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2008年2月 7日

コンポストの土

 好天に恵まれた今日は、午後から庭の植物たちに施肥をした。「寒いうちに……」と思いながらも、忙しさにかまけて延び延びになっていた。すでに立春も過ぎてしまったから“寒肥(かんごえ)”とは言えないが、数日の差は植物も許してくれるだろうと願いながら、土を掘った。「植物」とは書いたが、庭のすべての植物に施肥することはできない。当然、特定の種をエコヒイキすることになる。私の場合、果樹を優遇する。理由はきわめて単純--美味しい果実を期待するからだ。というわけで、キーウィー、ブルーベリー、イチジク、スモモの樹の下にスコップを入れることになった。日陰には、先日降った雪の名残りもある。軟らかい土に、スコップは面白いほどよく入った。
 
 スコップが簡単に入りすぎるのが、気になった。実は寒肥は、寒中を逃してはあまり効果がないと言われているからだ。土が柔らかいのは、土中の微生物がもう活動を始めているからで、植物の根も伸び始めているのだろう。土を掘ると、その柔らかい根を伐ってしまう危険がある。特に気になるのはキーウィーの樹で、昨年は勢いがなく、実がほとんどできなかった。雌雄2本の木のうち1本は今、枯れたような状態である。これに立ち直ってほしいのである。
 
 肥料は、家の生ゴミで作ったコンポストだ。2つあるコンポストの容器が、ちょうどいっぱいになりつつあった。そこで、半年前にいっぱいになった方の容器から中身を取り出し、樹下に細長く掘った穴を埋めていく。コンポストの中身は半年たてば、ほとんど黒い土になっていて、臭いもあまりしない。それでも卵の殻、貝殻、パッション・フルーツの外殻、鶏の骨などがまだ外形を残していて、何となく懐かしい気持にさせる。それらが、土中へと新たな旅立ちをするのである。“彼ら”はいずれ分子をはがされて、土中から植物の根に吸収され、再び果実となって、妻か私の口に入るか、昆虫に食べられるか、あるいは海を渡って飛んできた鳥の胃袋に入る。そんなことを考えながらスコップを振るっていると、時間がたつのを忘れてしまう。

 私がこの作業に没頭しているのを横目で見ながら、三毛と黒の2匹の野良ネコが日向ぼっこをしていた。私との距離は、最短で5~6メートルだっただろうか。私が、バケツに入れたコンポストの土を運んでスモモの樹のそばへ行くときに、彼らとの距離は最も縮まる。すると、2匹はそわそわと腰を上げて、縁の下へ逃れるのである。しかし、そのまま別の場所へは行くわけでもなく、私の姿が見えなくなると、再び同じ場所にもどってきて陽だまりの中に横たわる。ネコごっこならぬ、こんなイタチごっこを3~4回繰り返した後に、2匹はどこかへ姿を消してしまった。
 
 施肥のあと、家の北側にブルーベリーの小株を移植した。これは、挿木したのがついて、植木鉢で育てていたものだ。移植した場所には、もともとシャクナゲがあったのだが、昨年、なぜか枯れてしまった。ブルーベリーの成長には陽光が必要だから、家の北側でうまく育つか自信がない。が、若い株の枝の勢いに期待して、これにも旅立ちをさせた。

 谷口 雅宣

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