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2007年12月23日

バイオ燃料の“光明面” (2)

 前回の本欄では、バイオ燃料の種類とそれぞれの違いを概観したが、今回はそれを利用するメリットを考えよう。列挙してみると--

①燃やしてもCO2の増加とならない。
②石油燃料と混合することで有毒物質の排出が削減できる。
③農家の所得増進と農村の経済振興に貢献。
④生産地の多角化・多様化により、エネルギー供給が安定化する。

 などが考えられる。
 
 ①のメリットは、すでにいろいろな所で語られているから、ここでは最小限の表現にとどめる。前回書いたように、この点で重要なのは、バイオ燃料の製造に使われるすべてのエネルギーをきちんと“製造コスト”の中に入れ、さらに燃料の輸送・販売に必要なエネルギー量も“販売コスト”として足し上げたうえで、「CO2の増加とならない」かどうかを判断しなければならないということだ。例えば、トウモロコシを生育させるのに肥料や水を使ったり、大型の工作機械を使ったり、遺伝子組み換え品種を使う場合は、それらの過程中に石油起源のものが含まれる場合があるから、注意して計算する必要がある。沖縄のサトウキビを原料とするエタノールを使う場合は、サトウキビの生産地周辺での利用は効果が大きいが、これを本州や北海道で利用することになると、輸送のために化石燃料を使うことになるから、メリットは小さくならざるを得ない。この点で、ブラジルからの輸入には慎重な検討が必要だろう。

 ②のメリットは、エタノールが燃料の添加物として使われてきたことと関係がある。バイオ燃料を石油燃料と混合させることで硫黄酸化物、粒子状物質、一酸化炭素の排出を抑えることができる。だから、発展途上国などでは、この利用により都市部の大気汚染の緩和や、有毒な鉛を含む燃料添加物の廃止などに役立つことが考えられる。

 ③のメリットは、アメリカやブラジルではすでに明確な形で出てきている。ワールドウォッチ研究所によると、「エタノール業界は、アメリカでは20万人近く、ブラジルでは50万人の雇用を直接的に創出しているとみられる」というから、間接部門を含めた経済効果は相当のものだろう。特にアメリカでは、国の補助金と石油の値段の高止まりによって、エタノール生産が収益源となっているので、工場(醸造所)の増設が急ピッチに進んでいる。そして、原料であるトウモロコシが値上がりし、農家の収入も上がっている。アメリカの場合、比較的少数の農家による大規模経営が行われているから、収入の増加も急速である。

 ここで問題なのは、単一種の大規模栽培が生態系に好ましい影響を与えないことだ。特にアメリカでは、遺伝子組み換え種のトウモロコシが普通に栽培されているから、その影響は未知数だ。日本では土地や農家の規模、遺伝子組み換え種への抵抗感などから考えて、これと同様の政策を行うことには無理があるだろう。しかし、イネ藁、イネ籾、竹、廃材等を原料としたバイオエタノールの生産は、農業や林業の振興、山林の整備、エネルギー自給率の向上などの面から、非常に有望な手段だと私は考える。
 
 ④のメリットは、③とも関連する。化石燃料とバイオ燃料の大きな違いの1つは、前者の生産地が世界のごく少数の地域に遍在しているのに対し、後者は(太陽エネルギーの産物であるから)、事実上、世界中で生産可能である点だ。エタノールの別名はエチルアルコールだから、理論的には酒の醸造技術があれば、エタノールの生産は可能である。だから、もし大量生産の技術が確立すれば、政情不安定な一部の国々の恣意的な操作で市場が混乱することなく、自国での安定供給が可能であり、不足した場合は国際市場からの入手も比較的容易になるだろう。もちろん、無秩序な森林伐採や開発行為は防がねばならないが、草木などどこにでもある“雑草”の類を液体燃料に変えることが技術的に可能となれば、太陽光発電がそうであるように、エネルギーの分散生産、分散利用が可能となり、都市と地方の格差是正、エネルギー自給の道にもつながるかもしれない。
 
 以上、「よいこと」ばかりを並べてきたが、前にも書いたように、バイオ燃料の開発にはデメリットがある点も十分に留意すべきである。しかし、総合的に考えると、私はこの方向への社会の進歩は、長年の日本経済の停滞をも打破するような潜在力と、明るい可能性を秘めているような気がしてならない。
 
 谷口 雅宣 拝
 
【参考文献】
○クリストファー・フレイヴィン編著『地球白書 2006-07』(2006年、ワールドウォッチジャパン刊)
○クリストファー・フレイヴィン編著/福岡克也監訳『地球環境データブック 2006-07』(2007年、ワールドウォッチジャパン刊)

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コメント

情報有難う御座います
食料を犠牲にする事なく、エネルギーの自給、安定供給、しかも脱石油ですね、農家(低開発国)から都会(先進国)へエコエネルギーが都会から農家へ文明の利器が、、この様な経済活動が可能になれば正に夢の様な話しです、しかし松坂選手は大リーグ入団で「夢は夢で幻です、私は夢ではなく実現可能な目標でした」と話していました、正に実現の可能性が見えて来ています、万物の動きは常に調和と生長と繁栄と進歩が約束されている!と言う言葉にますます確信が持てる様になりました。

投稿: 尾窪勝磨 | 2007年12月24日 18:41

副総裁先生

ありがとうございます。
先生、私はいつも

≪①燃やしてもCO2の増加とならない≫

これが引っかかるのです。
燃やせばCO2は必ず出るはずです。
木材であれば、木造家屋に木を使えばその家が利用されている間はCO2は出ませんが、一旦燃料になればCO2となります。

エタノールも同じです。
それがカウントされないのは理解できないのです。

投稿: 佐藤克男 | 2007年12月25日 23:11

佐藤さん、

>>燃やしてもCO2の増加とならない。

 「増加」量を測定する際、どの時点のCO2量と比較するかによって、「増加する」「増加しない」の判断が変わります。京都議定書では、植物を燃やしたり、植物の腐敗によって発生するCO2は、「もともと大気中にあったものが植物の体内に一時的に固定された」と考えるようです。ですから、植物を燃やせば確かにCO2は排出されますが、それは「もともと大気中にあったCO2」だから「増加」ではない、と考えるのです。

 これに対し、化石燃料を燃やせば、何十万年も地中に固定されていた炭素が、“新たに”大気中に排出されるから、「増加する」と考えるのでしょう。

投稿: 谷口 | 2007年12月25日 23:56

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