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2008年2月19日

原宿は欲望の街?

 ノンフィクション作家の工藤美代子さんが、2月17日付の『日本経済新聞』に書いている「原宿はらはら」というエッセーを読んで、手で膝をハッシと叩きたい気分になった。まさに「我が意を得たり」の文章なのだ。私は、工藤さんが原宿に住んでいたことは妻から聞いていて、散歩のついでに二人でお家の前まで行きかけたこともある。が、工藤さんは、6歳の頃から半世紀ものあいだ原宿に住んでいたのに、一昨年の夏、ついにこの地に「別れを告げた」というのである。その理由は、普通の商店がなくなり、高級ブランド・ショップばかりが建ち並び、「乱暴な言葉遣いに濃いメーク、そして高価なブランド物と携帯電話で武装した少女たち」が跋扈するようになったため、「いくら愛着があり、思い出がたくさんつまっている街でも、これ以上住み続けるのが辛くなってしまったのである」と書いている。
 
 そして、次の言葉が私の胸を打った--

「今の原宿は欲望の街と化している。人間のあらゆる欲望が、あの街に集約されているように私には見える」。

 私は昨年2月1日の本欄で、原宿の表参道のことを密かに「ヴァニティー・ストリート」(虚栄通り)と呼んでいることを書いたが、工藤さんは、この街全体を「欲望の街」と名づけて別れを告げてしまった。そう言われれば、この街を動かしている原動力は「欲望」に違いない、と私も思う。しかし、「それだけではない!」と私は叫びたい。谷口雅春先生ご夫妻が人類救済の拠点を建てられ、自らも永年生活された地だ。今も生長の家の国際本部がここで機能し、明治神宮の深い森は訪れる多くの人々の心を慰めている。生長の家に隣接して東郷神社もあり、歴史のある長泉寺や穏田神社もある。キリスト教では原宿ユニオン教会やクリスチャン・サイエンス教会、また天理教の教会もある。が、確かに、この街では、新しく生まれるものよりも、壊されて失われるものの方が、価値が大きいと感じられるのである。

 しかし、私は新しいものにも価値があるに違いないと思いながら、「新旧相い並ぶ混沌とした街の中で、私の心に残る、あるいは現在印象を刻みつつある風景を記録しておく」(上記本欄)ことを始めた。が、この作業は未完である。「あそこも描きたい」「ここもスケッチしたい」と思いながら、忙しさに紛れて日を過すうちに、いざスケッチブック持参で行ってみると風景が変わってしまっている。そんなことも十分あり得る。杞憂であってほしいと思う。
 
谷口 雅宣

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コメント

私は原宿に行った事がなく、高級品にもブランド品にも若い時から余り関心が無く(田舎者で)何とも言えませんが自分の好きな所へ移住して好きな生活出来る人は幸せだと思います、この文章を拝読させて頂き私は鴨長明の方丈記が思い浮かびました明確ではありませんが確か「行く川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず、淀みに浮かぶ泡沫はかつ消え、かつむすびて久しくとどまりたるためしなし、世の中に住む人と住家とまたかくの如し、、、」だったと思いますが本当に「諸行無常、もの皆移り変わり、現われては滅びる」と言う言葉通りです、生滅に囚われずに静かに、前向きに、染まらないで暖かく見守りながら生き抜いて行く姿勢も悪くはない様な気が致します。

投稿: 尾窪勝磨 | 2008年2月20日 10:47

日経新聞の「原宿はらはら」の記事、電車で座っていたら前に立ったおじさまがちょうどそこを見せて下さり(見えただけ?)読めてしまいました(^_^)。

たしかに表参道はヨーロピアンブランドに占拠されてしまって、ギラついてますよね。
なんだか同潤会アパートがあった頃のなんとなくパリを思わせる程度の頃が懐かしく蘇ってきます。


新聞といえば、今朝ラジオを聴いていたら、こんなニュースがありました☆
ワンダホーだなぁ!と思いましたのでご紹介します^^

http://calsun.canoe.ca/News/Alberta/2008/02/18/pf-4856126.html

参考までに「カルガリー・サン紙」
http://www.calgarysun.com/index.shtml


朝一日が始まるときに、一番に何を見て何を聴くかって大事だなぁと思います。
新聞も報道も、良いことのみを掲載してくれると、いいと思います。小さな良いことに感動できる人が増えると、バニティー通りも減っていくかもですね( ̄∀ ̄)☆

投稿: はぴ☆まり | 2008年2月20日 16:25

すみません。

2行抜けてました。

カルガリー・サン紙が2月18日付けの紙面で「悪いニュースを掲載しない紙面を製作した」というニュースです☆

一つ目のリンクは、同紙編集者のコメントです。

投稿: はぴ☆まり | 2008年2月20日 16:27

はぴ☆まりさん、

 カルガリー・サンの話、面白いですね。でも、紙面全体が見渡せないので、残念です。

投稿: 谷口 | 2008年2月23日 21:45

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