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2007年9月22日

温暖化ガスの排出が訴訟対象に (2)

 昨年9月22日の本欄で、自動車は地球温暖化の原因をつくったとして、カリフォルニア州がトヨタ、GMなどの自動車メーカー6社を相手に損害賠償を求める訴訟を起こしたことを書いた。その判決が9月17日、サンフランシスコの連邦地裁で下されたと18日付の『日本経済新聞』夕刊が伝えている。結局、自動車メーカーの賠償責任は認められなかった。この訴訟は、温暖化を理由に排気ガスの被害の法的責任を初めてメーカー側に問うものとして、注目を集めていた。
 
 18日付の『ニューヨーク・タイムズ』 の記事によると、サンフランシスコの連邦地裁のマーティン・ジェンキンス判事(Martin J. Jenkins)は、法廷が「地球温暖化に関わる損害について決定する権限または専門知識を有しない」ことを理由に、自動車メーカー6社に対する損害賠償請求を棄却したという。

 カリフォルニア州はこの訴訟で、自動車メーカー6社によって製造された車は、アメリカ国内で人間が生み出したCO2の20%以上、同州内では30%以上を排出しているとした。そして、これは公的不法妨害(public nuissance)であるから数億ドルの賠償金に値すると主張していた。これに対しジェンキンス判事は、「この件について法廷が判断するためには、温暖化ガスの排出削減による利益と、経済や産業を維持・発展させることによる利益とをバランスさせる必要がある」としたうえで、両者は必ずしも対立する利益ではないが、州は法廷ではなく、議会と行政の活動を通じて気候変動の問題を検討するべきである、との見解を打ち出した。また同判事は、判決の中で「この時点で地球温暖化論争の渦中に法廷が自らを置くことは本来、行政府に委ねられるべき種類の初期の政策決定を行うことになる」と述べ、法廷が地球温暖化の賠償額を裁定することは、行政府の選択を狭める可能性があることを指摘した。いわYる「三権分立」の原則を犯すというわけだ。

 しかし、これによって自動車メーカーが“免罪符”を得たわけではない。メーカー側は、北東部のバーモント州で自動車を対象にした州の温暖化ガス排出規制は違法だとする訴えを起こしていたが、上記判決の1週間前に「合法」との判断があったばかりで、カリフォルニア州でも同じ趣旨のメーカー側の訴訟に対して、近く判決が予定されているという。

 アメリカ国内で人間がこのような訴訟合戦をしているうちに、後戻りできない状態にまで温暖化が進行することにならないだろうか? 私は、そのことを危惧している。というのも、22~23日付の『ヘラルド・トリビューン』紙に、北極の氷がかつてないほど退縮しているという記事が写真入りで載っているからだ。この問題は、すでに2005年9月30日の本欄でNASA(アメリカ航空宇宙局)提供の衛星写真とともに紹介し、その後も生長の家講習会などでよく扱ってきたから、知っている読者もいるだろう。今回の報道は、それ以降も北極では依然として氷が退縮していることを伝えている。

 北極周辺の氷は9月に、年間で最少の量となる。同紙の記事によると、今年の最少量はこの16日に達成されたと考えられ、その面積は412万平方kmだったという。この面積は、ここ数十年間の平均値よりも260万平方km以上も狭いらしい。このことは20日に、コロラド州ボールドゥーにあるアメリカ氷雪データセンター(the National Snow and Ice Data Center)によって発表された。アメリカが北極の氷の大きさを衛星によって記録し始めたのは1979年からだが、ロシアやアラスカの記録を何十年も遡って調べた研究者によると、今年の氷の退縮の程度は、温暖化していた1930年代を含めて、20世紀全体を通じてかつて見られないほど大きかったという。アラスカ側の北極海は青々とした海となり、カナダ北部の海も何週間も氷のない状態で、大西洋と太平洋を結ぶロシア北部の海も、1週間前にはほとんど氷がない状態だったという。
 
 海面上昇を引き起こす氷の融解は、北極海の氷のような、すでに海の中にある氷が融けた場合ではなく、陸地にある氷が融けて海に流れ込んだ場合だ。しかし、だからと言って北極海の氷の融解を楽観視してはいけない。北極海にはグリーンランドという世界最大の“島”があり、その上の氷床も融け出している。また、白い氷が融けて濃い青色の海に変われば、太陽からの熱の吸収率が一気に増大する。人類が互いに地球温暖化の責任を押しつけ合っている時間はない。一致団結して早く抜本的な対策を講じてほしい。

 谷口 雅宣

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