« ゴア氏とIPCCにノーベル平和賞 | トップページ | ゴキブリの話 »

2007年10月15日

イスラエルのシリア空爆

 9月21日の本欄に「北朝鮮の核関連疑惑」と題して書いたことだが、その月の6日にイスラエルがシリア国内の核関連施設を空爆したことについて、米メディアが続報を流した。9月の時点ではっきりしなかったことが、次第に明らかになってきたのだろう。攻撃対象になったのは、「建設にとりかかった核処理施設」で、「北朝鮮が核燃料を製造するのに使った施設と同型のもの」という内容だ。15日付の『ヘラルド・トリビューン』紙がそう伝えている。今日(15日)、NHKが放映したABCニュース(14日放送)では、この空爆については、イスラエル政府からホワイトハウスに説明のための情報がもたらされ、その中には衛星写真を含む確かな証拠(strong evidence)が含まれていたという。ところがホワイトハウス内には、その情報が「確か」であるとするチェイニー副大統領と、「不確か」だと考えるライス国務長官とゲイツ国防長官の間に、いまだに見解の相違があるらしい。

 隣国の核施設への秘密攻撃という点では、イスラエルには"前科"がある。それは1981年、イラクのオシラクに建設されていた核施設が稼働を始める直前に、イスラエルがこれを破壊したものだ。当時の米大統領レーガン氏は公式にはこの先制攻撃を非難したが、ブッシュ政権はイラク戦争開戦前に、この攻撃によってイラクの核開発を何年も遅らせることができた、と一定の評価をしていた。その時と比べると、今回の攻撃は「先走りすぎなかったか?」という疑問がホワイトハウスの内部にはあるようだ。『ヘラルド』紙の記事によると、今回攻撃対象になった施設は完成までまだほど遠く、したがって兵器に使えるレベルのプルトニウムを生産できるのは何年も先の話だったという。同紙によると、ホワイトハウスとイスラエル政府との間には、今回"証拠"とされたものに対しての議論よりも、その施設への対応について多くの議論があったという。つまり、ブッシュ政権の上層部は今回の攻撃を事前に知っていたらしいのである。

 同紙によると、シリアのアサド大統領は今月に入って、イスラエルの空爆について初めて公式にコメントしたが、それは「イスラエルのジェット機が、使われていない軍関連施設を爆撃した」というものだ。一方、北朝鮮は抗議声明を出したが、イランとシリア以外のアラブ諸国は、イスラエルの攻撃に対してこれまで非難をしていない。ということは、アラブ諸国の間にもシリアの核武装への警戒感が強くあるのだろう。

 そういう中で、北朝鮮の核をめぐる6カ国協議と中東での和平交渉が行われている。後者の問題には、もちろんイランの核開発問題が深く関連している。今回のことによって、アメリカとしては「中東への核拡散はイスラエルの先制攻撃を誘い、アメリカはそれに反対しない」というメッセージを無言で出したことになる。相手はもちろん、イランと北朝鮮の双方だ。
 
 極東アジアには、幸か不幸かイスラエルのような核をもったアメリカの同盟国はいない。その逆に、「核をもった」と宣言している軍事国・北朝鮮がいて、その国はアメリカとは異なる価値観をもった中国に同盟関係によって護られている。2つの地域の状況は相当違うから簡単な比較はできないが、イスラエルのシリア攻撃は純粋に安全保障上の理由だという点は理解されるのではないか。イスラエル国家を公式に否定しているような国が核武装をすることは、イスラエルには容認できないのだろう。では、極東に目を転じれば、北朝鮮を公式に否定している(と同国が認識する)ような国が核武装をする場合、北朝鮮はイスラエルのような先制攻撃をしないという保証はあるのだろうか? 日本の中にある核武装論には、この視点が欠けているように思う。
 
 谷口 雅宣

|

« ゴア氏とIPCCにノーベル平和賞 | トップページ | ゴキブリの話 »

コメント

日本の中にある核武装論(浜田幸一を筆頭に)ですがもし日本が準備をしていたら北朝鮮はイスラエルの様に先制攻撃をするか?安保体制が無くただの独立国であったらやると思います、安保体制が続く限り日本は核武装する必要はない!、只他国やテロリストからの攻撃に対しての国防はしっかりするのは当然の事、しかし北は日本に対して脅しはしても何も出来ない!もし核は別にしてミサイル一発でも打ち込めば国連及び国際世論の非難の前にアメリカによって国家は破滅してしまいますから、、従いまして現在の状況では国防費を増強する必要はない、相手は何も出来ないのですから、、相手と言っても金正日ただ一人ですが、、、。

投稿: 尾窪勝磨 | 2007年10月16日 17:09

 地球上のみんなが、仲良くしたいです。

投稿: 近藤敏子 | 2007年10月17日 14:45

近藤さん
地球上のみんなの願いです、しかし国が仲良くしてくれないのです(泣)どうしたら良いのでしょう?

投稿: 尾窪勝磨 | 2007年10月17日 22:06

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« ゴア氏とIPCCにノーベル平和賞 | トップページ | ゴキブリの話 »