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2007年10月13日

ゴア氏とIPCCにノーベル平和賞

 前アメリカ副大統領のアル・ゴア氏(Al Gore)と国連の気象変動に関する政府間パネル(IPCC)が今年のノーベル平和賞に決まった。ケニアの環境運動家、ワンガリー・マータイ氏の2004年受賞に続き、ノーベル賞委員会が平和と地球環境の密接な関係を認め、かつ訴えている証左である。大いに歓迎したい。平和賞は、ノーベル賞の中でも最も“政治的”な意図が反映するとして論争の的になることもあるが、最近の選考結果は同委員会の一貫した方針を示しているようで好感がもてる。21世紀の国際平和は、地球環境の問題を解決せずして実現は難しいのである。
 
 本欄では一貫して、地球温暖化の原因は人間の活動であるという見方をとってきたが、それに疑問を投げかける意見も一部にないわけではなかった。しかし今回、世界的に権威ある賞の受賞で、世界の趨勢がこの科学的立場を尊重し、人類全体の認識となっていくことが予想される。今日の『日本経済新聞』によると、ノーベル賞委員会は、ゴア氏とIPCCへの授賞理由を「人間の活動によって引き起こされる気候変動の問題を知らしめ、対応策の土台を築いた」からだとしている。最近出されたIPCCの報告書の作成には、国立環境研究所の西岡秀三参与など日本人の研究者30人も関わっているというから、日本の科学者も何がしかの平和への貢献をしているのである。
 
 地球環境問題の深刻化と国際紛争の危険との関係は、表面上はそれほど明らかでないかもしれない。が、13~14日付の『ヘラルド・トリビューン』紙は、ノーベル委員会の授賞理由の一部を次のように紹介して、この関係を描いている。すなわち、地球温暖化により「大規模の人の移動が起こることで地球の稀少資源をめぐる競争が起こる」ことが予想され、「このような諸変化は、地球上の最も脆弱な国家に対して特に大きな困難をもたらす」。そして、「それらの国々の内部や国家間で暴力的な紛争や戦争につながる危険が増す」ことが懸念されているのである。このほか、本欄でもたびたび触れてきたが、高地や極地での氷の融解により洪水や水害が頻繁に起こり、また永久凍土が融けて地盤が緩み生態系が混乱することで、寒冷地の人々の生活が破壊される危険性も増す。そして、氷が融けて利用しやすくなった極地では、そこに未利用地が多いことから、エネルギー等の資源の奪い合いが起こる可能性も増すのである。ツバルやモルジブ等の島嶼国が消滅の危機にさらされていることは、言うまでもない。
 
 一方、ゴア氏と共同で受賞したIPCCのラジェンドラ・パチャウリ議長(Rajendra Pachauri)は、インドのニューデリーで受賞を知り、「信じられないことだ。衝撃的だ。驚いた」と言ったという。そして、今回の受賞は「IPCCに貢献した科学者や支援してくれた政府関係者全員の受賞だと思う」と述べたという。IPCCは今年2月から5月にかけて第4次報告書を発表し、温暖化の原因は人間の経済活動による温室効果ガスの排出であるとほぼ断定し、長く続いた論争に事実上、終止符を打つ役割を果たした。そのことは本欄の2月4日2月203月16日等で詳しく述べた通りである。
 
 パチャウリ議長はインド出身。子供時代をヒマラヤ山麓で暮らし、自然への愛が育まれたという。だから、その自然が破壊されることへの危機感は強い。1940年に生まれ、インドの環境研究組織であるタタ・エネルギー研究所に入る前は、エンジニア、科学者、経済学者として活動していたという。敬虔なヒンズー教徒で、食肉産業が環境を破壊することを意識して、ベジタリアンを徹底しているそうだ。
 
 ところで、わが国の環境意識に目を転じてみると、何とも心もとない。13日の新聞報道によると、前日に経済産業省の北畑隆生事務次官が、環境省の唱える「環境税」について「効果もないし、意味もない」とコキ下ろしたそうで、それに対して鴨下環境相は(環境税は)「国民への単なる啓蒙とは思っていない」と反論したそうだ。(『朝日』)そして「課税による温室効果ガス排出抑制効果や、国民に環境を知ってもらうアナウンス効果もある」と意義を強調した(『産経』)そうだ。私は環境大臣に、もっとハイレベルな反論をしてほしかった。現在の日本の税制は、今世紀最大の地球的課題である温暖化の事実と、その原因が不明の時代に作られたものだ。だから、今日の国民の環境意識から見てオカシナ点はいっぱいある。それを抜本的に改正せずして、どうやって京都議定書の国際公約を守ることができるのか。温暖化ガスの排出は、確実に環境を破壊している。それをやめさせる税制改革は、21世紀の人類共通の義務である。その実行のために経済産業省もぜひ、ひと肌脱いでほしい。日本の産業界は環境技術を伸ばすことでまだまだ発展するのだから、その方面で人類のために頑張ってほしい--そんな反論があれば、国民はきっと拍手喝采するだろう。環境意識は、政治家より国民の方が高いのである。
 
 谷口 雅宣
 

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コメント

ゴアさんは賞金1億数千万を全額寄付されるとの事ですがなかなか出来ない事です、本人は政治家でもありますし、世界的な有名人、人類に及ぼす良い影響は拍手喝采です、ノーベル平和賞を授与した人達も素晴らしいけれども、地球温暖化問題解決は世界平和にも寄与すると言う事を思えば素晴らしい快挙、「平和を実現する人々は幸いである、その人々は神の子と呼ばれるであろう」と言うイエスの言葉が此処に鮮やかに顕現したと言う事で非常に気持ちの良いニュースです。

投稿: 尾窪勝磨 | 2007年10月13日 20:47

副総裁先生

合掌
ありがとうございます
《経済産業省の北畑隆生事務次官が、環境省の唱える「環境税」について「効果もないし、意味もない」とコキ下ろした

とのことですが、環境税もしくは地球温暖化防止のための財源は必要だと思います。

ガソリン税の中には道路特定財源がありこれを一般財源にするかどうかで国会でもめております。

自動車によって排出されるCO2は人間が排出するCO2全体の3割とも言われております。道路特定財源は道路整備の充足により余剰気味ですから、道路特定財源の一部を地球温暖化防止のための対策財源にしたら新たな税金を作らなくも充分すぎるほどだと思います。

ガソリンによって作られるCO2をガソリンを使用することによって徴収される税金によって対策されることは理に適っていると思いますがいかがでしょうか?

投稿: 佐藤克男 | 2007年10月15日 14:22

佐藤さん、

>>ガソリンによって作られるCO2をガソリンを使用することによって徴収される税金によって対策されることは理に適っていると思いますがいかがでしょうか? <<

 理にかなっていると思います。ただ、自民党と日本道路公団がそう思うかどうか、が問題ですね。(笑)

投稿: 谷口 | 2007年10月15日 16:36

副総裁先生

《ただ、自民党と日本道路公団がそう思うかどうか、が問題ですね。(笑)

本当にそこが問題ですね。

今月、もしくは来月に甘利経済産業大臣に大臣室でお会いすることになっているのです。
甘利さんは私の住んでいる大和が地元になっているために少しは文句が言えるのです。本当は先月お会いする予定だったのですが、安倍さんの辞任で一度消え、また復活したわけです。

大臣とは言え何も出来ないのが日本の政治の悲しいところですが、タックスペイヤーとして言うことだけはしっかり言ってくるつもりです。
きっと、
「検討します」で終わりでしょうね。(涙)

投稿: 佐藤克男 | 2007年10月15日 17:14

佐藤さん
大臣室でお会いすると言う事はタックスベイヤーの代表と言う事でしょうが地元の陳情ですか?それとも環境問題についてですか?どの位の時間どんな話をされるのか興味があります。

投稿: 尾窪勝磨 | 2007年10月18日 14:35

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