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2007年12月14日

日本の犯罪は減っている (3)

 本欄でこの題を使うのは、これで3回目だ。初回は2005年11月10日、2回目は2006年12月15日だった。読者は、この日付の規則性に気づいてほしい。このところ毎年この時期になると、警察庁はその年の1~11月の全国の犯罪統計を記者発表するようになった。私は、その数字を新聞紙上で知って、そのつど本欄で読者の注意を喚起するようにしてきた。なぜなら、多くの日本人は、戦後の日本社会はどんどん悪くなっているとの印象をもっていて、その前提のもとに考えたり、行動していると思われるからだ。この印象は、本欄で何回も書いてきたように、第1にマスメディアが醸成してきたものだ。そして第2には、私たちの「悪を認める」心のクセがつくり上げてきたと考えられる。事実は必ずしも「小説より奇」ではなく、私たちが「犯罪小説を好む」だけかもしれない。

 今日(14日)付の『産経新聞』に載った記事が、全体をよくまとめている--「今年1~11月の刑法犯の認知件数は、前年同期比7.0%減の176万1993件となったことが13日、警察庁のまとめで分かった。年間では5年連続の191万件台と見込まれ、平成9年以来、10年ぶりに200万件を下回る見通し」。認知件数の大幅な減少の理由について、吉村博人・警察庁長官は「全国警察による街頭犯罪抑止対策や、自治体や防犯ボランティアによる取り組みが大きく寄与した」(『日経』)と分析しているようだが、何となく納得しきれない。もちろん、そういう地道な努力も奏功しているに違いないが、すると昨年はそういう努力が十分でなかったということか? 
 
 罪種別の認知件数を見ると、「重要犯罪」と呼ばれるものが「8.7%減」の1万5760件で4年連続で減少した点が注目される。この内訳は、殺人が6.8%減の1119件、強盗が10.4%減の4207件など、略取・誘拐(10.5%増)を除きすべて減少した。また、窃盗も7.0%減の131万7309件、詐欺は8.6%減の6万2284件、その他、車上狙いが19.5%減、ひったくりが11.4%減となったが、暴行は3.8%増の2万9502件だったという。また、社会の高齢化にともない、高齢者の刑法犯の検挙人員が増加しているのが、気になる。この数字は、昨年同期比で4.5%増の4万4928人だが、罪名は万引きが過半数を占めるというから、経済的な事情が反映しているのかもしれない。
 
 私は、7月14日の本欄で今年1~6月の犯罪統計を取り上げ、全体の認知件数が昨年同期比7.1減で、「凶悪犯(殺人や強盗など)が6.8%、詐欺犯が13.4%、窃盗犯が7.5%、粗暴犯が3.4%、それぞれ前年同期で減っている」と述べ、通年でも「5年連続減少」の可能性が大きいと書いた。予想通りの結果になったことは、嬉しいかぎりである。刑法犯の認知件数が戦後のピークを打ったのは2002年だ。海外からの人口流入はこの後も続いているはずだから、その中でも犯罪が減少し続けていることは大いに注目すべきことではないだろうか。比較文化論や社会学的考察をきちんと行えば、日本社会の安全性を海外へも普遍化できるかもしれないと考えるのは、“手前味噌”すぎるだろうか?
 
 谷口 雅宣

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コメント

副総裁先生

ありがとうございます。
犯罪の増減は失業率に大きく関与しているようで
す。
それと同時に自殺者の増減も失業率に大きく関与
しているようです。
貧しさの実感はやはり仕事についているかいない
かが大きいように感じられます。
よく言われる言葉に終戦後の昔の貧しさに比べれ
ば今の貧しさは天国だ。と言われますが貧しさの
実感は少し前のふところ具合に比べてなのです。
そのような時に生長の家のような御教えに出会え
ば、苦労を苦労と思わず、貧しさを貧しいと思わ
ずに日時計主義で生きて行けるはずと思います。
そういう意味でも、一人でも多くの方に生長の家
をお伝えすることだと思っております。
何か優等生的なコメントになってしまいました。

投稿: 佐藤克男 | 2007年12月15日 09:13

何時も偏らない情報提供有難う御座いますー
日本が世界で類を見ない程、安全な国である事は実感していますが数字にもキチンと出ており、状況はまだまだ良くなって来ているのですね、未来を担う若い人達が正社員として働けず派遣とかフリーター、アルバイトとか歪んだ産業構造の中でのこのデータは素晴らしい事であり、有り難い事です、資本主義、自由主義国とは言え勝手気儘に放置していては今日の様に若者に希望の持てない状況になってしまいますのでこの点は政治の力に期待します、さらに心の貧困を幼少から教育(人間の価値を学力に置かない)に依って足るを知り、信頼ある人間創りに成功したならば日本の繁栄と安全性は世界から驚異の目で見られ、海外でも普遍化出来ると思います、これは肯定的理想です。

投稿: 尾窪勝磨 | 2007年12月15日 15:42

 私は職場の休憩時間にワイドショーで取り上げる暗いニュースの話題になった時は、「日本の犯罪は減ってるのよ!日本は捨てたもんじゃないのよ!大丈夫だよ!」と明るく語っています。友人達の目から安心の光を見つけると喜びと生きがいを感じます。

 毎日のように谷口雅宣先生に世界の情報を日時計主義の目で解説して頂いているおかげです。ありがとうございます。

投稿: 酒井幸江 | 2007年12月15日 23:25

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