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2007年11月18日

地球温暖化対策を急ごう

 国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の総会を締めくくる統合報告書が決定し、新聞各紙はその内容を大々的に伝えている。この報告書は、今年相次いで発表された①自然科学的根拠、②影響と適応策、③緩和策、に関する3つの作業部会の報告書を統合した内容のもので、京都議定書以降の地球温暖化対策を構築する基礎となるものという。今回新しく報告書に盛り込まれたものの1つに、地域ごとの温暖化による被害予測がある。18日付の『産経新聞』が、それを次のようにまとめている:
 
[アフリカ]2020年までに最大2億5千万人が水不足に直面、飢餓が進行する。
[ア ジ ア]洪水と旱魃の影響で、風土病の罹患率と下痢性疾患による致死率が上昇。
[欧  州]2080年までに最大60%の生物種が消失。熱波到来。
[南  米]今世紀半ばまでにアマゾン東部の熱帯雨林がサバンナに変わる。
[北  米]収穫が増える地域もあるが、地域にばらつき。21世紀中に熱波の回数増加。
[極  地]積雪、海氷量の変化でシロクマなどの哺乳類、渡り鳥などに影響。
[島 嶼 国]海水面の上昇により浸水、高潮でインフラを脅かす。
 
 『朝日』は18日の紙面で、報告書が「今後20年から30年間の温室効果ガスの排出削減努力と、それに向けた投資が、より低い濃度でガスを安定させるうえで大きく影響する」と述べていると伝え、温暖化への対応策について、「炭素に価格をつけることで大きな削減が可能」であり、「市場メカニズムの範囲を拡大すればコスト削減や環境効果に役立つ」と書いている。これは「排出権取引」や「炭素税」の導入のことだ。そのほか、効果的な削減策としては、原子力発電、再生可能エネルギーの利用、CO2の地下貯留、ハイブリッド車、バイオ燃料の普及、省エネ技術の拡大などを、報告書は挙げているという。

 これらは皆、すでに本欄で何回も書いたことだが、要するに、あらゆる仕組みと技術を使って温室効果ガスの削減に取り組まなければ、被害はますます拡大するということだ。
 
 バングラデシュを15日夜に襲った大型サイクロンの被害が伝えられているが、このような暴風雨の巨大化も、温暖化の影響の1つだと指摘されてきた。このサイクロンは「シドル(目」と名づけられ、強風域は同国をすっぽりと包む大きさで、5~6mの高波と、秒速60m以上の暴風で家屋を倒壊させ、多数の死傷者を出したようだ。18日の新聞報道では、同国政府が確認した死者の数は「1723人」で、地元のテレビ局は死者の数を「少なくとも2千人」と伝えたという。
 
 そんな中でも、日本での温暖化対策に新しい展開があったことは、嬉しい。18日の『日経』によると、日本の大企業16社が協力し、大学や政府機関とも協同してバイオエタノールの開発と増産に力を入れることになったそうだ。しかもこの燃料は、食料とは競合しない稲ワラや籾、植物性の建築廃材などから作るという。どの程度の量かというと、年間のガソリン消費量の1割に当たる600万キロリットルを、2030年までにバイオ燃料に置き換える方針という。現在の国産バイオエタノールは、最も条件のいいサトウキビ原料のもので1リットル140円ほどのコストがかかるらしい。しかし、植物性廃材を使うと「リットル100円」まで下がるという。これに新しい技術を開発して、2015年までに「1リットル40円」までコストを下げるのが目標らしい。

 原料として考えられているのは、年間700万トンが廃棄される稲ワラや、同140万トンが利用されない建築廃材など。参加企業は、新日本石油、トヨタ自動車、出光興産、味の素、三菱重工、三菱農機、三井造船、明治製菓、月島機械、東レ、王子製紙、ヤンマー農機、日揮、ジャパンエナジー、三菱化学、三井化学の16社。大いなる健闘を祈る。
 
 谷口 雅宣
 

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コメント

地球温暖化、石油資源の枯渇と言う難問解決の為に食料と競合しないバイオエタノールの生産が稲ワラ、籾、植物性建築廃材で可能となる新しい技術が開発されたと言う事は素晴らしい事です、まだまだ初歩的な段階でこれから不必要な他の様々な物で可能となり、近い将来「石油資源からの脱却、自然エネルギーの完全利用」に成功したならばエコエネルギーの循環型地球が実現し、人類にとって光り輝く栄光の未来が開けて来る、人類は必ず成功させるものと確信致します。

投稿: 尾窪勝磨 | 2007年11月19日 01:41

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