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2008年1月 8日

環境運動家の危機感 (3)

Planb3_m  アメリカに住む友人からレスター・ブラウン氏(Lester R. Brown)の新著『Plan B 3.0: Mobilizing to Save Civilization』(プランB第3版--文明を救うための総動員=写真)が送られてきた。すでに邦訳されている『プランB 2.0』(ワールドウォッチジャパン刊)の内容を改訂したものである。後者の本の内容については2006年5月22日の本欄で紹介しているが、今回の改訂版は再生可能の自然エネルギーを基礎とした文明への転換を、より具体的に、より危機感をもって推める内容である。副題にある「mobilize」という英語は、戦争のために産業や資源、人員などを動員することで、ブラウン氏は各国が、それほどの規模と意志をもって地球温暖化を阻止する“臨戦体制”を整えなければ文明の危機が来る、と訴えているのである。『2.0』の英文の副題が「ストレス下の惑星と問題を抱えた文明を救う」であったのと比べると、「文明救済」の方に焦点を当てていることがわかる。この本の著作権表示にある発行年は「2008年」であるから、できたてホヤホヤということだ。

 ブラウン氏は、「はしがき」でこの本の4つの重要な目標として、①気候の安定、②人口の安定、③貧困の撲滅、④良好な地球環境の回復、を挙げている。そして、地球温暖化を最小限に抑えるためには、2020年までにCO2の排出量を80%削減することが必要だとして、そのための詳しい計画を提出している。この計画とは、(1) エネルギー効率の改善、(2) 再生可能エネルギーの開発、(3) 森林伐採の禁止と植林による地上の森林の拡大、という3つの部分からなるものだ。人類は、これらを実現するための技術をすべてもっているから、今やらねばならないのは、「それを実行する政治的意志を築き上げること」(to build the political will to do so)だと訴えている。このあたりの認識は、『不都合な真実』の中でアル・ゴア氏が言っていることと軌を一にしている。
 
 本の細部についてはまだ「拾い読み」程度だが、具体的、現実的な方策が数多く詰まっていて面白い。その小見出しの1つに「風力による充電式ハイブリッド車」(wind-powered plug-in hybrid cars)というのがあったので、いったい何だろうと思って読んだ。まるで“未来の車”のように聞こえるが、これは現在、トヨタなどが公道での走行実験を進めているプラグイン・ハイブリッド車そのもののことである。「風力によって」という意味は、発電用の風車を大幅に増設していけば、夜間の電力はこれで賄えるから、それによって充電した車は事実上「風力によって」動くことになるという意味である。

 ブラウン氏の試算では、この方法で充電した車の走行コストはガソリン代に換算すると1ガロン(3.78リットル)当り1ドル以下になるというから驚きだ。電池の性能が上がり、容量が増えれば、これによって日常の用途での車の使用はすべて風力によることになるから、現在のアメリカ国内のガソリン使用量を「80%」削減できるという。さらに驚くことは、現在の自動車の車体の金属部分は、コストをさほど上げずにポリマー樹脂に替えることができるから、そうすれば重量が半分になってさらにガソリン使用量は減り結局、現在より「90%」も少ないガソリン消費量で、現在と同じ台数を走らせることができるというのである。

 太陽エネルギーの利用については、この本は「太陽光発電」に加えて「太陽熱利用」の現実性を強調している。その最大の理由は、後者の製品の大幅な価格低下である。ブラウン氏が「最近の最も興奮する展開」として挙げているのは、中国では4千万戸の家庭に太陽熱温水器が設置されたことだ。これは、装置の価格低下によって都市部のもみならず農村部にも「燎原の火のように」広がっているという。しかも、中国政府はこの装置を、現在の1億2400万平方メートルから、2020年には3億平方メートルにまで拡大する計画という。氏の試算によると、現在の中国の家々に設置された太陽熱温水器から生まれるエネルギーは、石炭火力発電所54基に相当するという。ヨーロッパでもこの装置は人気だ。オーストリアでは、全家庭の15%が太陽熱温水器を設置している。ドイツでは、2百万人がこの装置の恩恵のもとに暮らしている。欧州では、このほかギリシャ、フランス、スペインがこの装置の導入を加速化しているという。日本の現状は1100万平方メートルだが、2020年までには8000万平方メートルを楽に達成する、とブラウン氏は読んでいる。
 
 邦訳が出たら、読者にも一読をお勧めする。
 
 谷口 雅宣

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コメント

谷口雅宣先生

 本年もご指導の程、よろしくお願い致します。
 先日1月5日、三村申吾・青森県知事が教化部を訪ねてこられました。突然の知事の訪問にビックリしましたが、玄関先で応接させて頂きました。来館の目的は「年始の挨拶」とのことで、私も「これはチャンス!」とばかり、「環境保全の一層の推進をお願いします…」と申し上げましたら、知事から「これからは風力発電の拡大と地熱発電の推進に力を入れます!」という興味深い言葉が返ってきました。僅か2、3分程度の面会でしたので計画の詳細までは聞けませんでしたが、後に県庁に電話し担当者に訊ねてみましたら、風力の方は2005年の24万kWから2015年までに45万キロワットにまで拡大し、都道府県単位の発電量としては日本一をめざす計画だそうで、一方、地熱は来年度NEDOが募集する「地熱開発促進調査」に応募し、採択されれば八甲田山ろくのボーリングに着手する計画とのことでした。
 世界有数の自然環境を誇る青森県にとって風力も地熱も大変有望だと常日頃から考えていましたので、この度の県の計画発表は私にとって「最も興奮する展開」となりました。
                   竹村 正広 拝

投稿: 竹村 正広 | 2008年1月 9日 11:33

次の大統領選出予備選挙たけなわのアメリカですがこのブラウン氏の4っつの目標をスローガンにしてはどうでしょうかねえ、アメリカ国民は選択しないでしょうか?
それからトヨタのプラグイン、ハイブリット車の走行映像を見させていただきましたが素晴らしいなあ!と感嘆させられます、実用化出来ないのは電池の性能と容量、風力、価格なのでしょうか?ずぶの素人ですがソーラーカーとの併用はどうなのでしょうか?これは全く夢、漫画の世界ですが水(H2O)が燃料(H2とOを車内分離、水素で走り、酸素を排出!)、これなら全てにおいて完璧ですが(笑)残念ながら神仏は設計されてはおられないでしょう(泣)。

投稿: 尾窪勝磨 | 2008年1月 9日 12:23

竹村さん、

 三村・青森県知事の話、いいですね。計画通りいくことを願います。(ひょっとして、選挙が近いということはないのでしょうか?)

投稿: 谷口 | 2008年1月10日 21:25

副総裁先生
 コメント、ありがとうございます!知事選は昨年の秋に終了しており、結果は三村氏の圧勝でした。県財政の建て直しや温暖化防止への真摯な取り組みが、県民に好評のようです。勿論、生長の家として組織的に応援するということはございませんが、信徒の中には知事に御教えを伝えようと努力されている方もいるようです。
 三村氏と会見した中で、「イスラエル製の安価な地熱発電装置が見つかったので、農家に普及させていきたい…」という主旨の発言もあり、興味を惹かれました。さっそく調べてみたら、大分県等ではすでにそれに該当すると思われる装置が稼動しており、幅約16m×奥行き約24m×高さ約8.5mと比較的小型の発電装置で、沸点36度程度の熱で2千kW発電するそうです。副総裁先生より常々お教え頂いている“小規模発電の体制”が現実味を帯びてきた感があり、とてもワクワクしています。計画が具体的になって参りましたら、またご報告致します。

投稿: 竹村 正広 | 2008年1月11日 16:20

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