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2007年12月11日

牛乳とバイオエタノール

 鶏卵とともに“物価の優等生”と言われてきた牛乳の値段が、30年ぶりに上がるらしい。理由は、バイオエタノールである。この「風が吹けば桶屋が儲かる」式の謎解きも、本欄の読者なら簡単にできるのではないだろうか。
 
 11日付の『日本経済新聞』によると、牛乳の大手メーカー2社(明治と森永)は、来年春に牛乳を平均で3%強値上げする方針を固めたという。飲用牛乳で最大の指定団体である関東生乳販売農業協同組合連合会と明治、森永の2社が来年4月から飲用牛乳の価格を約3%引き上げることで合意したからだ。牛乳の小売価格はここ10年間下がり続けていて、現在の実売価格は1リットル170~180円程度だが、これを契機に来春からの価格上昇の可能性が出てきた。バイオエタノールとの関係は、乳牛のエサ代の上昇だ。同紙によると、この1年でトウモロコシの値段は50%、乾し草の値段は10%上昇しているという。トウモロコシは、大産地アメリカでのバイオエタノールへの転用が急速に進んでいるからで、牧草地の農地への転用も進んでいる。牛乳の3%の値上げは、日本人にはあまり痛くないかもしれない。しかし、バター、チーズ、ヨーグルト、アイスクリームなど、他の乳製品の値上げに波及する可能性もある。
 
 私は、今年3月23日5月29日の本欄などで、食品の値上りなど、昨今のバイオ燃料ブームが途上国で好ましくない結果を招いているため、環境運動家のレスター・ブラウン氏(Lester R. Brown)がバイオ燃料の増産の一時停止を提言していることなどを書いた。この食品の値上がりは、依然として続いている。同じく今日の『日経』は、ダイズも小麦も国際価格の上昇が続いて「軒並み記録的な高値を付けている」と伝えている。最近のドル安が、これを煽る形だ。つまり、EU諸国や中国がドル安の今のうちに積極的に米国産の穀物を買い入れているためだ。ダイズは今(穀物)年度の輸出成約量が11月までに前年同期比で8%増え、小麦は同84%増、トウモロコシは36%増というから、相当なものだ。
 
 こんな中で、COP13に合わせてインドネシアのバリ島で開かれた34カ国の貿易担当相の会合で、環境関連製品の貿易を拡大するために、バイオ燃料などの関税を撤廃する案が出され「一致した」という。10日の『日経』夕刊が伝えている。小さな記事で、詳しいことはわからないが、食物と競合するバイオ燃料を世界的に大いに流通させようという考えで「一致した」のならば、あまりいい報せではないだろう。今後も食品の値上がりと森林破壊が続く可能性が高いからだ。(詳しくは、12月7日の本欄参照)

 いいニュースもある。同じバリ島発のものだが、COP13では世界銀行が中心となって、森林破壊防止のために6千万ドル(約67億円)規模の基金を創設することが決まり、日本が1千万ドルを拠出するほか、オーストラリアなど他の先進国も資金援助するらしい。ただし、この額は十分とは言えず、インドネシア政府高官の話では、「地球規模の森林保全には5億~10億ドルの基金が必要」という。が、「よいスタート」ではあるだろう。

 谷口 雅宣

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コメント

良い事悪い事、紆余曲折、前進後退しながらも「万物の動きは常に調和と生長と繁栄と進歩が約束されている」と言う言葉を信じて、物事を静観して行こうと思います。

投稿: 尾窪勝磨 | 2007年12月12日 00:22

バイオ燃料について副総裁のコメントを良く拝見しますが、全てが問題ではないと想います。
食糧にならないジャトルファカーカス(南洋アブラギリ)から作られるBDFや木材からのアルコール製造などについては、どのようにお考えでしょうか。

わたしどもでは、バリ島の一般の樹木や農作物が育ちにくい荒廃林地でこの木を植えてBDFを作るプロジェクトを検討中でので、ぜひ副総裁のご見識をお聞かせください。

投稿: 宮崎林司 | 2007年12月12日 10:38

宮崎さん、

 食糧と競合しないバイオエタノールの開発には、私は賛成しています。そのことは、例えば、今年3月30日のブログ

http://masanobutaniguchi.cocolog-nifty.com/monologue/2007/03/post_7991.html

 にも書いてあります。

投稿: 谷口 | 2007年12月12日 13:27

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