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2007年5月22日

環境にやさしくない原発

 5月7日の本欄で、今後の温暖化抑止対策の焦点は原子力発電の扱い方になると書いたが、日本政府はどうも本気で“原子力立国”への道を進もうとしているようだ。今日(22日)の『朝日新聞』夕刊によると、21日にはワシントンで、米大統領の肝いりの原子力新計画「国際原子力パートナーシップ」をめぐる日米仏露中の閣僚級会合が開かれ、「5カ国が協力して原発の普及拡大や、核拡散の恐れのない使用済み核燃料の再処理技術の研究開発などに取り組むことで一致した」そうだ。日本からは高市科学技術政策担当相らが出席し、共同声明も発表したという。同じ日の『日経』の夕刊は、「仏中ロを含む5カ国は世界規模で原子力を推進する方針を確認。最高度の安全対策を追求し、核燃料や技術の平和利用を進めることでも一致した」そうだ。
 
 私は原発については、核拡散や世代間倫理の視点から増設に反対してきたが、あまり指摘されないが、環境への深刻な影響を引き起こす要素があることを知った。原発は、核分裂反応による高熱でタービンを回して電気をつくるが、この高熱を冷却するために大量の水が必要となる。だから原発の立地は、必ず河川や湖沼、海などがある“水際”である。原発を冷却した残りの大量の温水が河川や湖沼や海に流されることで、環境に影響が及ぶことは否めない。また、大量の水を使用すること自体が、降水量の少ない地域では環境問題に直結する。さらに言えるのは、夏場に外気が高温になり冷却が不十分になれば、安全のため運転を縮小したり、一時的に止める必要に迫られることがあるという。21日付の『ヘラルド・トリビューン』紙が伝えている。
 
 その記事によると、地球温暖化が進行すれば雪解けにより内陸部の水量が減ったり、冷却に使う河川や湖水の温度も上がるから、原発による電力供給は不安定になるというのである。このことは2003年に、実際にフランスで起こったらしい。フランスは電力供給の8割を原発に頼っているが、この年の夏、記録的な熱波に襲われたという。国内にある58基の原発の大半は河川の近くにあってその水を利用しているのだが、この夏には17基が出力を下げたり、運転の一時停止を余儀なくされたのだ。これにより、フランスでは隣国などから電力を購入しなければならず、外国からの購入費は、1メガWh当たり最高で1千ユーロ(US$1,350)にもなったという。普段の夏場の電力料金が1メガWh当たり95ユーロであることを考えると、大変な値上がりである。
 
 日本政府が進めようとしている“原子力立国”の構想では、こういう問題をどう考えているのだろうか。日本の原発の多くは海岸近くに位置している。その場合、冷却用に使った水は海に流されて海水の温度を上昇させることになる。そう考えていくと最近、気象庁から発表された日本周辺の海水温の上昇のニュースが、気になってくる。5月16日の『日経』によると、日本周辺の海面水温は、過去100年間で、世界の平均値に比べて最大で3倍を超える「0.7~1.6℃」暖かくなっていることが分ったそうだ。日本周辺だけがなぜ世界の平均より上昇しているのか、理由は定かでない。気象庁の分析は「温暖化ガスの排出増などで大気の温度が上がり、海面がその影響を受けた」というものだが、では、なぜ日本周辺の大気が世界平均よりも上昇しているかの説明はない。
 
 原発は、冷却する際に大量の温水を外部へ流すだけでなく、冷却水の通る冷却塔から熱を大気中に発散する。上記の『トリビューン』紙の記事によると、このとき原発によって暖められた水の「3分の1は冷却塔から蒸発する」という。これはフランスの原発の話だが、日本の原発の構造はどうなっているのだろうか。そういう観点から原発の環境への影響を考える必要はあると思う。

谷口 雅宣

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