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2008年1月27日

竹皮の弁当箱

 奈良県で行われた生長の家講習会は、好天のなか、県立橿原公苑体育館となら100年会館の2会場で合計7,343人の受講者が参加して下さった。2年前より132人多く、この教区での幹部・信徒の皆さんの日頃の活動と、熱心な推進努力が推し測れるすばらしい会となった。私の講話に対する質問も19枚と多く出て、受講者の宗教への関心が深いことが分かった。時間の関係で、そのうちの半分も答えられなかったことが心残りである。

 講習会後、近鉄の橿原神宮前駅から京都へ出て、新幹線で東京へ向かった。京都駅で夕食の駅弁を買ったのだが、その際、「21世紀出陣弁当」というのを選んだ。名前が面白いのと、竹皮を使った容器に惹かれた。また、名前の横に印刷された「駅弁コンテスト大人の部グランプリ受賞」という宣伝文句も気になった。「グランプリとはどれほどの味か?」と思ったのだ。

 京都駅の新幹線ホーム側の弁当売り場には、実に多くの種類の弁当が並んでいて、選ぶ側も戸惑うほどだ。それぞれの弁当の脇には、中身を示すためのプラスチック製のイミテーションの食材を詰めた弁当もある。が、それらを見ていると、「中身はみな同じ」という印象を受けるのである。恐らくその理由は、イミテーションの食材の色と形が同じだからだ。違うのは、それらの食材をどんな形の箱に、どのような配列で並べ、それにどのような名前をつけるかという点だけ……そんな印象を受けた。もちろん仔細に調べれば、野菜が多いものや、揚げ物や練り製品が多いものなど、細かい違いはあるに違いない。が、いずれにしても「大量生産品だなぁ~」という印象は拭えない。
 
 私は、京都駅の弁当に文句を言っているのではない。むしろ、その逆である。これだけ多様なものが、これだけ大量にある日本は、きわめて恵まれた国である。中東のパレスチナのガザ地方とエジプトの国境線上に建っていた、鋼鉄製の壁が爆破された話を思い出した。理由は、パレスチナの過激派の攻撃に業を煮やしたイスラエルが、イスラエル側の境界線の通行を制限したからである。一種の経済封鎖だ。そこで、食料や水や日用品に窮乏したパレスチナの住民たちが、エジプト側に物資を求めてなだれ込んだのだ。爆破自体は、過激派によるものと思われる。エジプトは軍隊を派遣したが、殺到するパレスチナ人を無理に止める行動はしなかったという。

 そんなことを思い出しながら、私は数分間隔で精確に運行される新幹線に乗り込み、豊かな食材を詰めた「21世紀出陣弁当」を開いたのである。日本での「出陣」とは、もちろん戦いに行くことではない。何か未来への“夢”を秘めた「21世紀」に向かって、栄養を補給するためのおいしい弁当、という程度の意味だろう。出陣でなく、「出発」でも「出帆」でも「出航」でもいいのだろうが、かつての戦国時代を思わせるような勇ましい言葉を使った方が、働き盛りのビジネスマンには魅力がある……そんなマーケティング戦略が透けて見える。
 
Bentobox  弁当はおいしくいただいた。食べ終わってから、竹皮を編んだその容器をしげしげと眺めた。大変よくできているのである。竹皮を幅1.5センチほどのテープ状に切ったものを編んで、箱全体を作っている。手触りが軟らかく、弾力もある。弁当箱の端の型枠部分には、強度をつけるために薄い竹材が鶯色の糸でしっかり結わえつけてある。普通の駅弁の箱に使われるような厚紙は、一切使われていない。これだけの容器を使っていて、通常の駅弁と同じ価格(1000円)で販売できるとしたら、弁当箱の製造は国内ではありえない。だから弁当箱は中国製、というのが私の結論である。では、弁当の中身は? と次に考えたくなる。
 
 今の日本の“豊かな生活”は、その多くを人件費の安い中国などの外国の労働者に頼ることで実現されているのである。それによって「粗悪品が出回る」とか「衛生基準が満たされない」などのマイナスな面も出ているが、全体的には国内の物価を下げ、若年労働者の不足を補っているのだろう。竹皮編みの弁当箱から、今日のグローバル社会の側面を見たような気がした。

 谷口 雅宣

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コメント

何はともあれ、様々な問題を抱えているとは言え、現在の日本は非常に恵まれていると思います、食、衣、住、治安の心配がほとんど無いのですから、しかも多様性に満ち満ちています、動物的な本能剥き出しの血生臭い殺し合いの戦争さえ無くなればこの地球は人間にとって無限の宝庫に満ち溢れています、地球上から"戦争"さえ無くすれば、そして経済、スポーツの"競争"文化交流に徹して協調して行けば、全民族、全ての人々はそれぞれ個性を開花させながら豊かで生き生きと生きて行けるものと確信しています、戦争には必ず一部指導者の利己、我と言う原因があります、原因を取り除く為には各国指導者のの意識の向上が一番なのですが時間が掛かりそうです、やはり"強い国連"の確立が必要であると考えます。

投稿: 尾窪勝磨 | 2008年1月28日 12:54

雅宣先生・純子先生 奈良教区のためにはるばるお越しくださいまして、本当にありがとうございます 感激いたしました
実は講習会参加者のお弁当も竹の皮でできたお弁当箱にちらし寿司がはいっていたのです!誌友様の(株)柳屋 が特別に作ってくださってます。中身もとってもおいしかったです 「純日本製」 デジカメで写したもののパソコンにうまくのせることができません  残念です! ちなみに こちらは、500円で本物の蟹の身が入ってました

投稿: 桜草 | 2008年1月28日 15:46

谷口雅宣先生

素敵な記事とお写真ありがとうございます。

>これだけの容器を使っていて、通常の駅弁と同じ価格(1000円)で販売できるとしたら、弁当箱の製造は国内ではありえない。だから弁当箱は中国製、というのが私の結論である。

私もそう思いました。かつての日本でしたら例えば私の祖父もこうしたものを農閑期にこさえて生計の足しにしておりましたが、現在ではなかなかそうした“技術”を有した方がいらっしゃいませんし、増してや駅弁という、「多く出る」商品の容器にこれを用いてこの価格、というのは国産品では正直考えられません(数量なり短期間限定というのであれば考えられなくもありませんが)。

>今の日本の“豊かな生活”は、その多くを人件費の安い中国などの外国の労働者に頼ることで実現されているのである。それによって「粗悪品が出回る」とか「衛生基準が満たされない」などのマイナスな面も出ているが、全体的には国内の物価を下げ、若年労働者の不足を補っているのだろう。

この点を見過ごす報道が多いように私には感じられます。
何かしら「中国製品は全て駄目」の如き報道並びに風潮がありますが、実は恥ずかしながら私にも多かれ少なかれそれに乗じていた点がこれまでにありました。『日時計主義とは何か?』を拝読し、その結果そうした自身を反省させていただきました。

投稿: 長瀬 祐一郎 | 2008年1月28日 17:13

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