに変わる。これが大いに利益を生むので、アメリカの農家は小麦の生産を減らしてトウモロコシを増産している。この中で、石油の生産量が頭打ちである。つい先日も、OPECが生産量の据え置きを決めた。そして、ドルベースでの石油の値段はどんどん上がっている。
 
 私は読者に、世界の石油の生産量がこれ以上増えないという“石油ピーク”がすでに来ていると考えることをお勧めする。これは、私がプロ並みの情報を集めて、専門的に分析した結果、そう結論するにいたった、というのではない。私は宗教家だから、そんなことはしない。では、“神のお告げ”かというと、もちろん違う。私が“石油ピーク説”をお勧めするのは、それが今年来なくても、近々来ることは大いに考えられ、また来なかったとしても、温暖化抑制のためには“脱石油”が喫緊に必要だからだ。もう“石油ピーク”が来たと結論して、世界各国が「これ以上のエネルギーは石油等の化石燃料から得るのはやめる」という合意に達すべきだと考えるからだ。が、近い将来、世界中がこの合意に達することはないだろうから、合意できる我々一人ひとりが、“脱石油”の行動を起こし始めるのがいい。いっぺんに“脱石油”はできないから、少しずつ、できるところから、である。
 
 そういう意味では、石油の高騰はありがたいと言える。おかげでガソリンの消費量が減っており、自動車の燃費は向上している。人類は、化石燃料を基礎とした“炭素文明”から脱しようとしているのだから、炭素ベースの古い産業が衰退するのは仕方がない。その代りに新しい“水素産業”をどんどん育てるべきである。この切り替えができないと、日本経済は相当困難な状況になると思う。今の政府の考えを推測すると、政治資金を多く提供してくれる炭素ベースの産業自体に、水素ベースの技術を導入させるか、利用させるつもりだ。これにより、資金供給を継続させながら産業構造を変えようとしている--そんな気がする。しかしこれでは、一つの産業内部で利益相反行為をさせることになり、切り替えは難しく、できてもスピードは遅い。欧米との競争に負ける気がする。

 まぁ、放言はこのくらいにして、筆を収めよう。食品の値上がりにも“光明面”はあるのだが、その話は別の機会にする。
 
 谷口 雅宣

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コメント

放言も良いのですが私はニューヨークの石油先物取引を何とか出来ないものか、石油の値上がりの是非うんぬんの前に、今回の値上がりはOPECが価格を引き上げているのではなく巨大なファンドに原因があると思います、自由社会だからと言って何をしても構わないのではなく一定の規制と言うものも必要ではないか?国家を含めた巨額のマネーゲームは歪な所得格差を生み出し正常な生産消費活動を麻痺させる様な感じがいたします、しかし政治資金の提供は炭素ベースの産業以外のマネーゲーム技術産業からも流れて来ているのでしょうね(泣)。

投稿: 尾窪勝磨 | 2008年3月 9日 16:22

副総裁先生

ありがとうございます。
食料は間違いなく値上がりするでしょうね。
先日、ある方が言っておりましたが、わが国の食料は約23兆円で捨てているのが11兆円だそうです。
昨日の日経新聞ではスーパーやコンビニなどで賞味期限が切れた商品を肥料や飼料にすることを考えていると一面に書いてありました。
私は賞味期限というのは法律でどのようになっているか判りませんが、賞味期限が切れても食べられるものは沢山あります。それを生ゴミにしたり、肥料や飼料にするのでは余りにも勿体無いを通り越して愚かなことだと思います。

昨年の食べ物での食中毒で死んだ人は三人だそうです。
それも、フグと毒キノコが一人ずつで、後一人は原因が判らないとのことです。

我々が子供の頃には、どんな食品にも賞味期限などの表示はありませんでしたし、少しくらい腐ったものは煮たり焼いたり、洗ったりして食べたものです。

この賞味期限の理解の仕方一つで、わが国の食料自給率は上がるでしょうし、無駄をなくすることが出来ると思います。
そして、食料が不足している国にかなり多くの食料が行き届くと思います。
副総裁先生はいかが思われるでしょうか?

投稿: 佐藤克男 | 2008年3月10日 20:03

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