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2008年2月22日

低炭素社会懇談会

 日米関係のアンバランスを指摘して「日本はアメリカの51番目の州だ」などと皮肉る言い方が昔あったが、これはひょっとして現在にも通用する立派な“格言”ではないか、と最近思うのである。アメリカの大統領選挙で勝ち残ってきたマケイン、クリントン、オバマの3候補が、いずれも地球温暖化抑制のための排出権取引に参加する意向を示していることを知り、日本政府のみならず、この制度にあれほど正面から反対してきた日本の経済団体も“重い腰”を上げ始めたからだ。
 
 21日付の『日本経済新聞』によると、日本経団連の御手洗冨士夫会長は20日、ヨーロッパ型のキャップ・アンド・トレード方式(cap and trade)による排出権取引について「欧米などの世界の潮流を踏まえて検討していくのがカギになる」と発言したという。この方式は、民間企業などに温室効果ガス排出量の上限を設定し、この上限に対する過不足分を売買する制度だ。これまで経団連は、この制度では排出権の公平な割り当ては難しいとして反対してきたが、この日の御手洗氏は「地球環境問題をテーマとするサミットの主催国として、これを成功させるためにも検討していくのがカギになる」と発言したという。
 
 同日付の『朝日新聞』は、町村官房長官が「ブッシュ政権とは環境については違いがある政権ができる可能性を認識している」と発言したことを取り上げ、政府が「米国の次期政権が排出量取引制度の導入を含め、温暖化対策を加速させるという見方を示した」と分析している。同紙は、この制度に抵抗していた経済産業省も、「省内に私的研究会を立ち上げ、本格的な検討に入る」だけでなく、自民党も今月になって国内排出量取引の勉強会を発足したことを伝えている。
 
 21日には、政府サイドでもう1つ新しい展開があった。それは福田首相直轄の有識者会議「地球温暖化問題に関する懇談会」のメンバー12人が発表されたことだ。経済界から注目されているのは、これまで排出権取引に最も強力に反対してきた電力業界と鉄鋼業界の代表者として、勝俣恒久・東京電力社長と三村明夫・新日本製鉄社長がメンバーになった点だ。つまり、最大の反対勢力を内部に取り込むことで何かを達成しようということだ。私は、こういう政治手法によって、本当に意味のある政策が実現可能かどうかよく分からない。が、福田首相は、「電力・鉄鋼は日本の産業界の6割くらい温暖化ガスを排出している。そういう人に積極的に協力してほしいという思いもあった」(22日『日経』)という。とりあえず、洞爺湖サミットまで、お手並み拝見ということにする。
 
 ところで、上記の有識者会議は「低炭素社会懇談会」という異名ももっている。そのメンバーの中に枝廣淳子さんがいたので、少し驚いた。彼女は、知る人ぞ知る環境ジャーナリストで、本欄でもたびたび登場するレスター・ブラウン氏(Lester R. Brown)の本の翻訳者でもある。アメリカの企業家の環境意識についても詳しく、地球環境問題へのブラウン氏の危機感を共有しているだろう。そういう人と電力と鉄鋼の両業界の重鎮とが「懇談」することで、7月のサミットまでに首相に「低炭素社会」実現のための助言を与えることなどできるだろうか? いやいや、マイナス思考をしてはいけない。きっと成算があるからこのメンバーが選ばれた、と解釈しよう。
 
 低炭素社会へ向かって、日本だけでなくアメリカも引っ張っていくような強力な提言を打ち出すことを期待したい。そうすれば、「51番目の州」などという汚名は返上できるに違いない。
 
 谷口 雅宣
 

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コメント

何時も貴重な情報有難う御座います、今回の有識者会議で「日本はアメリカの51番目の州だ!」と言われたとしてもこの流れは結果は兎も角歓迎すべき方向だと思います、「低炭素社会へ向かって日本だけでなくアメリカも引っ張って行く様な強力な提言を打ち出す事が出来れば「51番目の州」などと言う汚名は返上出来るに違いない」と申されておられますが果たしてそうでしょうか?私はもし提言を打ち出す事が出来たとしてもマケイン、オバマ、クリントン候補の発言、姿勢を見てからの事ですからこの汚名はそう簡単には返上出来ないものと考えます、良い悪いは別にして格言の如く野党は言い続けるだろうと思います、例えそうであったとしても「低炭素社会」実現の為に大きく前進する事を期待して静観して行こうと思っています。

投稿: 尾窪勝磨 | 2008年2月23日 00:47

副総裁先生

ありがとうございます。
有識者会議「地球温暖化問題に関する懇談会」の12人のメンバーの中に神奈川の栄える会で2度講演していただいた山本良一先生も入っております。

山本先生は生長の家が排出権を購入することを知って思わず絶句したそうです。

宗教団体のような組織が、率先して環境問題に取り組んでいることに敬意を表したそうです。

もう一人のメンバーで北海道知事の高橋はるみさんとは先月ある団体の賀詞交換会でお会いしました。挨拶でキャンドルナイトの実施と北海道全体でお掃除をするとのことを言っておりましたが、それに加えて欲しいのは北海道から自動販売機の撤廃を進めましょう、と進言しておきました。

目を丸くしておりましたが、自動販売機がなくても良いと思っている人は80%を超えているそうです(1月12日朝日新聞)。必要としている人は、販売機メーカーと飲料品メーカー、電力会社、そしてそれに関わって利益の恩恵をこうむられている方でしょうね。それを引いたらどのくらいになるのでしょうか?

人気のないところで、真夜中でもコーヒーを暖め続ける自動販売機のCO2排出はどのくらいなんでしょうか?

教化部でも、木曜日に誰も居なくても自動販売機はCO2を排出し続けているんです。勿体無いですね。

日本はいつの時代も外圧に弱い国です。
アメリカには51番目の州と揶揄され、中国からはもう一つの省だと言われているのです。

国の目指す方向が明確でないために、このような現象が起きるのではないのかなと思います。

しかし、有識者会議「地球温暖化問題に関する懇談会」が出来たことは喜ばしいことです。

投稿: 佐藤克男 | 2008年2月23日 07:50

佐藤さん、

 山本良一さん、高橋はるみさんに関する興味ある話、ありがとうございました。有識者会議の趨勢が、業界側に動くか、あるいは環境保護派側へ動くかで、ずいぶんと違った結果になるのでしょうね。

投稿: 谷口 | 2008年2月23日 21:41

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