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2007年9月 7日

人と車が“食品”を奪い合う

 明日の8日からオーストラリアのシドニーで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会談では、地球温暖化問題が主要議題になるとされているが、議長国のオーストラリアなどが域内の諸国が数値目標を掲げることをねらっているが、中国を初めとした発展途上国がそれに反対の意向を示していて、なかなか身のある成果を期待できない状況だ。その一方で、長期化している原油価格の高止まりにより、農産物からエタノールやヤシ油などの燃料を取り出すことが利益を生むようになっているため、小麦や大豆などからトウモロコシやヤシの生産に切り替える農家が増えている。その結果、食品全体の価格上昇が始まっている。本欄で何回も書いてきたが、このような状況が長く続けば、農地を「人」と「自動車」が奪い合うという新たな倫理問題が生まれることになる。

 6日付の『日本経済新聞』は、バイオエタノール需要のおかげで作付けの減った小麦や大豆の価格が高騰し、それが加工食品や外食の値段の上昇につながり始めたことを伝えている。日清食品は、来年1月から即席麺など製品の9割を最大で11%値上げする。小麦はバイオ燃料ブームのほかに、産地であるオーストラリアやヨーロッパの天候不順で生産量が落ち込む見通しとなったために価格が高騰している。このため、製粉各社は業務用小麦を値上げする動きに出ており、それが小売り段階でのパンの値上げにつながる可能性があるという。食用油やカカオ豆も値上がりしているため、菓子メーカーは、内容量を減らして売る実質値上げをすでに実施しているらしい。例えば、江崎グリコの「ポッキー」、森永製菓の「チョコフレーク」、おやつカンパニーの「ベビースターラーメン」などが、これに該当する。
 
 外食産業では、すかいらーくがこの6日から、全体の75%に当たる2400店で、ほぼ全メニューを一律10円値上げするそうだ。また、日本マクドナルドでは6月から、人件費上昇を理由に9割の店舗で値上げをしているほか、スターバックスも11月からカフェラテなどを20~40円値上げする予定という。穀物の値上がりは、穀物飼料の値上がりにつながるから、それによって肥育される牛や養殖魚類の価格にも反映する。そこからさらに乳製品の値上がりにもつながっている。昨年チーズを値上げした雪印乳業と明治乳業は、乳原料の値上がりが続いていることから、再値上げも検討中という。

 食品の値上がりは、日本のような豊かな国ではさほど痛手にならなくても、世界の多くの貧しい国々にとっては、人命の問題になることを忘れてはいけない。そんな理由もあって、私は日本で一部販売されている自動車用のバイオ燃料をまだ買っていないのである。バイオエタノールなどのバイオ燃料は、現在のようなトウモロコシやサトウキビ、ヤシ、小麦などから作らずに、できるだけ食品と競合しない原料から作るべきである。農家や企業家にはぜひ、そういう観点から生産品を選んでほしいと思う。

 この方面での“明るい話題”がないわけではない。トヨタ自動車は、私が期待している家庭電源からの充電式ハイブリッド車(プラグイン・ハイブリッド)を7月に公開し、すでに公道走行試験を始めている。また、6日の『日経』によると、同社は海外では、電気自動車で実績のあるフランス電力と提携して、フランスに200箇所ある街頭の充電システムを活用して走行試験を行うという。この型の自動車は、電気代の安い夜間に充電できるから、燃料の消費を大幅に抑えることができる。また、食品の値上がりを抑えながらバイオ燃料を使うためには、生産効率を上げることが重要だ。7日の『日経』によると、三井造船は、バイオエタノールの生産性を従来の4倍にまで高める技術を開発した。
 
 最近、汎用プラスチックであるポリプロピレンを、石油からでなく、雑草から合成する技術を開発した企業もある。地球環境産業技術研究機構と本田技術研究所による技術で、“脱石油”という意味で大いに期待できる。7日付の『日経』が伝えるところでは、この技術は、植物に含まれるセルロース(繊維)を糖に分解したあと、遺伝子を組み換えた大腸菌などの微生物を使って「プロパノール」というアルコールの1種を作り、これからポリプロピレンを合成するらしい。重さ2~3kgの雑草から1kgのポリプロピレンを作れるという。このプラスチックは、フィルムや容器、自動車部品としても利用できるし、雑草は農産物と競合しないから、「食料を奪う」という倫理問題も惹き起こしにくいだろう。日本の企業は、こういう分野でどんどん世界をリードしていってほしいものだ。

谷口 雅宣

 

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コメント

@niftyトップページ「旬の話題ブログ」コーナーにて、
本ページの記事を紹介させて頂きました。
紹介記事については、「旬の話題ブログ」バックナンバーで
半年間、ご覧いただけます。
今後も旬な話題の記事を楽しみにしておりますので、
引き続き@niftyをご愛顧の程、よろしくお願い致します。
ありがとうございました。

        @nifty「旬の話題ブログ」スタッフ

投稿: 「旬の話題ブログ」スタッフ | 2007年9月 8日 22:43

「旬の話題ブログ」スタッフ様、

 小生のブログをご紹介くださり、ありがとうございます。
 「旬の話題」は本ブログの信条でもありますので、今後もガンバッテいきます。

投稿: 谷口 | 2007年9月 9日 23:17

コメントありがとうございました。
これからも応援しています!

    @nifty「旬の話題ブログ」スタッフ

投稿: 「旬の話題ブログ」スタッフ | 2007年10月11日 17:42

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