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2007年11月14日

北海道の観光客

 11日の本欄で、北海道でのシカとクマの問題に触れたが、この問題に共通する原因は「人」である。北海道の自然の中に「人」が入ってきたことで、シカの天敵であるクマやオオカミが減った。だから当然、シカが増える。そして、人間が減ればクマが増えるから、結果的にシカは減るだろう。あまりにも簡単な論理なので、あきれた読者もいるかもしれないが、基本的にはそういう関係が成り立つと思う。ところが人間は、自然界を自分たちのものだと考えているから、この基本的関係にお構いなく、人を減らすことは経済活動が縮小するからマズイと思い、あらゆる方法で人の流入を図ろうとする。

 私は今、北海道の人々を批判しているのではない。人間は一般的にそう考える、という話をしているのだ。本州その他の地域に住む人たちも、昔は皆、これと同じ考えで動物を追いやり、自然を“我がもの”として今日に至っている。北海道は本州などと比べ“開発”が遅れたため、単位面積当たりの人口が比較的少ないから、まだクマやシカが多くいて、この問題が顕著になっているにすぎない。人とシカとクマとの葛藤--これは「人」を導入することで解決できない問題である。ただし、野生動物がすべていなくなることが“解決”と考える場合は、もちろん別だ。

 生長の家の講習会を北海道でやるのは、先日の小樽市が今年最後だった。北海道各地を旅して得た今年の印象は、「中国人が多い」ということだった。そのことを小樽市で話題にしたら、台湾からの観光客が増えている、と教えてくれた。この現象は、台湾の経済発展とともに自然に現われたというよりは、道自身が経済活性化のために外国からの観光客誘致に熱心なのだという。11日付の『朝日新聞』が伝えている。
 
 それによると、北海道を訪れる台湾人観光客は5年間で倍増していて、2006年は26万7900人だった。これに続いて韓国からは13万3850人、香港が8万6050人、オーストラリア2万2950人、シンガポール1万8950人、中国1万7350人、アメリカからは9700人だった。今年は9月に、高橋はるみ知事が自ら台湾を訪問して北海道観光をPRし、さらに道路交通法改正によって、台湾の自動車免許が日本でも通用することになった。それに「四季の変化」と「豊かな食物」が台湾にはない魅力として加わった。ということで、台湾の人にとっては、広大で冷涼な北海道の自然は、今や「国内旅行感覚で行ける北ヨーロッパ」なのだそうだ。
 
 北海道は外国からの観光客だけでなく、本州からの“定住者”誘致にも熱心なようだ。13日付の『朝日』は、“団塊世代”の大量退職を契機に、道内各市町村が知恵をしぼって移住者を募っている様子を伝えている。それによると、室蘭市、紋別市など道内で誘致に力を入れる60の市町村は「北海道移住促進協議会」を結成して、昨年から“移住候補者”の現地での生活体験のために、職員住宅などを週単位、月単位などで安く貸す試みなどを始めている。これによって昨年度は417人が39市町村に宿泊し、今年度は9月までに423人が宿泊したという。このような行政側の熱心な誘致活動により、昨年度は41市町村に123件273人の移住があった。ベスト10は、①函館市(25人)、②弟子屈町(20人)、③八雲町、当別町、浦河町(19人)、⑥東川町(13人)、⑦黒松内町(11人)、⑧小樽市、室蘭市、長万部町(10人)、だった。

 しかし、道内で人口が増えているのは札幌市などごく少数で、他は過疎化と高齢化にともなって人口は急減し続けている。日本全体の人口が減少する中で、冬の厳しい北海道だけ人口が増加するとは考えにくい。ということは、現在のレベルの経済活動を維持するためには、海外からの観光客誘致が唯一の手段ということなのだろうか? 政府が「観光立国」という標語を唱えだしたことの意味も、このへんにあるのだろう。
 
 谷口 雅宣

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コメント

副総裁先生

ありがとうございます。
私は北海道出身(函館近くの森町)ですが帰るたびに台湾人の多さには驚いておりました。5年間で倍増とは凄いことですね。

私自信、少子化は自然の流れで人間が調整することと違うような気がしておりましたが、いかがなものでしょうか?

ましてや政府が少子化に真剣に取り組むなどは感心しません。
少子化を止めるのではなく、少子化になるからこうしようと少子化になった場合に困ることに対策を打つべきだと思っております。

北海道が団塊世代を招聘しているとの事ですが、私の夢は60歳で故郷に帰って故郷のために仕事をすることです。
何をするかは20年前から決めております。
後、2年後ですが楽しみです。

投稿: 佐藤克男 | 2007年11月14日 23:32

私は過疎は良くないとは思わないのですが所得差の問題と人間は人間を求める傾向がある人の方が多いので治世に当たる人は観光誘致や定住者誘致に熱心に取り組まれるのだと思います、これも民主主義国家に置きましては止むを得ない自然の成り行きではないでしょうか?定年後安住の地を求めて日本国内のみならず海外に移住出来る環境化にある日本国民は本当に幸せだと思います。

投稿: 尾窪勝磨 | 2007年11月15日 00:04

佐藤さん、

 函館はいい町ですね。そこで「故郷のため」にUターンするのですか…。もし差し支えなければ、あなたの夢のこと聞かせてください。(近くからいなくなるのは寂しいですが…)

投稿: 谷口 | 2007年11月15日 10:09

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