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2008年3月26日

地上資源文明への転換 (2)

 池内教授は、有限の地下資源に依存せずに、地上資源を、その循環的性質を損なわずに効果的に組み合わせることが、今後の人類の生きる道であるという。そういう前提のもとに、農業に注目する。なぜなら、これこそ太陽がもたらす地上資源のうち最古のものであり、「地上資源を最も効果的に利用している」営みだからだ。同教授は「農業は太陽の光と大地の力と人間の労働が織りなす自然の芸術」だとさえ言う。

 このような観点から見れば、食糧自給率が4割を切る日本の実情は深刻である。が、同教授は、日本において「農業が見直されるのはそう遠くはない」と予言する。何が日本の農業政策を変えるかについては何も書いてないが、私が想像するところ、石油の価格高騰や資源の囲い込み、人口増加にともなう食糧の価格高騰などによって、日本は政策転換を余儀なくされるのだろう。農業は基本的に地域分散的産業だから、これによって「地域の復権に必ずつながっていくだろう」と同教授は言う。そして、地上資源文明が開花し始めるというのだ。

 この新しい文明においては、従来の一極集中の大型化を推進する技術ではなく、「地域分散的な生活を目標とする地上資源を用いた小型で多様な技術の組み合わせに替わってゆく」と同教授は予測する。なぜなら、「地上資源による多様化・分散化こそが地球に似合った文明の形態」だからという。

 この線に沿った世界の将来像は、別の人も別の用語を使ってすでに提出していて、私もどこか(恐らく『足元から平和を』の中)でそれを紹介したことがある。つまり、再生可能の自然エネルギーは、太陽光も風力も、バイオマスも、波力も、地熱も、全地球的に分散して存在するから、地元生産・地元消費が原則であり、それを基礎とした新しい社会は当然、中央集権的ではなく、地方分権的になるという考え方だ。この大変革の先鞭をつけるのが、農業の復興であるかもしれない。私が、3月8日の本欄で食品の値段の今後の上昇について書いたとき、「食品の値上がりにも“光明面”はある」と書いたのは、このことなのである。
 
 農業の復興は、すでにアメリカにおいて兆候が見られる。これはご存じのように、中東の石油に依存したアメリカ経済が9・11事件を生んだ要因の一つだとの反省に立ち、ブッシュ大統領自身がエネルギー安全保障の立場からバイオエタノールの大増産を決定したことに端を発する。このおかげで、エタノールの生産量はここ数年で急拡大し、2005年にはアメリカの生産量がブラジルのそれを追い抜いて世界一になった。それに応じて、アメリカの農家の収入も急拡大している。このほか、ヨーロッパやアジアでもバイオエタノールやバイオディーゼルの生産がブームとなっていて、2000年に世界全体で約二千万キロリットルだったバイオエタノール生産量は、2007年には倍増して約五千万キロリットルになっている。(25日『日経』)

 日本にも遅まきながら、同様の動きが出てきている。25日の『日経』夕刊は、新日本石油や出光興産、トヨタ自動車などの民間16社と経産省、農水省、東京大学などの産官学による「バイオ燃料技術革新協議会」が、2015年までに最大で20万キロリットルのバイオ燃料を国内で生産する目標を定める、と報じている。アメリカに比べ2桁も少ない量だが、アメリカより優れている点は、このバイオ燃料は人間の食糧と競合しないヤナギや大型草などを主原料とすることだ。試算によると、東京の山手線内の面積の1.5倍の耕作地があれば、年間10万~20万キロリットルのバイオ燃料が「リットル当り40円」で生産できるという。必要な栽培面積は現在、減反などによる未利用農地を活用することでまかなえるらしい。
 
 こうして地方の休耕田が活用され、農家の収入増に結びつけば、若者の“農業回帰”も増えてくる可能性があるのではないか。が、それにしても、日本のバイオ燃料の導入目標は現在「50万キロリットル」だから、いかにも小規模である。「急激にはやりたくない」という意志の表明だろう。また、地下資源の利用者に地上資源を開発させようとしている。これでは、早急な文明の転換は難しいと言わねばならない。
 
 谷口 雅宣

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コメント

谷口雅宣先生
私の知り合いで尊敬する音楽家が、昨年に引き続き、米作りを行ないます。これは、埼玉県富士見市にある公園(難波田城公園内) の中にある水田を借りて行なうもの。この音楽家が一昨年の市民のお祭りのイベントでコンサートを行なった際、市有地の田圃が借りられる事になり、実現しました。
その音楽家の趣旨は以下の通りです。
<<「米作りと自然の恵みを楽しむ会」全5回(平成20年6月7~11月8日)の体験会です。米作りのオリエンテーションで、稲作が初めての方に、農作業の一年間を学んで頂く講話とわら葺古民家で昔の暮らしを体験。アツアツの鍋料理も。続く「米作りと自然の恵みを楽しむ会」では田んぼのぬかるみに”グニュッ“と足をとられながら、こころのふるさとを確かめてみませんか。安心・安全な有機農法による米作りを体験するばかりでなく、交流を通じて大切な農業や日本古来の暮らしの知恵を学び、また地域のご馳走や、収穫祭の音楽コンサートなど、ちょっと欲張りなことも考えております。>>
 話しは変わりますが、通勤帰りにFM放送J-WAVEで「ロハストーク」を聞いております。今週のゲストは米国ミシガン州のグランドラピッヅにあるアクィナス大学経済学部助教授の山崎正人さん。<<>>はJ-WAVEのHPより。
<<山崎さんが現在教鞭を執られているアメリカ・ミシガン州アクィナス大学は、全米唯一サスティナブル学部がある大学。普通、大学で環境を学ぶと自然科学が中心ですが、自然科学だけでは、あまり実社会に浸透していかない。
そこで、企業家としてビジネスをする人に環境を学んでもらい、より実社会に役立てられるように、サスティナブル学部ではビジネスの中で実践していける環境の研究をしているんだとか。経済学・経営学も踏まえた上での環境学を学ぶので、企業側にたって環境問題に対応できる出来る人が育つそうです。グランドラピッツは、ミシガン州からスマートゾーンという地域に指定されているんだそうです。このスマートゾーンとは、行政が地域企業に資本投下しインフラを整備する、これは税金を投入するんだとか。この投資により多くの利益を上げた企業からは、これまで以上の多くの税収が行政へ返ってくる、その税金をまた投資する。税金を有効活用し、雇用も収入も税収も増え、みんなが幸せになれるのがスマートゾーンなんだそうです。>>
山崎氏には著書「ゆりかごからゆりかごへ入門」があり、<<「ゆりかごからゆりかごへ」これは、ある商品が壊れても、それを生かして違う商品に生まれ変わらせる。またその商品が壊れたら違うものに生まれ変わらせると、永遠に繋いでいくサスティナブルな考えなんだそうです。この考え方は、とらえる角度は違くても本質はLOHASと同じなんだとか。>>
サステイナブル・ビジネスは
http://www.sustainable-busforum.jp/topics.html
に詳しく書かれています。
以上、2つ情報を提供しました。

投稿: 久保田裕己 | 2008年3月27日 02:55

「日本の食糧自給率が4割を切る、日本の実情は深刻である」確かにそうかも知れませんが殆どの国民は深刻に受け止めてはいないと思います、何故なら日本中何処へ行っても食べ物は有り余る程満ち溢れているからです、一度戦争状態になり、貿易が途絶えましたら初めて深刻さを知る事になるのでしょうが、、若者の農業離れや休耕田は歪な姿ではありますが戦争の無い時代の国際分業と言う観点から考えれば自然の流れとしてそうなるのはやむを得ないかも知れません、その意味で野蛮で血生臭い、罪の無い、恨みも無い者同士の殺し合い、戦争だけは何が何でも人類の叡智を結集してこの地上から無くしなければならないと思います。

投稿: 尾窪勝磨 | 2008年3月27日 12:53

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