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2008年2月 6日

代理出産は原則禁止へ

 最近、代理出産をめぐる国の方針策定をめぐって新しい動きがあった。首相直轄の特別機関である日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」が先月30日に政府に提出する報告書案の大筋をまとめ、その中に、代理出産で生まれた子を、依頼した夫婦の実子として認める特例が盛り込まれたというのである。これまでは、「分娩した女性が産んだ子の母」という民法の原則が貫かれていたため、子宮切除などで妻が妊娠・出産ができない場合、代理出産で生まれた子は、遺伝的には夫婦の子であっても代理母の実子とされた。ところが、これを“かわいそう”とする世論の流れがあって、今回の動きにつながったと推測される。
 
 1月31日の『日本経済新聞』によると、30日に行われた検討委員会では、代理出産を法律で原則禁止し、営利目的の違反者には刑事罰を科すという点では合意されたが、例外的にそれを認める際の条件をめぐって議論が紛糾し、最終的な結論は今月予定されている会合に持ち越されたという。しかし、同じ『日経』の2月5日の夕刊では、この報告書案を「厳密な管理の下で“試行”は認めるとする」内容だと書き、事実上、31日の記事を訂正している。
 
 この“試行”が、どのような条件下で認められるかという情報は、新聞記事にも日本学術会議のウェブサイトにもない。ということは、この点は本当にはまだ合意に至っていないと見るべきなのだろう。このウェブサイトには、検討委員会の委員長である鴨下重彦・東大名誉教授のパワーポイントの資料が掲載されていて、そこには「代理懐胎による親子関係問題の結論」として、次の4点が列挙されている:
 
1.代理懐胎の場合も、「分娩者=母ルール」が適用されるべきである。
2.養子縁組または特別養子縁組によって、生まれた子と依頼夫婦との間に親子関係を定立することは認めるべきである。
3.外国で行われた代理懐胎についても、1、2、と同様に考えるべきである。
4.代理懐胎の試行が考慮される場合であっても、1、2、を原則とすべきである。
 
 検討委員会は、今年3月末までが任期のようだから、結論はまもなく出るはずだ。今後のポイントは上記の4にある“試行”が、どのような条件下で認められるかに絞られてくるのだろう。

 私は代理出産の問題に関しては、すでに「反対」との見解を本欄などで表明している。その理由は、2006年10月3日同16日の本欄で述べているので、詳しくはそちらを参照してほしい。が、ごく簡単に言うと、この方法は自分の幸福追求のために他人を手段として利用するから、倫理的に好ましくないということだ。この「他人」とは、「生れてくる子」と「代理母」の最低2人はいて、双子が生まれれば3人となり、夫以外に精子提供者が参加すれば、4人に増える。そういう人々が、100%の善意によって代理出産に協力するとは考えにくい。だから、上記の鴨下氏の「結論」の1~3については、基本的に異議はない。4にある“試行”とは何であるかを、ぜひ知りたいと思う。
 
 谷口 雅宣

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コメント

本当に難しい問題ですねえ、、、、ケースバイケースで一律に決め兼ねない気がします、善悪は別にして日本は禁止しても可能な他国がある事実、本当の事は不明ですが日本に50例位あると聞いた事があります、法律に致しましても禁止は禁止でも絶対ではなく"原則"と言う言葉が入っていますから世代間倫理とか他人を利用するから好ましくないとか100%の善意によって代理出産を協力するとは考えにくい(にくいであって有り得るかも知れない)と訴えたとしても、強い願望、要望を持った人は今後とも行われるだろう、しかしこれら人間の行為は結局自分自身に返って来て、その福過を享受する事になると思います。

投稿: 尾窪勝磨 | 2008年2月 7日 01:21

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