« アメリカのイラン政策の誤り | トップページ | 鹿児島の息吹 »

2007年12月 7日

バイオ燃料に制限を

 CO2の排出量をゼロと見なせることで、バイオエタノールなどのバイオ燃料が脚光を浴びているが、インドネシアのバリ島で開かれている国連の気候変動枠組み条約の締約国会議で森林破壊の現状が明らかにされるに伴って、無制限のバイオ燃料の利用は温暖化防止にかえって逆効果であることが指摘されはじめた。日本政府は、バイオ燃料にかかる関税をゼロにして普及を促進させる考えのようだが、このことと森林保護とが矛盾する現状では、慎重な対応を願う。
 
 5日付の『日本経済新聞』によると、政府は現在、首都圏などでガソリンと混ぜて売っている「ETBE」と呼ばれるバイオ燃料の関税を、現行の3.1%からゼロにする方針で、それを財務省の審議会が月内にまとめる答申に盛り込み、来年の通常国会で法律改正を行い1年間、暫定的に実施するという。これは、京都議定書の目標達成のための臨時措置なのだろうが、バイオ燃料は種類によっては森林破壊を拡大する危険性があることを忘れずに、慎重な対応を望む。同じ新聞には、世界銀行が設置する森林保護基金に、日本が1千万ドル(約11億円)を拠出することを正式表明したと報じられている。この2つの政策の間に矛盾がないようにしてほしい。
 
 というのも、今日(7日)の『産経新聞』が第1面に掲載している2枚のカラー写真を見れば、現在のバイオ燃料の世界的ブームが現実に何を惹き起こしているかが明白であるからだ。その写真の1つはAPがインドネシアから配信したもので、スマトラ島のリアウ州(Riau)のジャングルが伐採された跡地に、大量の木材が野積みされているのを空から撮影している。この伐採は、木材を日本や中国に輸出するためだろう。もう1枚の写真は、取材記者が陸上から撮ったもので、伐採の跡地を焼き払って、ヤシ油の原料となるアブラヤシの農園にするためという。記事には、こう書いてある--
 
「焼失面積は10キロ四方に相当する約1万ヘクタール。およそ3年にわたり、地元業者による人為的な森林火災が繰り返された結果である。パーム油がとれるアブラヤシの大農園を整備するのが目的だ。真っ黒の地面のあちらこちらから、青々としたヤシの苗木がまっすぐに伸びていた」
 
 上掲のAPの写真は、6日の『ヘラルド・トリビューン』紙の第1面にも載っている。記事を読むと、このリアウ州はスイス1国とほぼ同じ広さで、ここ数年、この地にアブラヤシの農園を造るために、インドネシア政府の支援を受けた10社を超えるパルプ会社や製紙会社が入ってきている。そして、この10年間で同州の熱帯雨林の6割が伐採され、焼かれ、またはパルプの原料として消えていったという。今やインドネシアは、アメリカ、中国に次いで世界第3位の温暖化ガス排出国となっている。
 
 10月8日の本欄にも書いたが、この国から出る温暖化ガスは、森林伐採によるものだけでなく、伐採後の泥炭地の乾燥や、焼畑による泥炭地への延焼の被害が深刻である。日本のCO2排出量が約13億トンなのに比べ、インドネシアは20億トン。このうち森林火災によるものは14億トンで、残り6億トンは泥炭地の乾燥から生じるという。
 
 この問題の解決に役立つとして考えられているのが、「REDD」(森林の消滅と破壊から出る温暖化ガスの削減、Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation)という方法である。これは基本的に、途上国が森林を維持するコストを先進国が支払う制度だ。しかし、合法的に取得された土地の使用を制限することになる一方、違法伐採の取り締まりが難しい点が問題になっている。また、森林の維持によって排出されなかった温暖化ガスを正確に測定するのが難しい。が、何らかの森林維持のための経済メカニズムをつくらないかぎり、インドネシアやブラジルなど広大な森林を抱える国では、森林破壊を防げないだろう。
 
 このREDDの考え方をよく見ると、「自然そのものの価値」を認め、それに値段をつけていることが分かる。だから人類は、温暖化抑制のために結局、“自然資本”の考えを取り入れるほかないのである。
 
 谷口 雅宣

|

« アメリカのイラン政策の誤り | トップページ | 鹿児島の息吹 »

コメント

これは非常に難しい問題ですねえ!!インドネシア、ブラジルにしましても国民の生活がかかっていますから、REDDの方法を実施するに致しましてもバイオ燃料はともかく、先進国は材木を必要としていますからね、森林を維持する経済メカニズムとしましては国連が各国から国力に応じて徴収し、コストを支払って行くしかないのではないでしょうか?いずれに致しましても今後は国連の機能を全ての面で強力で権威ある世界にして行かなくてはならない時代が来ているのではないかと思います。

投稿: 尾窪勝磨 | 2007年12月 8日 12:25

インドネシアの泥炭地の問題について、コメントをさせていただきます。
基本的には、副総裁のご指摘の通りだとは思いますが、
今回も産経の記事の写真で水溜りに植わっているパームヤシの写真は変だと思います。このような水溜りにパームを植える事は在りませんので、特徴的なところで目に付いたから写真に収められて、報道されたのだと思います。また違法伐採が横行して、焼けの原になったかのような写真も正確ではないと思います。
この場所は、訪問したわけでは在りませんが、パームオイルのプランテーションを造成するために伐採して、火入れをしてこのような状態になってしまったのだと想像できます。
農業情報研究所(WAPIC)のこの件に付いてのコメントの中で以下の部分が正確にこの問題を捉えていると考えていますので、ご参考までにその部分をコピー添付させていただきます。

「泥炭地破壊、毎年の森林火災とそれによる煙霧が生み出す経済的・健康的・環境的損害は、恐らくパームオイルが生み出す経済的・健康的・環境的利益をはるかに上回るだろう。
しかし、目先の経済的利益を追うパームオイルプランテーションの無謀な開発が泥炭地と森林の破壊をますます助長することになりかねない。
それを止めることができるのは、木材や紙、パームオイル、エネルギーの消費を減らすとともに、森林地域住民に持続可能な生活手段をもたらすのを助ける国際社会と我々自身の行動だけかもしれない。」

我々日本人は、いまだに製品の形であれ、天然の木材を輸入して利用しています。
パームオイルはマーガリンなど食用油としてや洗剤の原料として日本にも多く輸入されています。
バイオ燃料としてはこれからだと思いますが、大変なブームになってきて、わたしどもが植林をしている地域の借地料が大幅に上昇してきて困るほどです。

いずれにせよ天然の木材もパーム油も販売できる、購入者がいるから違法伐採も大規模なプランテーション用の焼畑も収まらないのでと思います。

購入する側にも同様の責任がある事に想いをはせて、自分たちに出来る事を考え、行動することが今も止められていると思っています。

私、11月下旬にインドネシアの植林地を訪問した際に、我々の植林地内の放置されている泥炭地(約40ha)に適した郷土樹種で「スンカイ」という樹種が在る事を調べて、今後、この樹種を泥炭湿地に植林するようにしました。
利用できるようになれば、伐採して再植林をしてということで考えています。
わずかな面積ですが、地元民がパームだけでない自然環境と調和した土地利用で生計を立てられればと願っています。

投稿: 宮崎林司 | 2007年12月 8日 15:35

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« アメリカのイラン政策の誤り | トップページ | 鹿児島の息吹 »