偽りの古紙配合率 (3)
この表題を使って本欄を書くことは、日時計主義の立場からもうしたくなかったのだが、誤った情報を訂正せずに残しておくことはよくないと思い、あえて書くことにした。前回この主題を扱ったとき、日本教文社発行の書籍の本文用紙について「同社発行の書籍で再生紙を使用しているものは全部で15点、このうち古紙の配合率を数字で示した書籍は11点あるという。この11点については、すべて表示通りの配合率であったという」と書いた。ところが、昨夜受け取った同社からの電子メールによると、5点で表示偽装があったというのである。しかも、きわめて残念なことに、生長の家が環境保全意識を高めるために今も運動で使っている次の2点の本は、「本文は古紙100%の再生紙」と表示しながら、実際には古紙配合率は「20%」にすぎなかった:
①生長の家本部ISO事務局監修/南野ゆうり著『あなたもできるエコライフ』(2002年)
②生長の家本部ISO事務局監修/南野ゆうり著『あなたもできるエコライフ2』(2004年)
また、本の奥付に「本書の本文用紙は再生紙を使用しています」と表示した本のうち、次の3点は古紙配合率が「0%」だった:
③田崎久夫著『わが家のエコロジー大作戦』(2003年)
④デイヴィッド・スズキ著/柴田譲治訳『生命の聖なるバランス--地球と人間の新しい絆のために』(2003年)
⑤喰代栄一著『魂の記憶--宇宙はあなたのすべてを覚えている』(2003年)
このようにして5点の書籍を並べて分かることは、⑤を除く4点までがみな、地球環境問題を正面から扱った書籍である。そういう書籍だからこそ、森林保護を推進する立場から「古紙」や「再生紙」の表示をしているのである。ところが、そんな“顧客”の意図を知りながら、製紙会社は契約通りに古紙を使わないでいて「使っている」顔をしてきたのである。
上記の本の①には、再生紙のことを「再生紙とは原料に古紙を配合した紙のこと」(p.31)ときちんと説明している。そして、再生紙が「製造工程の中で古紙に含まれるインクを抜く脱墨(だつぼく)という作業があるために、実はバージンパルプだけでつくった紙よりもコストが高く、まだまだ生産量は低いのが現状だ」とも書いてある。つまり、著者と監修者は、再生紙を使うことが却ってコスト高になることを知りながらも「そうしたい」との明確な意思のもとに、「本文は古紙100%の再生紙」という表示を行ったのである。製紙会社は、そういう顧客の意思を踏みにじった。私がもし出版社の社長ならば、こんな製紙会社との関係はさっさと御破算にするだろう。
さて、本題をもっと大きく眺めてみよう。1月31日付の『日本経済新聞』によると、昨年1年間の日本の古紙の輸出量が8年ぶりに減少したという。何となく「えっ?」という気がしないだろうか。1月18日の本欄に書いたように、日本国内の古紙の大部分は中国へ渡るのである。その量が1999年から7年間増え続けていたのが、やっと減少に転じたのだ。つまり、国内でリサイクルされる量が増えたということだろう。同紙はその理由を「製紙原料を確保したい日本の製紙各社が古紙の買い取り価格を引き上げ、中国への流出拡大を食い止めた」からだと書いている。あぁ、もっと早くしてほしかった、と私は思う。製紙会社の環境意識が、社会より1歩遅れていたのである。また、記事には「製紙大手が…(中略)…新聞古紙などをパルプにする設備を増強し始めたことが背景だ」とも書いてある。だから、一時的な“気まぐれ”ではないようだ。
製紙各社は今回の失態を大いに恥じ、今後は社会と地球環境に真面目に配慮した活動を展開することで、名誉挽回をはかってほしい。
谷口 雅宣
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
「恥ずべき事を恥じず、恥ずべからざる事を恥ず、邪の思いを抱く人は悪しき所に至る」の言葉通り製紙会社各社は報いを受けました、イスラムの慈悲あまねく慈愛深き神は悔悟し同じ過ちを犯さないならば全て水に流し許して下さる寛容で慈悲深いお方(万教帰一)とありますから肝に銘じ"神商"に徹して頂きたいと思います。
投稿: 尾窪勝磨 | 2008年2月 3日 11:44
再生紙だけではなく、大豆油インクの偽装も発覚しました。真面目に多くの国民がエコに関心を持ち、また地球温暖化防止に少しでも貢献しようとしている国民の純粋な心に水を差す行為に憤りを感じます。中国の農薬問題よりも日本の企業こそ襟を正すべきであり、社会的制裁も必要だと思います。
投稿: 久保田裕己 | 2008年2月 5日 00:27
久保田裕己さま:
ご意見に同感いたしましたので、コメントさせていただきます。
2月4日に報道された大豆油インクのニュースに、少なからず驚きました。
数年前、興味があり、米国大豆インク協会へ「遺伝子組み換え大豆」の使用について
問い合わせたところ「使用はしていない」旨の丁寧な返信をいただきました。
その事を自分は知人に知らせ、「大豆油インク」の使用を積極的に推奨してしまいました。
責任を感じています。
しかし、今回の紙やインクの偽装問題は、電子化促進への基礎資料になるとも考えられます。
また、正しい情報を提示してくださっているこのブログに対して、信頼感が一層増しました。
今後、より多角的に物事を考慮していきたいと思います。ありがとうございました。
----
投稿: 川部美文 | 2008年2月 5日 21:16
「人の嘘は我が嘘となる」と言う言葉がありますが本当に真実を有りの儘に見ると言う事はなかなか難しい事ですね、「衣、食、住みんな揃った偽商品」と言う川柳が出る位ですから笑ってしまいます、故社長は100m表示に90-110mの許容範囲知ったある社員が「許可されているのなら90mにすれば膨大なコスト削減、利益増大になります」と進言した所「時間の経過で僅かでも足りなかったらどうする!君の愛社精神は間違っている!110m入れろ!」と一括したと言う話を聞き感心した事を覚えていますが分かろうが分かるまいが一切不正はしない!に徹すれば怖いものは何も無い!神仏さえも怖くないと思うのですが、、、煩悩を離れる事は不可能に近いのでしょうか、、、(泣)。
投稿: 尾窪勝磨 | 2008年2月 6日 16:47