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2007年12月28日

福田首相が心変わり?

 これは恐らく“よいニュース”には違いないのだろうが、どうもよく分からないことが多い。一部の新聞報道によると、福田康夫首相は、京都議定書後の地球温暖化抑制のための国際的枠組みについて、日本を含む先進国が数値目標を定めることを近く提案する考えらしい。

 27日付の『日本経済新聞』は、首相が「先進国がどういう目標を持つか。やはり何か必要かもしれない」と述べたと伝え、さらに「この日の首相発言は温暖化が主要議題となる来年7月の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)に向け、軌道修正する布石とみられる」という分析を加えた。『朝日新聞』は、この発言からさらに取材を進めたのだろう、その翌日(28日)付の紙面で、「福田首相は来年1月下旬にスイス・ダボスで開かれる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席し、温室効果ガスについて、日本自身の中長期的な削減目標を設定する方針を表明する意向を固めた」と報じた。そして、その具体的な数値については、「来年7月の北海道洞爺湖サミットまでに明示したい考えだ」と結論した。

 このニュースがなぜ分からないかというと、12月17日の本欄で述べたように、2週間にわたってバリ島で行われたCOP13(国連気候変動枠組み条約締約国会議)では、日本は徹頭徹尾、アメリカの意向通りに、国ごとの温暖化ガス削減目標の設定に反対していたからだ。あれから2週間もたっていないのに、福田首相は“掌を返した”のだろうか? もしそうだとすると、いったい何が首相の考えを変えさせたのだろう。この間の新聞報道を振り返ると、福田内閣の支持率が最低レベルに落ちたというのがあったが、それが理由で外交政策や環境政策を変えたのか? もしそうならば、今回の心変わりも、財界やアメリカが再び圧力をかけてくれば、さらに変わる可能性があるかもしれない。それともこういう筋書きは、“戦術”として最初から考えられていたことなのか? この辺が、どうもよくわからないのである。
 
 そう言えば、12月21~22日の各紙は、地球温暖化に関する環境省と経産省の合同審議会が最終報告案で、京都議定書の「6%削減目標は達成しうる」と結論したと報じた。が、目標達成のための追加対策としては、産業界の“自主行動”の強化や“国民運動”という、責任や拘束力のないボランティア行動である点が指摘され、実効性に疑問符が投げかけられていたのを思い出す。この審議会の最終報告案では、「今後すみやかに検討すべき課題」として、①国内排出量取引、②環境税、③新エネルギー対策の抜本的強化、④深夜化するライフスタイル、ビジネススタイルの見直し、⑤サマータイムの導入、の5項目が掲げられていて、私としては、こちらの方がボランティア行動よりも実効的だと考える。“心変わり”の経緯はともかく、首相はダボス会議で新たな数値目標を提案するのならば、この5項目の中から有効なものを早急に導入して、最低限、京都議定書の目標を達成してほしい。
 
 ところで、27日の『日経』は、日本経団連の奥田名誉会長が、温暖化対策を担当する内閣特別顧問に就任したことを伝えている。経団連は長年、温暖化ガス削減の数値目標設定に反対してきたが、そのトップであった奥田氏にどれだけのことができるか未知数だ。記事では、この人事に“政府関係者”は「うるさ型の鉄鋼や電力を説得できる」と期待していると書いている。これは、福田首相の“本気”を示しているのか、それとも“ポーズ”を示しているのかは、7月の洞爺湖サミットまでに判明するだろう。
 
 ノーベル平和賞を受賞したIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)のラジェンドラ・パチャウリ議長は、28日の『朝日』のインタビュー記事で、7月のサミットへの期待を次のように語っている--「日本では洞爺湖でG8サミットが開かれる。(中略)各国の指導者は大幅な削減の約束をしてほしい。G8の宣言はその後の国際交渉を助けるものになる。議長国の日本にとっては、自国や国際社会がとる新たな対策を表明するいい機会になるだろう」
 
 つまり、現在の温暖化に最も責任がある先進国が温暖化ガスの大幅な削減を約束すれば、中国やインドも“京都後”の数値目標に乗ってくる、という予測だ。だから福田首相は、再び心変わりすることなく、この路線を真っ直ぐ進んでほしい。
 
 谷口 雅宣

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コメント

"風見鶏"と言われた政治家がいましたが自らの信念に沿って真っ直ぐに突き進むと言う事は政治の世界ではなかなか難しい様に感じられます、私の知る限りでは小泉さんがそれに一番近いと思いますが靖国の様に余り拘りすぎると正論を吐いたとしてもギクシャクした関係になる事もありますので智慧を働かせながら信念を貫いて行く姿勢が必要だろうと思います、この難しい世界情勢や政局の中で福田さんの叡智に期待します。

投稿: 尾窪勝磨 | 2007年12月31日 17:05

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