オーストラリアが議定書に参加
アメリカとともに京都議定書から離脱していたオーストラリアが、同議定書を批准した。4日付の新聞各紙が伝えている。総選挙で11年ぶりに政権交代をはたした労働党の50歳の党首、ケビン・ラッド氏(Kevin Rudd)が3日、組閣後の首相の初仕事として行ったのが同議定書の批准だった。これにより、同国から批准書が国連に届いて90日後の来年3月には、同国は議定書の正式参加国となり、2012年までに温室効果ガスを90年比で8%増以内に抑える義務を負う。主要な先進国で同議定書に参加していないのは、アメリカだけとなる。ラッド氏率いる労働党は、総選挙の公約として同議定書への参加を表明していたから、これは同国の国民の選択とも言える。うれしい限りだ。
4日付の『ヘラルド・トリビューン』によると、ラッド氏は批准に際して、「これはオーストラリア新政府の最初の公的行為であり、気候変動に取り組むこの内閣の真剣さを示している」との声明を発表した。さらに同氏は、「オーストラリアが京都議定書のメンバーになるという今日の公式宣言は、わが国が国際社会とともに国内で気候変動と戦うための重要な一歩になるだろう」と述べたという。同国は、2050年までに温暖化ガスを2000年比で60%削減することを目指しており、2010年までに排出権取引市場を整備するほか、再生可能エネルギーの利用を拡大する方針だ。
これとちょうど時期を合わせて、同国の北に隣接するインドネシアのバリ島では、2012年で期限切れとなる京都議定書以後の温暖化抑止を目指す国際会議(COP13)が始まった。190カ国近くの国々から、正式参加者に加えて環境活動家やジャーナリストを含む1万人もの人々が集まり、2週間にわたって京都後の条約の枠組みをめぐって意見を戦わすことになる。4日の『日経』によると、この会議では先進国と途上国との間の意見の食い違いが早くも現れている。例えば、パキスタンは温暖化の影響で深刻な被害が出ていることを訴え、「資金援助の枠組みを早く決めてほしい」と要望、多くの島からなるミクロネシアやパプアニューギニアは、「すでに海面上昇で経済活動が困難になっている」と窮状を訴えたという。また、中国やメキシコは「先進国から温暖化ガス排出削減の技術を移転することが効果的」と強調したという。つまり、途上国側は先進国による資金援助と技術移転を求めている。
しかし、先進国は、財政的負担をできるだけ避けたいし、技術移転を進めれば、経済成長著しい中国やインドなどの国々が競争力をもつことは明らかだ。“地球益”とも言うべき国際社会全体の利益と、各国の“国益”との調整をどう行うかという難しい問題がここにある。従来の国益優先だけの国際政治のやり方では、温暖化問題は解決できないという認識が、参加各国にどれだけ共有されるかで会議の成否は決まっていくだろう。今後の交渉の行方を注目していこう。
谷口 雅宣
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コメント
オーストラリヤの選択は国民の選択と言う事ですね、今後の交渉と同時進行でアメリカを如何に参加させるか?の工夫、働き掛けが重要なポイントになると思います、ゴアさんが大統領に出馬出来ない現状ではなかなか難しいとは思いますが、アメリカ国民の英断に期待します、生きるか死ぬかの産業界に於いて、利益の追求は勿論必要ですが目先だけでなく、理不尽との思いを断ち切り、再分配の感覚で排出権を購入し、発展途上国への資金援助、技術移転とすれば共に繁栄するのではないか?スポーツの世界でも進んだ国のコーチ達がライバル国に行きレベルを上げ共に切磋琢磨して高度な競争をして共に進化しているではありませんか、福田首相の若者(低開発国)が希望の持てる国(地球)造り、共生(共存共栄)社会(世界)の実現を目指して各国のトップ指導者達は働いて頂きたいと思います。
投稿: 尾窪勝磨 | 2007年12月 6日 11:26