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2007年12月17日

“京都後”への出発点

 インドネシアのバリ島で行われていたCOP13(国連気候変動枠組み条約締約国会議)が終わり、その“成果”について様々な論評が行われている。マスメディアの論調の大勢は、「全員参加でひとまず合意」というところか。参加国をできるだけ多くすることで“世界的潮流”を作っていこうとする考えは理解でき、その目的はある程度達成された。が、「全員が合意できることはそう多くない」ことも事実である。確かにアメリカ、中国、インドという立場が大きく異なる大国を温室効果ガス削減のスタートラインにつけた点は、評価できる。また、温暖化の被害を軽減するための適応基金や森林減少の防止のための制度的枠組みについても合意できたことは「よいスタート」と言えるだろう。が、残念なのは、数値目標についての記述が一切排除されたことだ。これによって、“ポスト京都”の目標値設定やCO2の排出権取引制度の“世界版”の発足は遅れることになるだろう。
 
 それにしても、この会議でのわが国の対応には不満が残る。現在の温暖化を生み出した主要な責任は先進国にあるのは明らかなのに、その責任国中ではアメリカと日本だけが、数値目標の設定に徹底的に反対した。当初の合意文書案に盛り込まれていた「先進国は2020年までに1990年比25~40%削減」という文言だけでなく、次に出た「2050年までに温暖化ガスを2000年より半減」や「今後10~15年以内に世界全体の排出量を減少に転じる」という表現にも、アメリカとともに反対した。いったい日本は米国の“衛星国”なのか、はたまた京都議定書の議長国でありながら、温暖化抑止に反対しているのか、と疑いたくなるほどである。安倍政権時代に打ち出した数値目標など、初めからなかったと言わんばかりの変節ぶりだった。こういう首尾一貫しない外交政策は、世界の国々から信頼されない。来年の洞爺湖サミット(主要国首脳会議)での指導力は、自ずと限定されたものになるだろう。
 
 京都議定書にはない新たな対策も「検討する」ことが合意された。その1つは、上にも触れた世界の森林保護のための仕組みであり、森林保護基金の設置や、伐採しないことで排出権を得る制度の設置である。2つ目は、産業分野別に削減目標を設ける「セクター別アプローチ」という考え方だ。これは日本の財界も推している新しい手法だが、実際に温室効果ガスの削減効果があるかどうかは未知数の部分がある。
 
 ところで、今日(17日)の『日本経済新聞』の夕刊に、「主要国の温暖化ガス排出状況」というグラフが載っている。それを見ると、日本、ヨーロッパ、アメリカの主要7カ国が2005年の時点で、京都議定書の基準年である1990年のレベルからどれほど温暖化ガスを増やし、あるいは削減しているかが一目瞭然にわかる。数字で示すと、ドイツは「-19.5%」、イギリスが「-15.4%」、フランス「-7.1%」、ロシア「-27.7%」、日本「+7.1%」、アメリカ「+16.3%」、カナダ「+54.2%」である。京都議定書の目標について、カナダは早々と「達成できない」と宣言した。アメリカは議定書から離脱したから、目標達成の義務は負わない。議長国である日本は、90年比で「6%削減」の義務を負っているが、すでに7%以上増えている。
 
 こういう状況で来年以降、温暖化抑制問題で世界に指導力を発揮することがいかに困難であるかは、明らかである。業界寄りの自民党政権が続いているかぎり、京都議定書の義務達成は愚か、“ポスト京都”の温暖化抑制努力においても“低迷”し続けるパターンが見えているような気がしてならない。

谷口 雅宣

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コメント

京都議定書の達成義務は今の儘の日本では達成出来ないと思います、それにしましてもEUやロシヤの削減数値は凄いですね!その上「2020年迄に20-40%削減、2050年迄に2000年より半減、今後10-15年以内に世界全体の排出量を減少に転ずる」としたEU案(今回削除されましたが)も凄いですね!これは只の理想ではなく裏付けが有っての発言の様に思えます、京都の時も自信が有ったのでしょう、日本の様に安易に約束だけしたのとは違う様に思えます、アメリカに追随したは別にしましたもその大変さを実感したのが日本ではないでしょうか、2010年見通しで+14%と言う事ですから計+20%と言う事になります、従いまして数値目標に抵抗したのだと思いますが解決策はあるのでしょうか?二次大戦終了前と同様にロシアは相変わらずですねえ、達成不可能の日本が排出権を購入せざるを得ないだろう分かると参加国に加わる、それにしましてもEU、ロシヤは如何なるやり方で削減したのでしょうか?(国土の3分の2が森林地帯の日本では森林増加には限界があります)この点は良く分かりませんが大いに真似ても良いのではないかと思います、近々衆議院の解散があると思いますが民主党ならどう対応するのでしょうか?この辺にも注目して今後の成り行きをしっかり見て行きたいと思っています。

投稿: 尾窪勝磨 | 2007年12月18日 13:50

ありがとうございます。
今回の我が国政府の態度には私も情けなさを感じます。環境問題に関しどこまで本気で考え、取り組んでいるのか?と疑問符が付いてしまいます。
通商や軍事に関しては熱心に取り組む姿勢が見られますが、現代はそれらに加えて環境に関する事にも同様の熱意で取り組むべきである筈なのですが・・
いや、
>>いったい日本は米国の“衛星国”なのか
と思える節では、ブレがないのかもしれませんが。。

投稿: 長瀬 祐一郎 | 2007年12月18日 17:06

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